巡りし季節の早きこと。ようよう見つけた蕾さえ、はやも風に踊り始めた。花を訪ね歩くことはこれを限りに、良き葉を探して君に捧げん。


降り注ぐ雨に染まりし木の花は

冥き夜てらす星となるらし


hurisosogu amenisomarishi konohanaha

kurakiyoterasu hoshitonarurashi


先日満開を迎えた桜が雨とともに散り始めたよ。流れ星のようだ。

(風早)



とくとくと過ぎて往く時の半ばに わたしはただ ただ立ち止まって見つめています。夢見ることは叶うのだろうか・・・?と

巡り逢うことは叶うのだろうか・・・?と。明日は此の花のように 思いが散ってしまいはすまいか・・・と・・・。


木の花の千々に乱るる冥き夜は

星の灯りの役立たぬなり


わたしは桜の満開を見ることが叶いませんでした その分 散るのを見ることもありませんでした よかったかどうかわかりません ただ・・・さみしいです

(佳小雨)

太古の記憶が埋葬された地に、ようよう光が射したとか。君と見る花麗し。大和―――新たなる季節。


百度の春なら埋めし小石さへ

終に咲くらむ黄埃の空


momotabino harunaraumeshi koishisahe

tuinisakuramu kouainosora


(風早)


いにしえの名を持つ丘に陽の射せば 馬酔木の森に愛しい人の影を追う。声を掛けることすらも躊躇われ・・・鶯よ わたしの代わりに啼いて欲しい。ここに居ますと・・・。


百度の春はからずに花の咲く

たれぞの埋めし小石さへ知らず


momotabino haru wakarazuni hananosaku

tarezono umesi koisisae sirazu


(佳小雨)


この小石君が埋めしと分かりせば

いたみも花の喜びと咲く


konokoisi kimiga umesito wakariseba

itamimo hanano yorokobito saku


(佳小雨)





未だ御前を識らぬあの頃、月なる姫子を夢に見て、朝光に薄れゆくその影に涙した。

空虚なるとも思われた夜に金色の光射す頃、闇さえあいに染まり行くを見た。

いとしきみ、岐路に立つ神。


朝靄に生れし影の明らかに

照らし出ずるか藍なる御空

(風早)


一陣の風吹き渡る端居には 何処ともなくわたしの名を呼ばう人影のあり

知らぬこととは 言いながら 声の在処を御簾の影より垣間みる

君が佇む 其処は月光の射す苑生・・・


何故 わたしの名を呼び給うや・・・


故知らず理知らず生まれしは

光と闇のあはひ藍色

(佳小雨)