ビーダーマイヤーとお料理 | Salon.de.Yからの贈りもの〜大事な事は全てお姫様達が教えてくれた。毎日を豊かに生きるコツ

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元ワイン講師であり歴史家。テーブルデコレーションを習いに行った筈が、フランス貴族に伝わる伝統の作法を習う事になったのを機に、お姫様目線で歴史を考察し、現代女性の生きるヒントを綴ったブログ。また宝石や精神性を高め人生の波に乗る生き方を提唱しています。

ヨーロッパの料理で、その土地らしい料理を食べようとするなら、その魅力は郷土料理。

高級レストランより、気軽なビストロの方がその土地らしさが味わえます。


レストランが出来たのはフランス革命によって貴族や王宮に勤めていた料理人達が失業した為。

料理人達が、王宮や貴族のお屋敷で磨きをかけた腕やレシピを、今度はブルジョワジーに向けて振るう様になったのが始まりです。

 

オーストリアはフランスの様に暴力的ではありませんが、王宮のキッチンで修行したシェフ達が実力を着けて、独立しレストランを開いていったんです。

 

その様な高級レストランのお料理が、基本的にフランス料理に似ているのは、王宮や貴族のお屋敷で振舞われていた料理にルーツがあったからなんです。

 

では、何故フランス料理なのか。

 

勿論、王族達がヨーロッパの権力のバランスを取る為、政略結婚と言う手段を使った事が一因しています。

 

が・・・・

 

18世紀のフランスの文化が、最も洗練されレベルの高い文化だった為、ヨーロッパ中の王族がこぞってフランスの文化を自国の宮廷に取り入れたんです。

 

現代でも、サミット等公式晩餐会で饗される料理がフランス料理と決められているのは、18世紀のフランスの文化が史上最高であった為、1つの形として確立されているから。

その為、パッとみて自分がどんなおもてなしを受けているから分かり易いんですね。

 

さて、今回のオーストリアの食文化はオーストリアならではの料理と言うより、芸術様式と料理と言う少し固い側面からご紹介させて頂きます。

 

ハプスブルク家は最盛期には、スペイン系ハプスブルク家とオーストリア系ハプスブルク家があり、ウィーンとスペインの間を何組もの花嫁が行き来したものです。

その為、オーストリアのお料理にはスペインの要素もふんだんに取り込まれています。

 

ハプスブルク家を語るには外す事が出来ないのが、婚姻政策。

 

「戦争は他家に任せておけ。幸いなるオーストリアよ汝は結婚せよ」


と言う言葉が生まれた程、結婚によって領土を拡大してきた為、料理人を連れてお輿入れした皇妃達の祖国の料理も自然と取り入れていったんです。

その為、オーストリア料理は一言で説明し難いんですね。

 

勿論、18世紀に全ヨーロッパの宮廷がフランスの文化を取り入れた様に、オーストリアもフランスの文化を上手に取り入れて来ましたし、何より、女帝マリア・テレジアの旦那さんフランツ・シュテファンはフランスの王子様ですから、ハプスブルク家の食卓はフランツの影響で大分改善されたものとなったんですよ。

 

さて、フランスで革命が起こった事を発端に、ヨーロッパの各国では王家による支配から市民による政治に移り替わろうとしていたんです。

 

それはウィーンも同じ。

尤も、ウィーンっ子はハプスブルクの王宮と牽制しつつも良好な関係を築いていましたから、自分達が主導権を握りたくても大好きな皇帝達を殺そうなんて思ってもみなかったんです。

 

ただ、皇帝は好きだけれど、王宮専制の政治を死守しようとする政府とは仲が悪かったムキー

 

その為、市内には秘密警察が敷かれ、本や新聞等政府に楯突こうとするモノについては徹底的に弾圧されたんです。

 

その様な物騒な世相の中で、むしろ、皇太子のルドルフや皇妃エリザベート等はナショナリズムは当然の流れと感じていたので、ソフトランディングの道を探っていた位だったの

 

