殿方殿、ご用心召されよ | Salon.de.Yからの贈りもの〜大事な事は全てお姫様達が教えてくれた。毎日を豊かに生きるコツ

Salon.de.Yからの贈りもの〜大事な事は全てお姫様達が教えてくれた。毎日を豊かに生きるコツ

元ワイン講師であり歴史家。テーブルデコレーションを習いに行った筈が、フランス貴族に伝わる伝統の作法を習う事になったのを機に、お姫様目線で歴史を考察し、現代女性の生きるヒントを綴ったブログ。また宝石や精神性を高め人生の波に乗る生き方を提唱しています。

以前私が営業部門にいた時の事。

当時の支店長は、下々の社員にも気軽に声をかけて下さったり、古い因習から抜けて合理化を目指される様な当時としては新しい気質の方でした。

そして何より紳士でいらして、まさに「この方の力になりたいおねがい」と思わせる様な素敵な方だったんです。

その支店長が良く言っていたのが「女性と上手くやっていけない男性社員は出世しないよ」でした。

よくぞ言ってくれました!!グッド!と私はいつも内心、拍手喝采をしたものです。
と言うのも、私も常々そう思っていたからなの。

以前、ワインスクールに通っていた時、親しくさせて頂いていた歯科医の友人は、何をやってもソツがなく中々優秀なヤツでして、これがまた、オバ様方から可愛がれるのよ~。

その時、思い当たったのが、師匠の田崎真也さんもオバ様方からも好かれるタイプだって事。

思わず友人に「あのさぁ、アンタや田崎さんを見ていると、オバ様から好かれる人って仕事が出来る人が多い気がするぅ」と言ったところ、そいつは「バサマ(=オバサン。年配の女性)を制する者は世界を制す」と、のたまきやがったゲラゲラ

思わず「アホかいな⁈」と言って、二人で大笑いをしましたが、あながち間違っちゃいないのよね。

だって、女性に嫌われたらそれこそ怖いから・・・


今から300年程前。マリア・テレジア23歳の時の事。



お父さんの喪も明けない内に、新興国プロイセン王のフリードリヒがハプスブルグ領のシュレージエンを瞬く間に占拠し、諸外国から守って欲しければ領土をよこせ、と脅迫して来た事がありました。

真面目なテレーゼは、先祖代々受け継がれた土地を一片たりとも譲らず、次の代に受け渡すのが自分の役目と思っていたので「前代未聞の大泥棒」「この恥知らず」とフリードリヒの事を憎んだんですムキーッ

流石に他の外国の王たちも「喪に服している時に、非常識だよなぁ」と思ったのですが、先手必勝と言うのがフリードリヒのスタンス。

初恋の王子と恋愛結婚で結ばれて、結婚の翌年には王女が産まれてから、毎年の様に次々と子宝に恵まれるテレーゼの情報を耳にして、フリードリヒは「ふん、あのオーストリア家のお嬢ちゃんなんて、お尻の軽いお嬢ちゃんさ」と値踏みしていたんです。

永遠のライバル同士


そんな尻軽なお嬢ちゃん相手じゃ、赤子の手を捻る様なものと強気に出たフリードリヒは、豊饒な土地シュレージエンを占拠し、それを足掛かりに広大なハプスブルグの土地を我が物にして行こうと言う作戦だったんです。

とは言え、毎日開かれる閣議で、高給取りの首脳陣達は判で押したように「ここは一先ずプロイセン王の言う事を聞いて、和平路線を保つのが有効かと…」と言うばかりぼけー

頭の堅いジジイが言うなら、いたし方がないけれど愛しの君のフランツまでもが右に倣えなものだからチーン、テレーゼにしてみれば、これが愛しの夫フじゃなかったら、蹴りの1つや2つも入れてやりたくなる。

「もう、そうじゃないでしょっ!!ここで同盟相手を変えるとか、過去の因習を変えないとダメなのよっ!!」と尻を叩くも、柳に風と言ったところ。

そんな時、後の宰相カウニッツが「出来そうもないと言う事で実行されずにいる事がどれほど多い事か。しかも、実行されなかったと言うだけで解決不能とみなされている」と口火を切ったのびっくり

そして、朗々とオーストリアは過去300年の因習を終わらせ、同盟国をイギリスからフランスに変えるべきだ。その方がフランスにもオーストリアにも得るものが多い、と自分の意見を言ったのね。

