ハヤカワ・創元まわりの話題など | DVD放浪記

ハヤカワ・創元まわりの話題など

私が買う本は古本、それも100円から200円あたりのものが多いのだけれど、紙の書籍の新刊だってたまには買う! まあ、書店にならぶ本の顔ぶれを見るついでにとなりがちではあるのだが……(^^; そういうわけで、昨日今日と都内の大型書店をまわってきての雑感を記しておきたい。例によって、私の狭い興味の範囲内ということで。

 


ハヤカワの “ポケミス” がビニールカバーを廃止?

“ポケミス” の愛称で知られるハヤカワ・ミステリ・シリーズは、アメリカのペーパーバック(たぶん、Signet Book)を模して、天地小口に黄色のインクを吹き付けた独特の体裁で親しまれている。そして、大昔には、新刊として刊行されるときは紙製の函に入れて出荷され、再版以降は函なしで販売されていたものだった(ハヤカワ・SF・シリーズもほぼ同様)。その函には「綺麗な状態でお届けしたく、こんな函をつくってみましたが、ご購入後はご処分ください」みたいな文言が刷り込まれていたと思う。もっとも、その紙函は天地をホッチキス留めする仕様となっており、書店で長く縦置きされ、本の出し入れが頻繁にあると、その針が本体の下の部分にひっかかって、逆に本を傷める結果ともなってしまっていたのだが。(^^;

それが、いつのころからか、現在の透明なビニールカバーを被せるようになり、今日まで続いて来たわけだが、今回見たところ、最新刊のうちの1冊、『木曜殺人クラブ』(ただし、下記書影は Kindle版へのリンク)では、紙のカバーに代えられていたのだった! 

 

 

 

読者の反応を見るための一時的なものかどうか知らないけれど、原価抑制のためとか、プラスチック/ビニール使用削減のためなのだろうか。事情はともかく、既に単体でハードカバー並みの価格設定になってしまった “ポケミス” 愛読者からの反応を知りたいところだ。まあ、購入者の大半は年配者だろうけれど。



アシモフの『ファウンデーション』は帯のみ新調!

ついに、ハヤカワも、アシモフ『ファウンデーション』の増刷に踏み切った! 

 

 

 

もっとも、映画公開とタイアップした『デューン』のパブリシティーとは比べようもなく、カバーは従前のままで、帯のみかけてみましたというショボい対応。まあ、私にしても、Apple TV+にはたいして期待していないので、こんなものなのだろう。
創元の『銀河帝国の興亡』第2巻は12月刊行予定!

 

 

 



 

“匿名座談会” の呪縛は解けたのか?

ハヤカワから、第一世代の日本作家の初期のSF作品が再刊され始めた! 新たな読者層を開拓できるのか、古参ファンがノスタルジーで買い求めるだけなのか? とにかく、興味のある方は書店店頭へ! 

かつて「SFマガジン」誌上において、編集長の福島正実が企画した “覆面座談会” での酷評に反発した作家たち(星新一小松左京筒井康隆らを含む)が離反して徳間書店などの他社に流れていってしまい、彼らの作品群がハヤカワのカタログから根こそぎ消えてしまった事件(そのあらましについては、Wikipedia でも追うことができる)を知る人にとっては感慨深いものがあることだろう。
覆面座談会事件?

それによって、福島正実は早川書房を離れることになったわけだが……。

『未踏の時代』を残して彼は去った

ふたりの加藤喬



その徳間書店から、小松左京作品のアンソロジー集が文庫で刊行された。TBSテレビ「日本沈没」頼みの便乗商法と思われるかもしれないが、セレクションがちょっと変わっている。

 

第1巻は、【グローバル化・混迷する世界】というテーマのもと、トランプがらみでアメリカの孤立政策を予見したとして話題になった短編「アメリカの壁」や、尻切れトンボとなって完成度には難があるものの、ちょっと捨てがたい野心作の『見知らぬ明日』など、今日の諸問題と響きあう作品が収録されている。そして、解説を担当するのは池上彰である!

「アメリカの壁」についてちょっとだけ

『見知らぬ明日』についてホンのちょっとだけ

『ある生き物の記録』なんてのもあったなぁ

 

 

 

 

 

 

「SFは単なる “予言の書” ではない!」(←これは正しい)と息巻くジャンル内の原理主義者からすれば、唾棄すべき企画コンセプトではあるだろう。その思いもわからないではないけれど、ここはひとつ、暖かい目で見守るのが大人の態度というものだろう……なんて、お子ちゃまの私が言っても説得力ゼロか。(^^;



 

C・L・ムーアの『大宇宙の魔女』新訳で再登場!

かつてハヤカワSF文庫などから刊行されていた、ノースウェスト・スミスもの13編を1冊にまとめた決定版ということで、いやあ、めでたいことではあります。

 

 

 

この手の作品は、送り手も受け手も懐古趣味の枠組み内で生産・消費されているような気がしてならないけれど、ビジネスとしてはありなのだろう。私も購入したわけなので文句はない。(^^; でも、今どきの若い読者が読むのは、SF史に名を残した “スペース・オペラ” ではなく、日々大量生産されていくラノベのほうなんだろうなぁ。

そうそう、A・K・バーンズ『惑星間の狩人』もついでに再刊してほしいなぁ。もちろん、エムシュウィラーのオリジナルのイラスト付きで……(^^;

 

 




 

その他、石坂啓(原作:本多勝一)の『ハルコロ』樹村みのり『彼らの犯罪』など、岩波現代文庫から刊行されているマンガとか、同じく、岩波少年文庫から新カバーで再刊された石井桃子訳の『小さい牛追い』『牛追いの冬』などの話題については、およそ興味のある人などいないだろうからカットだ!