エリザベートの結婚式のお料理 | Salon.de.Yからの贈りもの〜大事な事は全てお姫様達が教えてくれた。毎日を豊かに生きるコツ

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元ワイン講師であり歴史家。テーブルデコレーションを習いに行った筈が、フランス貴族に伝わる伝統の作法を習う事になったのを機に、お姫様目線で歴史を考察し、現代女性の生きるヒントを綴ったブログ。また宝石や精神性を高め人生の波に乗る生き方を提唱しています。

先日、久しぶりにハプスブルク家で実際に食べられていた宮廷料理を堪能して来ました。

 

今回のテーマは「エリザベートが愛した食文化を楽しむTraditional特別コース~フランツ・ヨーゼフとエリザベートの結婚式と銀婚式のメニューから~」。

エリザベートの命日910日から10月いっぱい迄の完全予約コースです。

 




エリザベートと言えば、野山を駆け回る活発な性格ある半面、人見知りがひどく社交はからきしダメ。


そんな娘を心配して本格的な社交界デビューを前に、少しは外の世界に慣れさせた方が良いだろうと姉のお見合いに連れて行ったところ、フランツ・ヨーゼフがお姉さんの方ではなくエリザベートの事を気に入ってしまった為にハプスブルク家にお嫁入した事は有名です。

 

しきたりに厳しい宮廷生活に馴染めず、母親に頭が上がらない夫との結婚生活は結婚初期の段階で破綻していたエリザベートはウィーンの宮廷に寄り付かず旅から旅の生涯を送りましたが、非常に恐れ多いのですが、性格的にどうやら私はエリザベートとリンクしてしまう部分があるんです。

 

私の話で恐縮ですが、専門職として卒業を待たず現在の職場に入社した私は、去る10月20日で勤続40年を迎えました。

 

私は事務職よりも研究職や職人の様に何かを極める事が性格的に合っているのですが、当時はまだまだ女性は腰掛。

大きな会社に入ってそこで結婚相手でも見つけてくれればと言う当時の常識論や親の意向に勝てず、ビジネス系専門学校を経て就職し、30歳迄にフリーど一生出来る仕事で独立しようと思うも、生意気な自由人でかつオタク気質な小娘に大企業が合うはずがありません。

優しく良い人も沢山いたけれど、ホント会社は合わなかったぁ~。

 

なので、恐れ多いですが宮廷の手垢がついた物を徹底的に忌み嫌ったエリザベートの気持ちはよぉく分かります。

私も、会社から与えられる事は、お給料以外大嫌いですもん!!

 

確かに今の会社にいたから、分不相応にもフィニッシングスクールでお姫様の世界を垣間見たり、海外旅行をしたり、はいワインです宝石ですと色々な世界を覗かせて貰う事が出来た事は分かっていますし、他人から説教される迄もなく感謝もしています。

 

エリザベートも…19世紀と言えば株の大暴落があったり、生活が苦しい市民は沢山いたでしょう。市民だけではありません。大貴族の面々だって「あの名門ハプスブルク家の皇妃になれたのに何が不足があるものか!」と羨望と嫉妬の目を向けられた事だと思います。

 

でも

 

「分かってます!分かってますとも。でも嫌なものは嫌なのよっ!!


多分、エリザベートもこんな気持ちだったと思います。

 

私事に戻りますが、時代の変化と共に失われていく仕事があります。

私もCPが当たり前の時代になり、専門職から一般事務に転向したのは30代も後半になってから。


うちの会社は20代で結婚・育児で辞めて行くのが王道だったので、若い子に混ざって40近くの女が一から事務をやるのって、一部の男性職員の風当たりがキツイかったなぁそういうタイプの男は大して出世しなかったけど。逆に良くしてくれた人は皆偉くなってるのよねぇあら、別に私の呪いじゃないわよ。

 

さて20代、30代の頃はまだまだ働く時間が無限の様な気がして、それに年齢制限も色々あって転職をする勇気がなかったけど、取り合えず厚生年金も40年払い続けたし(生々しい)やっと楔から解き放たれた気分です。

 

10年程前、やはりエリザベートの愛した伝統料理を食べた時、私もエリザベートの様に異動先の先輩から電話での遣り取りから何から全てチェックされていた事がありました。


その部署は人事異動が殆どなく、10年以上公私共に仲良くやっていた方が別の部署に異動され、その後任で移ってきた私のやる事が気に入らなかったんでしょうね。


何かと言えば「前任者は、こうしてたわよ!」って言われましたから。

 

