エレアノールは、ヘンリーとの結婚生活で、ヘンリーと離れる時は干戈を交えてはいけない事を学んでいました。
ヘンリーに異を唱え、悲惨な最後を迎えた臣下を見てきたので、エレアノールは復讐心を悟られない様、フランスに戻る時も、ヘンリーには愛人の事は詰問などせず、ただ「自領に下がって落ち着きたい」とだけ伝えて、ヘンリーが領地まで送ってくれる事を許可さえしました。
勿論、この時、既にエレオノールの心からヘンリーを追い出していた事は言う間でもありません。
ただ、エレアノールは領地に着き、荒廃しているであろう領地を落ち着かせ、足場を安定させるまでは、下手にヘンリーを刺激してはならないと判断しただけの事。
女と言う生き物を敵に回した男に復讐するには、それなりの用意は必要なのです。
さて、エレアノールのフランスでの生活が落ち着いた頃、エレアノールがヘンリーと別れたがっている事を知ったルイは、フランスの版図を塗り替える好機とばかり、臣下であるヘンリーに反撃を開始したのです。
その頃、ポワティエでは、エレアノールが子供達に囲まれて楽しく暮らしていました。
王子ヘンリーはルイの娘であるマルグリットを妃に迎え、リチャードは同じくアレ―姫と婚約していた為、エレアノールを囲む家族はエレアノールの産んだ王子や王女の他に、王子の妃や婚約者達も加わり賑やかだったのです。
やがてルイとの間に生まれたマリーも加わり、ポワティエの宮廷は華やかな賑わいに包まれていました。
ヘンリーを憎むルイとエレアノールを慕う子供達。
エレアノールの手中には駒が全て揃っています。
王子達とエレアノールは時にルイの庇護を利用し、ヘンリーに反旗を翻す。
こうして、家族同士の争いによってヘンリーの野望は打ち砕かれていくのです。
しかし、エレアノールも決して無傷ではいられませんでした。
ルイの提案で、ヘンリーはフランスの領地を長子ヘンリー(Jr)に、アンジェとメーヌ、アキテーヌをリチャードに、ジェフリーにはブルターニュを分割させる事に同意しました。
※父ヘンリーと長男ヘンリーを区別する為、息子の方は(Jr)と記載します。
因みに、末子のジョンは幼かった為、領地分割には入れなかったのです。
エレアノールは、溺愛していたリチャードをアキテーヌ侯爵として戴冠させ、リチャードと領民の和睦を図りました。
一方、イギリスの王座を譲られたヘンリー(Jr)は、戴冠とは名目だけで、父ヘンリーは一向に実権を譲ろうとはしなかったのです。
弟達がポワティエの宮廷で青春を謳歌し、統治を任されているのに対して、自分だけが統治をさせて貰えないと不満が募るヘンリー(Jr)。
母エレアノールの「王として毅然とした態度で臨む様に」と言う言葉に後押しされ、度々父と干戈を交えていたのですが、ルイと臣従の誓いを済ませている王子ヘンリーは、ルイに庇護を求め、とうとうノルマンディーにて父と子は戦火を構える事になったのです。
子供達が父に弓を引く様になった背後に、王妃エレアノールの影を感じていたヘンリー。
今回の様に組織的な反乱を息子ヘンリー1人が企てられる筈も無く、ここでエレアノールが息子達を追詰めようとしている事が確実となったのでした。
そしてヘンリーの偵察隊が、事実を確かめる為ポワティエに向かうと、そこに王妃達の姿は無く、仕方なく引き上げると、その帰途で、王妃の側近と思われるグループを発見。
偵察隊が近づくと、そこに居たのは、男に変装した王妃エレアノールだったのです。
エレアノールは捕えられ、復讐の代償として、その後15年間、幽閉の身として過ごす事になるのです。
<ポイント>
幸福そうな家族にも影の部分はあるものです。
各々が影を持越さない様折り合いを付ける事が大事。
栄華を極めても、争い事が絶えないのは最大の不幸です。
・・・・・to be continued