そんな時代だったから、何か疑われて密告されたら最後。投獄させられてしまう。

その為、市民達は怖がって外へ出なくなってしまったんですガーン

 

それがビーダーマイヤーと言われた時代。


エリザベートが使った食器や、当時の家具等のしつらえはビーダーマイヤーと呼ばれています。


因みに、ビーダーマイヤーは芸術様式と言うより、その時の文化そのものを差すので、フランスの食卓芸術では世紀末様式とも呼ばれています。


さて、

 

ビーダーマイヤーの時代になると、市民達が外に出ない代わりに室内で使うモノにお金をかけて、贅沢をするようになったんです。

 

その為、それ迄、貴族達が作り上げてきた、繊細で豪華、華麗な金彩やエッジがついていたバロックやロココに代わって、装飾を出来るだけ省いた市民的な様式でありながら、上質な家具や食器等が誕生してきたんです。


簡素だけれど質が良い。

繊細さや軽やかさは無いけれど、モチーフの1つ1つが丁寧に描かれていると言う様に、丁寧でモノが良いんですね。

 

勿論、それは、王宮の食卓を飾る銀器や装飾品にも。

 

ですので、マリア・テレジアが使っていたカトラリーや食器に比べて、エリザベートが使った食器は直線的でありながら重厚な感じです。

 

そして、料理の世界も時代と共に変化し続けています。


フランス料理の世界ではバターやクリームを使った料理が主流でしたが、健康志向が強くなり、オリーブオイルやハーブを使ったヌーヴェル・キュリジーヌが登場したのは80年代頃の事。

 

オーストリアでも、時代流に軽やかな料理へと変わって来た事は同じです。


銀座にあるレストラン、銀座ハプスブルクさんでは、ハプスブルクの気風をベースに、お料理の細部まで手が込んでいった、ビーダーマイヤーの時代を経て、現代のオーストリアが楽しめる場所。


ビーダーマイヤー様式の店内で頂くお料理は、オーストリアの伝統料理から現代のお料理まで、細部まで細やかに手が込められているところは、ビーダーマイヤーの流れなのかも知れません。


 

誕生日を前に、改めて時代の流れを感じた夜でした。

 

 

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鴨のロースト。オレンジ風味のピュレと共に。

ガルニチュールの玉葱は、ジュニパーベリー等と使ったピクルスがローストされている所が洒落ています。この細かい技がビーダーマイヤーを経た国の食文化の様な気がします。


ソースもピュレになっていると、綺麗にお肉に絡まりますね。

こんな所が、オーストリアらしさの様に思います。

 

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しっとりとした鶏のローストに、フォアグラをケーキの様に見立てて。

フォアグラのほのかな苦味がブリュットのビスケット香にマッチします。

隣国ハンガリーがファアグラの名産地なので、オーストリアでもファアグラは土産物になる程有名です。

 

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ディーターシェフのデザインの一皿。

柑橘類のソースがホワッと口中に広がる珍しい味わいです。

サーモンと柑橘類って相性が良いんですね。

 

ディーターシェフのお料理は見た目のインパクトが大。パッと見て「あっ、彼のお料理ですね」とすぐに分かる程。

自国のお料理だからこそ、伝統だけに縛られず大胆なデザインが出来るのかも知れませんね。本当に可愛らしい一皿です。ご本人も可愛らしいイケメンシェフですよ。

 

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アサリなど貝で出汁を取り、クリームと合わせたスープ。

貝の出汁は優しく旨味がありますが、とても贅沢。

沢山の野菜と浮身のまとう鯛と絡ませながら頂きます。

 

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誕生日なので、レストランからのメッセージ付です。

素敵な心遣いです。



番外編

 

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エリザベートのテーブルセッティング。
ビーダーマイヤーの時代の食器やカトラリー。
食卓花もビーダーマイヤーです。

ちょっと宣伝しちゃうと、salon.de.Yでは、こんな事もお勉強します。