今回は前フリは無く、いきなり本題です
前回のお話の中で、正確な版に必要な条件を3つほどお書きしました。
その内の1つめ
「張られたシルクスクリーンメッシュが適正なテンションを持っている」
これが守られなかった版ではどのような弊害が起きるのでしょうか
1.印刷の寸法精度が悪くなりる
2.版離れが悪くなる
3.版を持ち上げて途中に乾燥を入れる事ができない
と、まぁ、ほんの少しですが
まず1つめ。繊維製品へのプリントを考えると凄い問題では無いような気がするでしょうが
例えば1色だけプリントするのなら問題は無いように思えます。
ただ多色印刷。おまけに色と色が接触してプリントしなければならないデザインでは致命的となります。
いわゆる「毛抜き合わせ」「罫抜き合わせ」と言われる場合です。
この理由は次の次の3で一緒に説明します。
次に2。
本来、シルクスクリーン印刷の場合、版と被印刷物が接触している部分は、スキージの角が当たっている部分だけでなくてはなりません。
スキージが通過するとすぐ、通り過ぎた部分の版は被印刷物から離れていきます。これが「版離れ」です。
が、版のテンションが極端に少ないと、スキージが通過しても版と被印刷物がなかなか離れない場合があります。これでは、前回お話しした「孔版印刷」の状態と何ら変わりはありません。
その結果、次のような悪結果が出ます。
イ)通過するインクの量が少なくなる(→隠蔽性が少なくなる)
ロ)版離れが悪いので、版の孔の側面に残存インクが発生しやすい(水性バインダーの場合、版詰まりの原因)
ハ)版離れが悪いので、インクの粘土によっては滲みが生じやすい
これまた、ほんの少しですが
では、最後に3。
先に書きましたように、1も関連しますが、あまりにゆるゆるの版だと、一度印刷すると版を持ち上げて、再度もとのプリント位置には戻せません。
T○○んなどの版がまさにそれですね
となると、版を持ち上げて、インクを乾燥させてまたその上にプリントする。という作業はできない事になります。
作業してみれば自明なのですが、乾いていないインクの上に、何度インクを重ねようが濃くはなりません。
当たり前の話なのですが、ある濃度の液体を100mlから200mlみにしても、濃度は変わりませんよね
一度乾燥してたインクの上に重ね刷りすると濃度は上がります。これまた図示すると、私の能力を超えていますのでやれませんが
頂くご質問の中で「濃度の高いインクはありませんか」というものが頻繁にありますが、濃度の濃さは限度があります。どのインクも樹脂の中に顔料を混合している為、顔料の濃度が高すぎると、生地などに接着する力が足りなくなるからです。剥離しては元も子もありません
そして、できうる限り濃度の高いインクという物は、その顔料のせいで粘度が高くなります。
でも「テンションの低い版はインクが通過しずらい」でしたよね
じゃぁという事で今度は粘度を緩くしたとします。粘度を緩くする=希釈する と濃度は下がります。
堂々巡りです
この様なご質問を頂いた際には、まず「どのような版をお使いですか」とお訊きします。
何故かは、前回そして今回書かせて頂いたように、印刷の品質(濃度も含みます)はインクだけの問題では無く、版も大きく関わっているからなのです
次回に続きます