ラノベ「双頭の鷲―ハプスブルク家物語―」
中世最後の騎士マクシミリアン④
トーリアの会見はもの別れのまま終わった。
しかし、
シャルルがマクシリミアンを気に入り、娘の婿にはこの少年以外考えられないと思わせた事はハプスブルクにとって十分利があった。
「父さん、僕はあの姿絵に描かれた女の子とは結婚出来ないのですか?」
帰り際マクシミリアンは父に聞いた。
「心配するな。まぁ、暫く様子を見ていなさい」
フリードリヒには妙案がある訳ではなかった。
しかし、
長年の勘なのか、この結婚はいつか動く、と言う予感めいたものがあった……のかもしれない。
その後も、折りに触れシャルルからは「娘が欲しければ王冠をよこせ」と要求があったが、我慢を得意とするフリードリヒは相変わらず、のらりくらりと要求をかわし、時が来るのを忍耐強く待っていた。
やがて、フリードリヒの態度に根負けしたシャルルは、
「アイツ鰻みたいなヤッちゃなぁ、掴み所がないわい…もういい! 王冠の事はどうでも構わん」と思う様になっていった。
そこで、豪を煮やしたシャルルは、ストレス発散とばかりに「一丁ドイツ方面に攻撃してみるか」と兵を進めた。
しかし、
皇帝軍に撃退され、そればかりかスイス人にも撃退され、二度に渡って完敗を喫してしまった。
「この俺とした事が、スイス兵ごとに負けるなんて……。なんか嫌な予感がする。な〜んか嫌な予感が」
「お館様、気のせいっすよ! これまで連勝連敗を誇っていたじゃないっすか。偶々っすよ、偶々」
「いや、連勝連敗だったからこそ嫌な予感がする…まさか、俺様の勝運も尽きた…とか?」
シャルルは不吉な予感がした。
そして、もしもの事を考えて…それなら自ら突進していかなければいいのだが…「ええい、くそっ!もう、皇帝にしろなんて言わねーよ!オメーのせがれとウチのマリアの結婚を認めてやるよ。だから娘の事だけは頼む!…どや?」と結婚を認める事にする。
つづく