伊弉諾の大神坐す淡路の国は 求ぎたる水の清らかに

流れ出ずるか君の御許に


填さず飲せ ささ


しをるはな白い頁に色なせと

山井掬わむ夢の随に


shioruhana siroipeijini ironaseto

yamaisukuwamu yumenomanimani


寿命を司る大神の懐も若葉に彩られて、二人して訪れた冬の景色はもう過去。悪しきものに潰されぬようさあ、頑張ろうか!


(風早)


途切れ途切れの夢路には 薄れゆく今生の記憶も遠のきて

ひとつひとつ毀れ落ちてゆく 指の隙間を縫うごとき 人の命も時の流れも・・・


亀甲の卜占せしは過ぎし冬

色無き春を山井は視たり


kichikouno bokusensesiwa sugisi fuyu

ironakiharuwo yamaini mitari


苛立ちも 歯がゆさも 動かぬこの身が恨めしい

君のせいでは無きものを・・・君に甘えることの他 わたしの寄る辺は無きものの 君の重荷になりたくもなし もはや 沙羅双樹・・・死の床にある人の顔色為して散る  


(佳小雨)


















暮るる山の端こえの主 福郎宿るや一本木


風雲にとり乱さるる鳴声を

渡して明くる幾望さやけし


kazakumoni torimidasaruru meiseiwo

watashiteakuru kibousayakeshi


(風早)


鮮やかな街のあかりは眠らずに 艶色の羽根飛び交うも

鳥の啼く場は 有りもせず 止まる枝無き 六本木


金銀の夢見ましなむかの街も

君知りてのち月も隠れる


kinginno yume mimasinan kanomachimo

kimisirite nochi tukimo komoreru


(佳小雨) 






























咲かせた春を夢とせば かわいた空に悲歌は溢れど・・・


むせび泣くビオラに寄せて口遊む

歌はあしたの慈雨ともならむ


musebinaku bioraniyosete kutizusamu

utahaashitano jiutomonaramu

(風早)



とうのむかしの春の日に うすむらさきのヴィオラ指し

その名を呼んだ人さへも 暮るる春陽に消え往くばかり・・・。


一夜草むかしの春を嘆く吾を

案ずる君を今は恋ひしき


hitoyogusa mukasino haruwo nageku awo

anzuru kimiwo imawa koisiki


花の色は うつりにけりな・・・と むかしのうたにあるごとく

我が心にも 風は色混ず。むかし恋しき。されど 今 むかしに勝る人ぞ 恋しき・・・。


浮き雲の形の在りて無きごとく

今年のヴィオラ秘めやかに咲く


ukigumono katachino arite nakigotoku

kotosino biora himeyakani saku


(佳小雨)



愛はいつも 憧れと罪悪の狭間を 行ったり来たりする・・・。

それでも 止められるものでは無いけれど・・・。

































さだめし時の綾なして、現代(いま)に咲かせし春もよう。その色集めて伝えたし。しあわせ運ぶ気流ぞ我は。


名前さへまだ明かされぬ昔より

風は菜花に寄り添ふしらべ


(風早)


菜の花の季の香仄かに香り立つ。 ゆかしき頃に問はれし 名。そは はなびらの名か蝶の名か・・・。いづれにしても春 あたたかきいろ。


幸色の波を蹴立てて飛ぶ蝶も

風あたたかき手に護らるるらし


(佳小雨)



























おわりの始めに咲く花は、二人の道を照らし出すなり。君故我は雄となり、ここにようようひととなる。許さるるならば秋、たわわなる実をこの手に愛でん。


みほとけに委ねし花の赤らみて

灯火となるや寂しこの夜


mihotokeni yudaneshihanano akaramite

toukatonaruya sabishikonoyoru


(風早)


涙に霞む花は なを闇に薫り笑む。愛の証を見せるごとく。まこと誇らしげに耀やふて月下・・・。吾が背子の愛の証と見せ給ふ。

母となりし日 ひとり涙す。吾子を思ふ。君を思ふ・・・。

桃花の前に 女と母とふたつの顔の吾は行き来する。


帰依仏へ早散り急ぐ桃の花

臍のうつろを何にかはせむ


kiebutuhe haya chiriisogu momonohana

hozono uturowo nanini kawasen



(佳小雨)