ラノベ「双頭の鷲―ハプスブルク家物語―」
中世最後の騎士マクシミリアン⑩
マクシミリアンとマリアは幸せだった。
結婚後、1年も経たないうちに子宝に恵まれ、マクシミリアンとマリアは超ラブラブな新婚生活をメッチャ、エンジョイしていた。
どれだけラブラブだったかって?
マリアは運動神経バツグンで、何をさせてもマクシミリアンに引けをとらなかったし、乗馬が得意なマリアは、マクシミリアンと共に遠乗りをしたり、マクシミリアンの好きな狩猟に同行した。
冬になると池に張った氷の上でマクシリミアンはマリアからスケートを教わった。
2人はいつも一緒だった。
夜には伝記や物語を読んだり、お互いの土地に伝わる民話を聞かせ合いながら、2人はお互いの国の言葉を覚えていった。
マクシミリアンは瞬く間に、フラマン語をマスターしていった。
マクシミリアンに限らず、この後のハプスブルク家の人達も皆語学力に長け、複数の言語を使いこなしている。
そして、マクシミリアンが朝目が覚めると、いつも見事な刺繍がされた上着や、洒落たシャツ等、素敵なプレゼントが届けられていた。
「ママ、明日は何を贈ったらマックスは喜ぶかしら?」
「そうね、ダイヤをはめ込んだ靴なんでどうかしら?」
「ダメよ。ダイヤはこの前贈ったもの。それより金糸を縫い込んだチョッキなんてどうかしら?」
この様なマクシミリアンへのプレゼントの相談会もマリアとマルガレーテ母子の生活の楽しみとなっていた。
そして、マリアは寝ぼけ眼の夫が、プレゼントを見つけて驚いたり、喜んでいる姿をそっと覗いては、吹き出したり、共に喜んでいたのだった。
食卓には山海の珍味が所狭しと並べられ、これ迄皇帝の子とは言え、貧し2、3日何も食べない日が続く事さえ普通だったマクシミリアンには、まさに夢の様な毎日だった。
しかし、幸せは長くは続かなかった。
つづく