ヴォワラン・ジュメル・キュヴェ・555NV
1972年から続く、RM(レコルタンマニュピュラン)のシャンパーニュ。
所有する12haの畑の内80%がグラン・クリュとプルミエ・クリュ。
この畑から除草剤や農薬を一切使わず、有機栽培で葡萄を育てています。
今回、ご紹介するシャンパーニュは、年間15樽しか作られない希少キュヴェ。
ドン・ペリニヨンの畑の真下に位置する畑から葡萄を、6ヶ月間樽で熟成させた後、瓶詰し4年間の瓶内熟成を経てリリースさせたもの。
シャルドネ100%。ブラン・ド・ブランです。
因みに「555」と言う名前は、住所の末尾。
でも、農家さんの作るシャンパーニュで、ドンペリニヨンの畑の真下の番号でしたら、名前にしたくなるかもしれませんね。
溌剌とした泡が途切れなく続き、綺麗なコルドンを形成しています。
泡の立ち方を見ていると、「幸先良さそう」と思わせる様な・・・お祝い事に持って来いの泡立ち。
香りは、グレープフルーツの様な香り、煮詰めたリンゴ、蜜の様な香り、ブリオッシュ。
テクニカルデータではトーストと出ていますが、そこまで焦げ香りは無いです。
ミネラル、お花っぽい印象も。香りのトーンも綺麗に纏まっています。
アタックに優しい甘味。爽やかですが角のない酸が口中に広がり、中盤から優しい苦味が乗っかる印象。
ブラン・ド・ブランなので軽やかな印象ですが、全体的にバランスよく綺麗に纏まっています。
ブラン・ド・ブランにしてはしっかりと飲みごたえのあるシャンパーニュ。
欲を言えば、これにピノ・ノワールの骨格が加わったら、どれほど良いワインになるだろう、と言う事です。
確かに、シャルドネ100%にしては上手く出来ていて、普通はガッカリさせられるブラン・ド・ブランの中、これは良く出来ています。
ボーンががっちりしていて、肉厚。
これにピノ・ノワールのフィネスが加わったら、贈答にも使えること間違いなしと思うと、やや勿体ない感じがします。
ワインの事が分かっている人に贈れば「おっ、ブラン・ド・ブランの割に、なかなか良いね」と理解してもらえるけれど、ワインの事が良く分かってないと「くくーっ」っと飲んで、スッキリした感じだね、で終わっちゃう。
「えーっ、そうじゃないんだってば」このシャンパーニュはね・・・・って力説したくなっちゃう、つまり、その真価を問うには飲み手を選んでしまう恐れがあります。
実は、胃が疲れている様でここのところ体調不良。「じゃ、飲むなよっ!」と言われそうですが、それでもススーっと身体に入っていくのは、有機栽培やビオの優しいところ。
この軽やかさが、良く出る時もあれば負と出る可能性もある。
ワインに従事する者の価値観で計ったら、得点は高いだろうけれど、ワインに特別の思い入れを持たない人が飲んだら、並のワインと言う評価を下される可能性も無きにしもあらず、そこが、飲み手の好みが出るところだと思う。
結論から言えば、今後もこの作り手は注目されるだろうと思います。
価格も上がるんじゃないかな。
ただ、敢えて厳しい事を言わせてもらうと、ここに、NM(ネゴシアンマニュピュラン)とRM(ネゴシアンマニュビュラン)の底力の差を感じてしまう。
つまり、ブレンド力がないのが農家さんのシャンパーニュ。
とっても厳しい事を言ってしまうと、気品に欠ける。
しっかりとした骨格、フィネス、繊細でありながら気品を求めるなら、NMと言われる大手メーカーさんに勝てないのか・・・と、RMを飲む度に問うてしまう。
そして、RMは若干酸化している傾向にある。
しかし、畑仕事に力を割くことが出来る分だけ、有機栽培とかビオが出来るので、身体にスーッと入ってくる。
私はシャンパーニュを贈る事が多いので、まず贈り物として使えるか考慮しながら飲む事が多いのですが、このシャンパーニュは贈答を視野に考えると難しいところ。
贈物なら、分かる人には分かるシャンパーニュと言ったところです。
お薦め料理は、サラダ、白身魚を蒸したり、シンプルに焼いてオリーブオイルをかけたもの。カルパッチョやタルタル。
鶏むね肉の龍田焼、焼き鳥(塩)など、シンプルな料理向き。
鶏レバーのパテを薄くスライスしたバケットに塗ったり、クリームチーズなど癖のないチーズ、シェーブルとリンゴなどに合わせても良いかも。
いずれにしても、軽やかさを楽しみたいシャンパーニュ。
キリッと冷して、アペリティフから前菜、サラダ、お魚など軽い料理ならメインと、広範囲に楽しめるシャンパーニュ。
シチュエーションとしては夏の午後から夕暮れ、アペリティフには嬉しいシャンパーニュ。
夕暮れ時、東京近辺なら芝浦のインターコンチネンタルホテルの様に、海の見えるラウンジで軽いオードブルと一緒に楽しむには持って来い。
女友達、カジュアルなボーイフレンドと共に。
※勿論、恋人とでも良いけれど、それなら、もう少し重みのあるシャンパーニュの方が会う様な気がします。