最近他者様のホームページを見ながら、
「う~ん。。うちももっと舶来語を多用しようかなぁ」とか
物思いにふけっています。似合わないからやりませんが
さて、最近もお問い合わせがあったのが「どのスキージを使えば良いでしょうか?」というご質問
基本的にオフコンタクト値(版と被印刷物の隙間)を取らない印刷の場合(これは厳密にはスクリーン印刷法ではなく、孔版印刷法ですが)、スキージの硬さは「ほぼ」関係しません。
なぜなら、この際のスキージストロークは、被印刷物に密着した版の孔にインクを充填する役目しか果たさないからです。静止した孔に充填されるインクの量はスキージの硬さに関係なく一定になります。対してオフコンタクト値を取った場合、インクはローリングしながら版の孔を「通り過ぎ」ながら印刷されます。
この場合、オフコンタクト値とスキージの「アタック角度」、そしてスキージのストローク速度によって一度に通過するインクの量が変化します。
オフコンタクト値が小さい場合やアタック角度が深い場合、そしてストローク速度が遅い場合にはインクが滲みやすく、それぞれ逆の場合インクが掠れやすいのはこう言った理由です。
余談ですが、インクをローリングさせる事でどのような効果があるのでしょうか?
インクを絶え間なくローリングさせる事は、その粘度を均一に保つ事ができます。インクの粘度にムラがある場合、印刷のムラに直結します。繊維製品のプリントに使用される水性バインダーやプラスチゾルインクは、影響を受ける事はあまり感じられないと思いますが、溶剤系のインクを使用する場合や、クリームハンダや導電性ペーストなどを使用する場合には影響が大きくなります。
さて、なんの説明も無く「アタック角度」と言いましたが、アタック角度って何でしょう?
これは、スキージブレード(一般的にゴム)がスクリーン版に接する角度です。
同じ人が(同じ印圧で)同じストロークでプリントした場合、柔らかいスキージの場合はアタック角度は深くなり、硬いスキージの場合はアタック角度が浅くなります。これは、弾力性のあるゴムをスクリーン版方向に押す力でしならせている為ですね。
一般的にアタック角度は70度程度が適正と言われます。あくまでもスキージ角度では無く「アタック角度」です。
さぁ、ここでまた一つ問題です。
スクリーン版にはテンションという物があります。これまた、オフコンタクト値が0の場合は関係が無くなってしまいますが。
同じスクリーン枠で幅10cmの柄を幅15cmのスキージでプリントする場合と、幅50cmの柄を幅55cmのスキージでプリントする場合。全く同じ硬さのスキージを使うと。。。後者の場合に有る現象が起きます。
柄の中央付近と両端付近では印刷濃度に違いが起きる(事がある)。
これは、版のテンションの影響で、スクリーンは枠に近いほどテンションが高いため、大きなスキージを使用するとスキージブレードの両端にかかる圧力と、中央付近のブレードにかかる圧力に違いが生じるためです。
小さなスキージを使用する場合に比べて、大きなスキージは少し硬めのスキージを使用すると改善される場合が多いのはこの為です。
最後に、これが最も大きな問題ですが、スキージの材質・品質はどのような物が良いのでしょうか?
スキージブレードも時間が経つほどに劣化していきます。全く使用していない状況でも長期間放置すると劣化は進みますが、使用後の清掃を繰り返すと、特に溶剤などでインクを拭き取る作業はスキージブレードを劣化させます。
一度お試し頂ければおわかり頂けると思いますが、溶剤で清掃させたスキージブレードと、新品の全く同じ硬度のスキージブレードを比較してみて下さい。前者のブレードは硬くなっているはずです。
これは、スキージブレードが溶剤を吸収膨潤して劣化している為です。
こうなると、当然同じ姿勢で同じ印圧でプリントしていても、従前と比べるとインクの落ちが悪くなっているはずです。ブレードの硬度が増してアタック角度が浅くなっているからです。
という具合に、書こうと思えばまだまだもっと行けるのですが今日は絵文字がやけに少ないです
最後に一つ。
数あるネットの販売サイトで「プロが使っている・・・」などと書いてある場合がありますね。
昨日もお客様が「プロも使っているインクと書かれていたので購入したら・・・・」というお話しがありまして
ちなみに「プロ」の定義って何でしょう?
シルクスクリーン印刷に「段位制」や「認定試験」などはどこにも存在しないので、私なりに定義させて頂くと
「お金を頂いて、シルクスクリーン印刷によって製品を製作販売される方」
とでもしておきましょうか。
ただ、製品のできばえは色々なプロの製品を比較してみない限り、末端ユーザーの方には解りません。
今回書かせて頂いたスキージに関して言えば「プロが使うスキージ」「素人さんが使うスキージ」などと区別されている訳でも無く、どなたもより良い品質の物を使うに超した事は無い訳です。
要は、場面場面によってスキージの種類を使い分ける目(腕)を持った人。これを「プロ」と呼ぶのでは無かろうかと思います。
弊社にお問い合わせ頂く方は、生業でスクリーン印刷に携わってる方もいらっしゃれば、学校で勉強している方、個人の趣味で携わっている方など多種多様です。
「素人なんですが・・・教えて頂けますか?」という方も時々いらっしゃいますが、ご紹介する製品は全く同じです