≪第一幕前半からの続き≫
小さなボビーには、お父さんを探すのが大変だった。
近づいてきてようやく姿が見えてきた。
ボビー:「ジョージと一緒にきたよぉ~!
お父しゃん、おかえりなさい!!」。
ジョージはそっぽを見ていた、ボビーにはもう
お父さんの姿がはっきりと見えていました。
港に着岸し、それぞれの家族、友人、恋人、子供を
出迎え。港では再会を心待ちにしてた人々で溢れかえっていた。
藤やん犬:「おいおいおい!オレだけ誰もいねぇ~じゃんか
よぉ~」。「北埠頭?フェリー?まだじゃん。ここじゃねぇし・・・」。
「小樽は遠いなぁ~」。
マンセル:「裕子しゃん、ボビー、それにジョージ。ただいま」。
裕子:「あなた、お疲れ様でした」。
ボビー:「お父しゃんおかえりなさい!」。
マンセル:「何か、変わった事はなかったかい?」。
家族の会話は尽きなかった。
ボビーは学校の事、裕子さんは家の事、話す事に話題を欠かない。
再会して間もなく、帰路についた。
ボビー:「お父しゃん、今度遊園地に行くんだよね」。
マンセル:「もちろんだよ遊園地に行こうな!約束だもんね」。
ボビー:「お母さんも一緒だよね?」。
裕子:「当たり前でしょ、お父さんだけだったら、
方向音痴でどこへ行くか分かりはしませんからね」。
マンセル:「裕子しゃん、それは酷いなぁ~」。
ははははは・・・。港に家族の笑い声が響いた・・・。
マンセル:「帰りに、塩大福買って帰ろうね」。
ボビー:「やったぁ~~!」。
くまのジョージはだっこされながら、家族の他愛もない
会話をニコニコと聞くばかりでした。
<<その日の夜>>
帰ったばかりのマンセルくんを専属料理店の店長が、
店に呼び出し相談を持ちかけていた。
グラハム店長:「マンセルくん、今回はお疲れ様でしたね」。
マンセル:「いえいえ、とんでもないですよ。で、相談とは・・・」。
グラハム店長:「いやね、君の出向後に船会社の方からの正式なオファー
なんだけどね。今度新規に就航する定期路線の大型客船に専属料理
人として、君を採用したいと連絡があってねぇ。君の意見も聞かないで
決めるのもね・・・」。グラハム店長はバツが悪そうに言うが・・・。
グラハム店長:「や、もちろんね、こっちもエースを取られる訳だから。
それなりの地位と、人的保証も必要だと迫ったよ」。
マンセル:「すると・・・」。
グラハム店長:「君を今度の客船の料理長として、メインに据えるそうだ。
20人位は纏める立場にはなるようだ。給料もここよりは断然いいぞ。
こちらへは、君を貸し出すんだからリースの契約金とコックを2.3人
新規採用する事になりそうだ・・・」。
「どうだろうか?やってみてはくれないか?」。
マンセル:「それにしても、何でボクなんです?」。
(クリストファー伯爵夫妻の食事風景)
グラハム店長:「クリストファー伯爵ご夫婦を知っているよね?」。
マンセル:「ええ~、随分前ですよね。店にいらっしゃった時に、
呼ばれて顔を一度合わせましたよね」。
グラハム店長:「あのご夫婦がね、今度就航する客船に乗船される
そうだ。そこで、伯爵夫人が船の上であの牛フィレ肉のローストが食
べたいとおっしゃって。船会社に推薦されたそうだ・・・」。
「しかも、クリフトファー伯爵は、船会社にも出資をしていて。
断り切れなかったって事なんだろう」。
マンセル:「まっ、そんなところだろうな・・・」。
(牛フィレ肉のローストと赤ワイン)
マンセル:「で、船会社はボクの料理を食べもしないで
オファー出してきたの?」。
グラハム店長:「それが、先月君が店にいる時食べていた
そうだ。だから知っていたらしいんだよ・・・」。
マンセル:「それで合格という訳ですか」。
マンセル:「で、何時出港するんですか?」。
グラハム店長:「1週間後の4月10日だ。明日からすぐ準備に
入って欲しいそうだ」。
マンセル:「もう明日からですか?困ったなぁ~・・・。
ボビーと遊園地に行く約束しちゃったのに・・・」。
出世とは言え、ボビーくんにはどう言えばいいのか・・・。
嬉しい申し出も、今夜ばかりは心苦しく辛い夜になってしまった。
≪第二幕前半へつづく≫