カウニッツが話し終え、シーンと静まり返った議会の空気を破ったのがテレーゼ。

「きゃーっ、カウニッツ!!私もそれを思っていたのよ爆笑やっと同じ思考水準の人に会えたわーっ!!」

頬を紅潮させて、今にも抱き着きそうな勢いのテレーゼを横目に、細君のフランツはバツが悪そうにそそくさと会議室から出ていったとか。

その日から、テレーゼとカウニッツの巻き返し作戦が始まったの。

「でも、カウニッツ。フランスはこの提案にYesと言うかしら?」

「大丈夫。時間はかかるかも知れないけれど上手く行きますよ。まず、フランス国王の寵姫ポンパドールはプロイセン王の事が大嫌いです。寵姫を使って国王の同意を得ましょう。そして、ロシアのエカテリーナ女帝もプロイセン王が嫌いです。ピョートルには実権がありませんから、フランス、ロシア、オーストリアの三方からプロイセンを追い込めば袋の鼠です」

こんな風に、オーストリアはロシア・フランスと手を組んでフリードリヒを追い込む事に成功しかけたんです…そう、エカテリーナが逝去しなければ、この戦争は勝っていたかもしれなかったの。

これが世に言われる、3枚のペチコート作戦。

エカテリーナ女帝

ポンパドール夫人



それにしても、どうしてフリードリヒは実権を握っていた女3人に嫌われていたのか?

まぁ、領土を奪われたオーストリア家は分かりますよね。
では、フランスとロシアは何故?

実は、フリードリヒは大の女嫌い。

「女なんて子供を産む道具に過ぎないさ。それしか能がないんだから。」と常々豪語していたんです。

テレーゼにしてみれば、それだけでも虫唾が走ると言うもの。

「あぁ、おぞましい、あの怪物!!」とフリードリヒの名前を聞く度にゾッガーンとする位だったんです。

それに加えて、ロシアのエカテリーナ女帝のことは「あのメス豚」と言い、フランスのポンパドール夫人を「あばずれ」と揶揄する。

そりゃ、「なんなのよ、アイツ!プロイセンなんて、ちょっと前迄みすぼらしい後進国だったじゃない。あの人のお父上なんて、まるで軍曹みたいな男だったじゃないのっムキー」ってな具合になる。

そこを社交界のイロハを熟知した優男風のカウニッツが「まぁ、まぁ、マダムお気を直して。そんな怒った顔をされたら、折角の美人が台無しですぞ。貴女様の知性とその美しさが分からないとは、男の風上にもおけませんな」等と、高価なプレゼントを差し出しながら機嫌を取るニヤリ

勿論、領収書はカウニッツの報酬を上乗せして、テレーゼの元に届く。

高額な支払いをさせられて、テレーゼも「あの男はとんだ食わせ物だわ」と面白くないが、それでも経費として処理をする。

もう少しフリードリヒが女性の使い方が上手かったらこんな事にはならなかったでしょうね。

ロシアとフランスとオーストリアが手を組む。
ある筈がない。いや、あってはならない事だったの。

だから、フリードリヒは「たかが女がそんなことをやってのける筈がない」とテレーゼの事を見くびっていたのね。

でも、実は心の底で「万が一…」と一番恐れていた事を「たかが女」のテレーゼがやってのけちゃったって訳。
カウニッツと言う腹心の部下を使って。

他にも歴史を紐解くと、女性から嫌われて痛い目にあった偉人はいるもの。
例えば、ナポレオンだってロシア公妃から嫌われて結婚を阻止されたり、マリー・アントワネットのお姉さんからは目の仇にされていたんです。

逆に、女性を大切にして命拾いをした人もいますよね。
お龍さんに命を救われた龍馬さんだって、その1人だもんねぇ。

女性は情に厚いので、気に入れば誠心誠意尽しますし、ビジネスの場でも、キチンと対処が出来る男性には何かと好意的に取り計らう事もが多いです。

しかし

「普通しないよね…」と言う様な理不尽な事を度重ねてされれば、トコトン嫌いになる事もあります。
嫌いになったら、ホントしつこよぉ~滝汗

分からない程度にプチ嫌がらせをされる可能性・・・・ありますよ。

殿方どの、どうかご用心召されよ。