ドメーヌ・マニュエル・オリヴィエ ムルソー2010
ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティの醸造コンサルタントを経て1990年に自らのドメーヌを起こした、新進気鋭の醸造家。
村名格のワインですが、Les Pellandsと呼ばれる、緩やかな傾斜の下部に広がる畑を所有。標高は250m、石灰を多く含む白い粘土混じりの土壌で、砂利、石も見られます。
機械は使用せず、馬で耕し、有機肥料のみ使用、化学的な薬品は一切使用していない様です。
平均樹齢30年
醸造は、樽で発酵、熟成(うち30%は新樽)は18ヶ月。
使用する樽は、フランス中央の山岳地帯より樽を取り寄せ、36ヶ月かけてしっかり乾燥させ、ゆっくりと時間をかけながら、丁寧に、しかし軽く内側をローストすることで、香ばしい上品な風味をワインに与えているそうです。(ワイン・エンスーシエスト誌データより)
外観は、グリーンがかった輝きのあるイエロー。
香りは、りんご、グレープフルーツ、白い花の香り、ミネラル、トースト、栗の様な香り。
味わいは、アタックはスマート。穏やかだが溌剌とした酸が広がり、苦味には角が無い。
アタックから最後まで、エレガントな酸が引っ張る感じ。
アフターと余韻に、心地よい苦味が乗っかる印象。
兎に角、苦味が穏やかなのが嬉しい。ここが、イタリアや新世界物などの白ワインの苦味の出方の差なのか?
普通、酸が広がりつつ、舌の両脇からジワジワと酸が迫り、その苦味もそこそこ主張しているワインが多い中、苦味はあくまでもアクセントに過ぎない、上品な印象。
7,8年前迄、スクールにいた関係上、非常識な位ブルゴーニュばかり飲んでいた頃、ムルソーと言うと、果実やお花の香り云々と言うより、「何か、このヒネタ感じがね、ムルソーなんだよね」と言葉には表せないけれど、ムルソー印が押されていた様な作りが多かったです。
ムルソーっぽくない。
マコンとははっきり違う、デュジャックの作る、ブルゴーニュ・ブランと若干近い。
アペラシオンの正解を見ているから、ムルソーと思うのか、美味しいがテロワールを感じさせるかと言うと、判断は難しい。
ただ、一つ言えるのは、アペラシオン(村名)を当てよ、と言われたら・・・・消去法でムルソーと答えるんだろうな。
全体的にこじんまり纏まっていて、バランスが良いワイン。
但し、ブルゴーニュのアペラシオンに拘らなければ、もっと安価な価格で美味しいワインはある。
確かに、ブルゴーニュはブルゴーニュの良さがあるけれど、良い作り手は少ない。しかも、
1万円以下で美味しいワインを探そうとすると、殆ど皆無である。
さて、今回このワインを選んだのは、先日お菓子を作った為の、サワークリームと生クリームが残ってしまった為。
クリーム系の料理に合わせるなら、ブルゴーニュの白ワインはバッリチ。
手持ちのワインの中で、一番都合が良かったからです。
それに、ACムルソーと言う格付けが畑名クラスで、この作り手さんのワインは初めてなので、申し訳ないけれど、それ程、信用してなかったし・・・。
この日の料理は、残った生クリームでキッシュを作り、サワークリームは鮭をソテーし、玉ねぎとキノコをソテーし、ディルとサワークリームを加えたものを、ソースに。
ブルゴーニュを買う時、どこそこで修行をしたとか、元どこそこのコンサルタントと言う謳い文句が多いですが、私はその様な謳い文句は信用しません。
ブルゴーニュで良い土地を得るのは難しい為、凡庸な土地しか持たない作り手は、誰に師したのか、どの様な経歴か、ビオで作っていますetcが売りとなるのは分かりますが、作りが丁寧でも、心を奪われる程のワインが作れるかと言えばそうとも言えず、グラン・クリュやプルミエ・クリュを持たないと、評価されないワインに甘んじるしかないのかと言えばNoです。
しかし、グラン・クリュに値しないワインも多い中、凡庸な畑から、心とときめく様なワインを作る事は並大抵の事ではないと思う。
そこは、重々承知しているのですが、心躍る様なワインに巡り合えない。
ブルゴーニュでトレジャーハントは難しい。
今回のワイン評は、ブルゴーニュ好き以外の人には分かりづらい感想となりましたが、これがブルゴーニュの現実。
少しでも多くの人にブルゴーニュを飲んで欲しいとか、新進の作り手が畑を買えないのか、コトー・ブルギニヨンと言う新しいアペラシオンも作られたが、申し訳ないが、これらのワインを飲む度に悲しくなる。
かと言って、ルーミエやボギュエ、デュガやルソーといった王道は、質の良いレストランのシェフの料理でないと釣り合わない。
ブルゴーニュは投機の対象になる事と、需要と供給のバランスで毎年の様に根が上がり、既に週末に楽しむには贅沢過ぎるワインになって久しい。
テロワールを映し出す、真っ当な作り手のワインを求めると、他の国のワインも有る程度のpayは仕方がないけれど、それでも、7,8年前にブルゴーニュを卒業して、良かった様に思う。