ラノベ「双頭の鷲―ハプスブルク家物語―」
大公女テレーゼの結婚②
「陛下、して大公女様は如何様に申されておるのかな?」
「……」
「陛下」
「……」
「おいっ、若造!!」
(ひぃっ)
「何も言えね…」
「んっ?何も言えないとは?」
「だーかーらぁ、何も言えねぇてーんだよ!ジジイ。もう結婚の話をするだけでレースルの機嫌が悪くて…もうさぁ、ロートリンゲンでもいいかなぁって…」
「ふぅ―――。情けない。宜しいかな、王家の子女の結婚は国家政策ですぞ。惚れた腫れたなどと言う私情は考慮に値せんわい!しっかりしろぃカール!!」
「分かってる、分かってますよぉ。でも、幸い私も健康には自信があるし、要はテレーゼとフランツの間に男児が生まれれば問題ない訳ですよねぇ。その子が成人する迄の間だけフランツに摂政として支えて貰えば良いんじゃないかと…」
「ふん、だからお前は甘いんだ。いいか、今は平穏無事でいるが、それはお前あっての事だ。ハプスブルク直系の皇帝が睨みを利かせているからこそだと言う事を忘れるな。それにわしも…大公女様の代にはこの世にはおらん。何度も言うが、国力とは軍隊力だ。侮るなよ」
オイゲン公にはカール亡き後、テレーゼが後継者となった時、列強国が牙を剥いてハプスブルクに襲い掛かる事が見えていた。
しかし、カールは娘可愛さにハプスブルクに襲い掛かるであろう嵐を予見する事が出来なかった。
「老公・・・・老公には分からんのだ」
「んっ、何が分からんのだ?」
「家族を持った事がない奴には分からんさ。愛する娘からシカトされる辛さがな。親として幸せにしてやりたい。フランツだって小国の王子と言う以外非の無い理想的な男だからな…」
「ふん、そんな足枷の様なモノを家族と言うなら、持たない方がマシだ・・・・」ふとオイゲン公は遠い瞳をした。
つづく