ラノベ「双頭の鷲―ハプスブルク家物語―」
皇妃エリザベート⑬~奪われた子供達~
シシィに励まされ、フランツ・ヨーゼフは今後、子供の養育はシシィに任せる様に手紙を送る。
ゾフィーは息子からの手紙を読んで激怒する。
「何ですってーっ! 私が側にいないとロクな事にならないわ。あの娘にそそのかされたのね。じゃ、いいわ。今後一切面倒は見ません!! その代わりどうなっても知らないから! シシィさん、お手並み拝見ってところだわ」
言葉通り、ゾフィーは子供の事について口を出さなくなった。
シシィはつかの間の勝利を享受した。
そしてハンガリー訪問。
シシィは周りの反対を押し切って、ゾフィーを外交旅行に連れていった。
お妃教育の時にハンガリーの歴史について深く学んだ事もあるシシィは、ハンガリーの文化に興味深々だ。
ハンガリー貴族達も自分達に好意的なシシィを快く迎えた。
シシィの存在が功をなして、ハンガリーとの友好関係の修復も上々だ。
宮廷側も「これでハンガリーの反乱分子を抑えられる」と思わぬ展開に安堵する。
ハンガリー訪問は大成功だった。
しかし…
「皇妃様!エリザベート様!大変です。ゾフィー様のご様子が…」
旅先で病にかかったゾフィーはあっけなく世を去ってしまった。
皇帝夫妻は直ぐにウィーンに戻った。
(叱られる!絶対に、ひどく叱られる!)
シシィはビクビクしながら戻った。
しかし、宮廷は悲しみのあまりシシィを非難する事はなかった。
暫くの間宮廷は悲しみに包まれた。
悲しみに暮れた冬は過ぎた。
やがてシシィに懐妊の兆しが現れ、シシィは待望の男の子を出産した。
宮廷を始め、ウィーンの街は祝賀ムードだ。
しかし…
今回の出産はシシィをひどく傷つけた。
産後の肥立ちが悪く、栄養が不足気味だったシシィは中々体調が回復しなかったのだ。
おまけにゾフィーを亡くした悲しみから未だ立ち直れず、シシィはうつ病となり精神が不安定になってしまったのだった。
男の子はルドルフと名付けられ、精神不安定な母親に育てるのは無理と、またもやシシィの手から引き離され、国家の子供として宮廷で育てられる事になった。
もうシシィには子供を取り返す気力はなかった。
皇妃エリザベート・完