久し振りに歴史から学んでみようコーナー(そんなコラムあった?)の復活です。
ウィーンの観光名所の1つにベルベデーレ宮があります。
バロック様式を粋を極めた非常に美しい宮殿で、フランスに嫁ぐマリー・アントワネットの結婚のパーティーが開かれたのがベルベデーレ宮です。
この宮殿の持ち主が、プランツ・オイゲンことオイゲン公。
レオポルト帝からカール6世まで3代の皇帝に仕えたハプスブルク家のマルス(軍神)です。
オイゲン公については過去に何度かブログで触れましたが、彼がハプスブルクでその才能を発揮するには数奇な運命がありました。
太陽王ルイ14世の庶子とも噂されるオイゲン公ですが、背が低く女性の様な顔立のオイゲン公は派手好きな王様からは「うだつの上がらない風貌」だとして疎まれていました。
「あんな風貌の悪いのは僧侶にでもしておけば良い」と言うのが太陽王の見立て。
しかし、立身出世を夢見ていたオイゲン公は「嫌だ!坊主になんかなりたくない」と平身低頭太陽王に「どうか、この私に1個隊を頂けませんか」と願い出たんです。
が…オイゲン公の願いも虚しく、太陽王はチラッとオイゲン公を見ただけで「フン、お前の様な風采の上がらい者なんぞに誰が隊をやれるか」と追い返したんですねぇ。
前途を閉ざされたオイゲン公ですが、絶対に自分は軍人として一花咲かせてみせる!と国外に逃亡する事にしたんです。
逃亡は国王への反逆と見なされ捕まれば死罪です。
オイゲン公は何日も馬を飛ばして何とか逃亡に成功し、兄の伝手を頼ってオーストリアはレオポルト帝に仕官させてくれる様身を呈して願い出ました。
フランス人がオーストリア軍の士官になるだって?
どうせフランスのスパイだろう、騙されるな!!
側近がこぞって反対する中、普段は薄ぼんやりして優柔不断な皇帝が、何故かこの時ばかりはオイゲン公の入隊を許可すると言ってきかない。
「さぁ、これからだ!」
レオポルト帝から士官を許されたオイゲン公は、軍資金がなければ自ら調達し、オーストリア軍に貢献し、ウィーンに攻撃をしてきたフランス軍を撃退したと言われています。
オイゲン公はいつも華やかな軍服に身を包んでいた為、敵から標的にされ、何度も撃たれた事があったそうです。
名将と謳われた人が、何故、わざわざ敵に見つかる様な派手な服装で戦場に立ったのか…。
それはベルベデーレ宮に見られる様に美的感覚に優れていた事もありますが、「偉くなれば派手な格好も許されるんだぞ」と下級の士官達のやる気を奮い立たせる為だったとも言われています。
元帥として作戦が見事に成功させていただけではなく、人材育成にも力を注いだ……根本から強い軍隊を作ろうとその生涯をハプスブルク家に捧げたのでしょうね。
さて、ここで私達が歴史から学べる事が2つあります。
1つは、望みを叶える方法は決して1つだけではないと言う事。
ヨーロッパ一強い軍隊で活躍出来たらそれは嬉しい事でしょう。
でも、その夢は儚くも1人の人間の手で潰されてしまった。
そこで絶対に「これじゃなくては」(ここではフランス軍ですね)と執着する事も出来たでしょう。
でもオイゲン公はあっさりと引き下がり、別のルートを探した。
自分の目的は立身出世。軍人として頂点に立つ事、と目標を決め、例えそれが迂回ルートとなっても目標に辿り着く事だけを考えたんですね。
執着は時に目的から逸脱させます。
自分の目的は何か。
それが分かったら、方法などどんなやり方でゴールに辿り着いたって良いではありませんか?
一時は敗北感を味わうかも知れませんが、長い目でみれば勝ち負けは存在しないと言う事を教えてくれている様なきがします。
そしてもう1つは、直感に従うと言う事。
何か大事な事を決める時、誰もが慎重になるモノです。
直感だけで即決出来たらどんなに楽か…誰もが第三者の意見を聞きたくなります。
でも、そこで皆が揃って反対したら?
その時、自分の直感に従えるか…ここが分かれ目です。
確かに誰でも100%…うーん、せめて9割位の確信が欲しいものですが、それでも直感は自分の魂からのメッセージです。
頭で判断する以上に自分の事を分かっていて、浮かび上がってくるのが直感です。
もし、自分の直感に従って心が穏やかに感じたり、ワクワクするのならGO!のサインです。
臆せず進んでみては如何でしょう。
無謀な賭けと直感は違います。
過去のデータを集めて決めた事は、データの先にある結果を越える事は出来ません。
しかし、直感が選んだ可能性は無限です。
如何様にもなると言う事なんですね。
歴史は年号を追っても何の足しにもなりませんが、生きるヒントとして活用していくと中々面白いモノです。