あの時、エリザベートが死の前夜に食べたと言われる「鱒とジャガイモのクリーム煮」を食べながら、エリザベートもこうやって現状逃避をしても根本は何も変わらず、明日になれば確実に現実(身を置きたくない世界)が待ってたんだよなぁと思って、思わず一人ウルウルしたものです。

 

そして、今回はあれから10年と言う時を経て、今回は一人慰労会と言うか、頑張ったねディナーです。

 

尤も、エリザベートには結婚式も銀婚式の料理もお祝いではなく、味気ないディナーだった事でしょうね。


さて、ではエリザベートがどんな料理を食べていたのか、ここからはお料理の紹介です。

 

まずはキッチンからのご挨拶は、牛肉のゼリー寄せ。二色のパプリカのマリネと共に。




手前にあるのはカボチャの種のオイルに裏ごしした卵を混ぜたソースです。

ハプスブルク家でも牛肉のゼリー寄せは食べられていた様ですよ。

 

スタートのブリュンデルマイヤーさんのブリュットと一緒に。



しっかりした味わいで、原酒の良さが証明されている泡モノ。下手なシャンパーニュを飲むより断然オススメ。私も家でロゼと白をストックしていた程。




前菜ですが「軽く燻製にしたサーモンの低温マリネ。キャビアを添えてバターブッファーと共に」

 

オーストリアは内陸にある為、当時は鮮度の良いお魚が手に入らず軽く燻製にかけて弱い火を通した様です。今は鮮度の問題はありませんが、それでもサーモンは大きな魚なので少し魚臭さがあります。その魚臭さをとるにも燻製は効果的。

余計な脂が抜け、程よい脂残りです。

 

また、キャビアは塩気が強いのでバターブッファーという甘くないクッキー(ケークサレ

クッキー版)が添えられていますが、このバターブッファー、バターの香りがフワッと鼻孔を刺激して堪りません。

 

下に敷かれているトマトも薄い色合いなのに果物の様な甘さ。

「すっごく甘くないですか!?」と聞いたところ、フルーツトマトを涼しいところに置いて追熟させているとの事。

 

 

次に地鶏を使ったクリームスープ 根菜と鶏のノッケルン

 



これぞハプスブルク家らしいスープ!って感じです。


ハプスブルク家ではオリオスープと言う栄養満点ハイカロリーなごった煮的スープがありますが、こちらもサラサラしたポタージュではなく、ドロッとした食べるスープスタイル。

蒸し鶏の様な凝縮した鶏の美味しい香りが鼻先をくすぐります。

 

今回初めて知ったのですが、エリザベートはダイエットばかりであまり食べないイメージでしたが、フランス料理が大好きだったのだとか。

 

宮廷の食事は嫌い(ほら、ハプスブルクの垢が着いたものは徹底して嫌いだから)だったから宮廷では食べなかったけれど、外のレストランでお喋りをしながら食べるのは好きだったのだそうですよ。

 

確かに、エリザベートはコンディトライに入ってあれこれケーキを注文したら、会計をする時に持ち合わせが足りず、女官からお金を借りたと言うエピソードが残っています。

また、ケーキ屋さんでも店員さんと色々話をするのが好きだったとも

 

実はこのスープには根菜と鶏の繋ぎ的な役割としてベシャメルソースが使われています。

なんでも、フランス料理が好きだったエリザベートの意見を取り入れた作り方だそうですよ。

 

当時のスープはこってりとしていて、とても現代人には出せない程濃かったそうで、濃度だけは今風にアレンジしたそうです。

 

スープを飲み終えてサーヴィスの方と料理の話をしていると、何となく口の中がミルクの余韻がやはりベシャメルソースを使っているだけに後味がミルクっぽいんですね。


エリザベートが毎日ミルクを沢山摂った事、食事を摂らない皇妃に何とか栄養を摂って欲しいと言うキッチンスタッフの願いもあり、オーストリアではスープが重要な位置を占めるようになったと言うエピソードたっぷりの料理です。

 

ノッケルンは山と言う意味。多分、湯通りしてクネルの様に作られているのでは?

