そもそも運動が苦手な私に、初めから運動部の活動はきつい。


わかっていた事だけに、断れずに入部した私も悪いが…この仕打ちは理不尽である。


また、二年の先輩が言っていたが、三女は自分が揉め事に巻き込まれるのが嫌で、私に加担しなかったのだと言ったという。


それは本音だろうが、コイツは家でも同じ。


長女が暴れる度、自分に矛先が向かないよう、何時も人をダシにして逃げる。


そう、三女にとったら日常で、妹を庇う時は自分にメリットがある場合のみ。


だから習慣に従ったまでのこと。


こうして私の中学最初の夏休みは暇を持て余すことになった。



昨年の夏は入院していて潰れた。


今年の夏は、高校生の長女と次女はアルバイト、三女は部活で忙しい。


だけど、家に居ても食べる物は何もない。


仕方ないのでボダ子の勤める旅館へ向かう。


長女は、家事は予定通り各自割り当てられた通り行うこと。


食事当番は朝食と夕飯の準備、昼食は各自で確保すること。


こんなムチャで一方的な命令で、私の夏休みの昼食を抜きにされるのだ。


ボダ子も全く我一切関知せずという態度で、衣食住に関して保障をしてくれないし、ほとんど夏休みになると帰ってこない。


だから生き延びるためには自力で確保するしかないというわけ。


育ちざかりの中高生に、ヘタすりゃ朝昼抜きで一日を過ごさせるとは…虐待以外の何物でもない。


おまけにバイトがきついのか、長女は家事をしない日も多く、食べられる時に食べておかないと一日中水しか口に出来ない事もあるわけで。


あ~ホント、たまらない。


長女は自分だけしっかり三食食べていて、さらにおやつも食べ放題だ。


マウンティングで最下位の私は、食べ物にありつくためにはボダ子のところへ行くしかない。


流石に連日行けばボダ子も長女に改善するよう言うしかなくなる。


だけどこの三年間、まともな食事を作れない長女は、ボダ子の要求にブチ切れ暴れる。


そう、食べていないのは私だけじゃない。


ハードな部活をする三女、バイトに忙しい次女も同じだが、次女はバイト先で食べていた。


それでも朝昼抜きにされたうえ、夕食も粗末ではたまらない。


直接、長女に改善を訴えたら殴られるだけなので、何時も私はボダ子に向かって訴えた。


それを姉たちは我儘だというが、そうでもしなければまともな食事が得られない現実の方が問題だろう。


本当に悪いのは、私達をほったらかしにしているボダ子だ。


それなのに長女と三女は必死でボダ子の味方をする。


そう、こいつ等は感情の部分で物事を見、正しい物事を見て判断できていない。


学校へ行くことも病院へ行くことも食事や身に着ける物も、私達は全部親であるボダ子に要求してよいものだ。


我儘でもなければ、贅沢を言っているわけでもない。


こっちから訴えなければ、衣食住が確保されないなんて、どう考えてもネグレクトだ。


次女は長女と三女に挟まれて、一切反論をしないし出来ない。

だから私が動く。


例え長女に殴られても。




そんなある日、部活が休みの日に遊びに来た同級生。


彼女が持ち込んだモノは、それは忘れかけていた一年前の出来事。



そもそも私はそんな女子部設立の経緯を知らないし、三女から何も聞かされていない。


ただ、先輩たちに頼まれて協力しただけの話で、成り行き上仕方が無く女子部に入部したに過ぎない。


その事が顧問の国本にとって、どう都合が悪かろうが、引き受けた手前、国本は顧問という立場を責任もって果たさなくてはならない。


だけど入学して約二ヶ月が過ぎ、授業以外で顔を見た事も無く、練習に顔を出したことさえ一度もない。


顧問は担任の後藤田だと思っていたぐらいだ。


そして夏休みを目前に、男女両方に練習試合の申し込みがあったという。


これまでは全国レベルの男子部だけが公式戦にも練習試合にも参加してきたが、男女ダブルスの編成が可能になったので、ともに目指そうということになって、練習試合を受けたというのである。


