意外?マリーアントワネットは人を見る目を持っていた | Salon.de.Yからの贈りもの〜大事な事は全てお姫様達が教えてくれた。毎日を豊かに生きるコツ

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元ワイン講師であり歴史家。テーブルデコレーションを習いに行った筈が、フランス貴族に伝わる伝統の作法を習う事になったのを機に、お姫様目線で歴史を考察し、現代女性の生きるヒントを綴ったブログ。また宝石や精神性を高め人生の波に乗る生き方を提唱しています。

今回は久し振りに歴史ネタです。

日本でも絶大な人気となったマリー・アントワネット。
さぞや歴史上でも有名なお姫様かと思いきや、実際は、先の王妃たちと変わらず単に「ルイ16世妃」と名を残しているに過ぎません。

では、何故国や世代を超えて注目されるのか?

そのまま歴史の闇の中に葬られていたアントワネットに再びスポットが当たったのが、フェルゼンの死後大分経ってから、偶然書簡の束を一族の末裔が見つけた事がキッカケでした。

誰にも見つからない様、隠し戸の奥深くに大切に埋められ、万一見つかった時の為に、大切な人の名前や身分が分かりそうな箇所は判読が出来ない様に塗りつぶされていたのだそうですよ。

書簡の相手が分からない様、その殆どの書簡は焼き捨てられてしまっていたのだとか…。

全て消し去る事が出来ず、僅かな束だけを手元に置いたのでしょうね。

これ程までに彼が庇い通した女性はいったい誰だ!

やがて、その相手こそフランス王妃マリー・アントワネットではないか、と言う事実が明るみに出た為に、改めてマリー・アントワネットとはどんな女性だったのか、歴史は彼女を再び檜舞台に引っ張り上げたのです。

「フランス王妃が不倫!!」

だって国の為に好きでもない男の嫁になるんでしょ、そりゃ不倫の1つや2つもしたくなるわよねぇ等と思った女性もいたのではないでしょうか?

ただ、誤解して欲しくないのは、私が何度も言う様に、政略結婚と言うと人身御供の様に国の犠牲になると言う事ではありません。
ホント、今でも世界昔話みたいなので、平気でこういう事を書くバカタレが居るんですよ。

口がひん曲がる程言ってきましたが、アントワネットに限らず、王家の子女に生まれたからには国家(当時は国家=自家)要請に従ってお嫁に行き、あちらのお義父さんお義母さんに可愛がられ、やがて王妃となった暁には国民から慕われる様な王妃になる事を至上命令として育てられるんです。

ですので、彼女達にしてみれば、親元を離れる不安こそあっても顏が気に入らないだの、なんだのと言う、結婚前に同棲するのが当り前の様な現代女子の様な思考回路も感覚も全く当てはまりません!!

むしろ、マリアテレジアが「王家の子女にとってフランス王妃になる以上の幸せはないと思っていたけれど、あの子には荷が重すぎるのではないかしら」と心配した様に、ハプスブルク家と並んでヨーロッパの双璧をなすフランス王家の座は、ヨーロッパにある王室の憧れの的だったんです。

えっ?でもルイ16世って太ってたんですよね?ですって⁉

この馬鹿者がぁ!!
ルイ16世が太り出したのは革命が始まって狩りが出来なくなってからなんです!

アントワネットと結婚したばかりの頃は、スラっとと言うか、ひょろっとした感じで、そこが元来の内気さに輪をかけて頼りなさげな印象を与えた位だったんですよ。

アントワネットも結婚後、少し経ってから「王太子様も最近は少しずつガッシリしてきて、頼りがいが出てきました」と国のお母様に報告していた位なんですから。

さて、では実際の所アントワネットにとって夫であるルイ16世は本当に箸にも棒にも掛からない程魅力がなかったのでしょうか?

意外とそうでもない様ですよ。

ルイ16世には他にもアルトワ伯、プロヴァンス伯という2人の弟がいました。

内気で真正直、生真面目な兄と違って、2人の弟は遊び事には長けていた様ですが権力欲が強く、性格的には余り好ましいとは言えない人物だった様です。

アントワネットにとって義弟となる訳ですから仲良く接していましたし、遊び事を楽しむには適した相手でしたが、それでも母には「王太子様は兄弟の中でも一番立派です。私は次に生まれ変わって、この3人の誰かと結婚しろと言われても、また王太子様を選ぶでしょう」とそれなりに夫の美点を認めていました。

彼女の母、マリアテレジアは人を見抜く才能に長けていました。
だからこそ、適材適所に人を配置し、オーストリアのピンチを何度も救う事が出来たのですが、アントワネットも人を見る目は母親から譲り受けていた様にも思うんですね。

ただ、彼女の場合は政治に応用すると言うより、自分を大切にしてくれる人、自分を守ってくれるであろう人…そう言う人材を見抜く目があったと思うんです。

それが生涯をかけて愛したフェルゼンだったと思うんですね。

彼は地位や褒美をねだる他の貴族達とは違い、控えめで宮廷で目立つような事は絶対にしない。
地位をねだるどころか、本気で国王夫妻の心配をし有事の時は自分の命さえ投げ出して迄、家族ごと愛する者を救おうとする。

名門王家の大公女として生まれ、これ以上、上が無い程の地位と財産を手にした女性が、その他に何か欲しいかと言ったら、欲も飾りも無い本当の真心だったと思います。

一番シンプルだけど、中々手に入れる事が出来ない、この世で一番大切なモノ。

それを持っている人を見抜く目をアントワネットは持っていたのではないかと思います。

王妃にとって、駒を持つ事を嫌い純真さを大切にする事は危うい。

ただ、それでも人間、贅を極めた先には、爵位だの何だのと天国に持っていけないモノは全部剥ぎ取り、その人の本質と言う人間にとって一番価値のあるモノが一番価値あるモノとして映るのではないかと思います。

そう言う意味では、彼女の本物を見抜く目はお洒落だけではなく、人に対しても持ち合わせていた様ですね。