プリっとして触感もよろし! 滋養満点。また1つお気に入りが増えました。

 

お魚料理に入る前に登場したのが、ハプスブルク家直系のオーナー、マクシミリアンさんが作るワイン。(前にもご紹介しましたが…)




固有品種グリューナーヴェルトリナーを使った、切れの良いワインを今回は「軽くソテーしてシャブリで蒸し焼きにた平目と蟹の白ワインソース」と一緒に。

 



当時フランスではバターをたっぷり使ったソースが主流でしたが、オーストリアでは白ワインにクリームを混ぜると言うように軽めに仕上げるがオーストリア流との事。


今回はお魚を蒸すのに使ったシャブリにクリームを加えて泡立てたソースです。

 

お魚がプリっと、でも柔らかくとてもジューシー。やはりシェフのお魚は最高です。

 

そして蟹は当時とても高価だったそうですよ。

ディルを混ぜた温かいサラダ仕立てです。

 




エリザベートの好きな菫のソルベ。


菫の色を抽出するのは難しく、その時々によってバリエーションがあり、下手をするとマロウの様な単に青っぽいだけの薄い味と香りなりますが、今回は風味も良く、ただただ美味しい。

 

メインは「黒毛和牛のロースト リー・ドボーと玉ねぎのソース 茸のユーバーバッケンと共に」これをユルチッチさんのツヴァイゲルト(オーストリア固有品種)2013年と共に。

 






ツヴァイゲルトも綺麗に熟成してイタリアワインの「カレラ」の様なエレガントな仕上がりに。

 

が、久しぶりのフルコース。

もうこの時点で十二分に満腹。お肉より付け合わせの玉葱の方が嬉しいと言った状態でしたが、このお肉の火入れは最高です。


お肉の脂の部分が綺麗に赤みに染み込まれた様で、噛む程にジューシーな脂とそのうま味がじわっと口中に広がります…これが美味しいんだけど、なにせ腹十二分な腹には重い。10年前なら軽々食べていたのに…残念。

これをオーブンでなく、フライパン1つで作っているのだとか。

その技術の高さに凄いを通り越して「スゲー!」

 

付け合わせの黄色い子は、ヒラタケにオランディーズソースを掛けて炙ったとの事。

オランディーズソースの酸味が、隙間なくパンパンのお腹にも美味しく優しかったです。

 

デザートは別腹と言いますが、もう別腹の余裕は…ない。

でも食べちゃう!!

 

余談ですが、通常料理の場合、この日からマローネ・パラチンケン(マロンクリームを挟んだクレープ)が始まったと、他所のテーブルから説明が聞き漏れてきまして…

 

「なんやて!!

私の大・大・大好物ではないかい!!


と頭の中をマロンにしつつ、運ばれてきたのが「チョコレートとフランボワーズ アイシネーのトルテ仕立てとチョコレートムースとオレンジ」

 



1つ、1つはとてもシンプルですが、組み合わが美味しいです。

 

オレンジは敢えて甘くせず、しっかりと酸味があるのにチョコレートのムースと馴染んでいますし、フランボワーズってこれだけしっかりと量を食べるとお花の様な香りもあったり、意外と複雑。チョコレートのトルテはビターでホロホロっと良い感じでほどけていきます。


因みにアイシネーはチョコレートトルテの上に載っているイタリアンメレンゲの事。

 

そして、お皿の上のメッセージ。

 

先月、お肉を外せるかサーヴィスの方と相談した時の事、コースが成り立たないのであれば、通常料理にしてメインだけインペリアルホテルの伝統料理のオマール海老の料理に変えて欲しいと話したんです。

その時に、1020日が勤続丸40年なので、自分へのお疲れ様会の意を込めている旨、雑談をしたのですが、その事を覚えていてくれた様です。

 

どんなメッセージにしようかスタッフ皆さんでアレコレ意見を出し合って下さったとの事。

 

チョコレートで字を書くのって難しいんですよねぇ。

ホント、感動しちゃう。

 

こんな素敵な演出を有難う‼︎

こんな嬉しい記念日はありません。

 

さて、久し振りに伝統料理を頂いて、現代のレストランのお料理って改めて華やかなんだなぁ、と感じました。

対してクラシックなお料理はシンプルなんですが、それでも奥行きがあって…どちらが良いとはホント言い難いです。

 

どちらもそれぞれ良さがあって。

 

お料理も流行があって、古き良き時代のお料理を作るシェフはあまり見かけなくなりましたが、こういうクラシックなお料理を作れるシェフって本当に大事だと思う。

 

クラシックの良さに浸りました。


最後はプティフールとカフェですが、いつも私はプティフールをカットしているせいか、ファイルヒェンと言うチョコレートのお菓子をお土産に頂きました。


ラズベリーの酸味がアクセントになった芳醇なチョコレートケーキです。