例えば、[ログエントリー:ソル38]のラストはこんな具合だ。
このローバーを最後に使ったのはルイス船長だ。ソル7にも使う予定だったのに、家に帰ってしまった。なので彼女の個人用トラベル・キットがまだ後部座席にある。漁ってみたらプロテイン・バーと個人用のUSBが出てきた。たぶん運転中にきく音楽がめいっぱい入っているのだろう。バーを食べながら、有能な船長がどんな音楽をもって
きたのか見せていただくことにしよう。
[ログエントリー:ソル38(2)]
ディスコですか。勘弁してくださいよ、船長。
たぶんあなたは、クルーを失うのは最悪の事態だと思っているでしょう。ちがいますよ。最悪なのはクルー全員を失うことです。あなたはそれを回避したんです。
しかし、われわれはもっと重要なことを話し合わなくてはなりません――あなたがディスコって、どういうことですか? 70年代のテレビ番組は理解できます。だれだって、でかい襟の毛深い人種が好きですからね。しかし、ディスコ?
なにゆえディスコ!?
もうすぐ地球の入り。こちらの時間で明朝08:00に再開。ぼくは元気だと家族に伝えてくれ。クルーにもよろしく。ディスコは最低だとルイス船長に伝えてくれ。
データ転送速度がまだ不足しているので、音楽ファイルは圧縮しても送れない。したがって、「なにか、ああ神さま、なにかディスコ以外のものを」というきみのリクエストは却下する。ディスコ・フィーバーを楽しんでくれたまえ。
[ログエントリー:ソル195]
あまりにも退屈なので、テーマソングをきめることにした!
なにか適当なやつ。当然、ルイスのひっでえ70年代コレクションから選ぶべきだろう。それ以外は許されない。
有力候補はいっぱいある――デヴィッド・ボウイの『ライフ・オン・マーズ?』、エルトン・ジョンの『ロケットマン』、ギルバート・オサリバンの『アローン・アゲイン』。
だが、ビージーズの『ステイン・アライブ』にきめた。