それは部員にとっては願ったり叶ったりの話。


でも、一人女子部顧問だけが苦虫を噛み潰していた。




土曜日の昼下がり、SJ中学の男女卓球部員がやってきた。


ウチの中学は男子卓球部が強剛で、専用のサブ体育館と部室を持っていた。


OBや保護者が中心となって、寄付を集めて建てたものだそうで、使用権限は卓球部にあり、女子は間借りしている状況にある。


他の運動部は部室棟にそれぞれの部室があるが、女子卓球部に部室は割り当てられていなかった。


なので練習試合のこの日、サブ体育館内にある二つの部室(一つは倉庫として使用)を清掃し、SJ中学の部員へ控室として使ってもらった。


そうして準備が整い、練習試合開始時間が迫る中、顧問の国本が一向に現れない。


男女ともに緊張が走り、練習試合が中止になりかけたその時、五分遅れで国本が悠々と悪びれもせずサブ体育館へ現れた。


こちらが招く側なので、こんな風に遅れてきたら選手は勿論、先方を含む男女すべてのコーチ及び顧問まで調子が狂う。


当然、男女とも部長と後藤田が先方に謝罪し、事なきを得て15分遅れで試合を始めることになった。


順調にシングルが四人、ダブルスが二組の試合が終わる。


少し時間が余り、先方の女子一年も四人居て、先方の申し出で一年生にも試合をという話になり、其々がコートに立って試合を始めた。


だけど、国本が突然私を下がらせ、三女を代わりに立たせると言い出した。


おまけにあs部体育館から出て行けと怒鳴り出し、私を指さして「お前は部外者だ」と言って聞かない。


当然、その光景を見ていた男子も事情を知っているので、我慢ならず国本に食って掛かって行った。


それでも後藤田我一切関知せずという態度で、男子部員に試合へ戻るよう指示する。


何とも薄情である。


勿論、三女もこういう時は他人になるので、私は孤軍奮闘しなくてはならない。


ただ、私は国本が顧問であった事も知らず、初めて顔を見て…いきなり出て行けと追い出されたら、わかるよう説明が欲しい。


説明も無く逆恨みされて、部外者呼ばわりでは納得がいかない。


それなのに大人たちは、「自分のことは自分で処理しろ」という。


今日という日は練習試合で、先方にこれ以上迷惑はかけられない。


そう判断して一旦下がる事にした。


私は自分の荷物を持って、体育館裏の土手に腰を下ろし、ボケーッとグラウンドを眺めていた。


あんな恥さらしな真似をするなんて、そんな悪い事を国本にした覚えはない。


授業中に注意されたこともなきゃ、成績が悪い不良でもない。


では、何が原因でキレるんだ!???


そんなあてどもない事を考え、自分の身の振り方を決めかねていた。


そこへ練習試合を終えた先輩たちが探しに来て、三女を挟んで何かを言い合っている。


何か隠している事があるようで、その訳を訪ねても答えてくれない。


三女は自分がその説明を任されるのは嫌だと言い、三年女子が自分らのせいだと言い合っている。


ただ、わかる事は私が退部すれば丸く収まるってことだが、非の無い私が頼まれて入部したのに…何故?という疑問だけが残る。


それから一ヶ月、サブ体育館へ入れず、練習にも参加できず…悩みつつ期末試験がやってきた。


やっぱり私は可もなく不可もない成績で、国語科の国本も特に授業に関しては普通だ。


私は理由を尋ねて話し合おうとしたが、一切答えようとしないし、関係のない英語科の稲葉が何故か口を挟んでくるので、職員室ではややこしくなるだけだった。

すでに職員室で話題になっていたようであるが、クラス担任で男子部顧問の後藤田は「自分で処理しろ」と言うばかり。


だんだん面倒になってきた頃、水面下で別の問題が起きていた。


そう、三年の男女部長や三女を除く二年女子部員は、国本説得に奔走するが…事態はさらに深刻化する。


男子部がボイコットを始めた。


夏の全国大会を目前に、期末試験が終われば、男女ともに練習はハードになる。


この時期のボイコットは己の首を絞める行為だ。


追いつめられた私は退部届を出す。


三女は問い詰められるが…自分は無関係だと言い、退部届は私の意思と言って皆を納得させ、男子部の練習を再開させた。


そしてようやく本当の事を知る事になる。


国本は部の顧問を拒否していた。


それは、部の顧問は授業に関係なく、全くのボランティアで割に合わないため。


授業の準備やら自分の余暇を犠牲にしてまでやりたくはない。


だけど、名義貸しだけという約束で、三年女子と話し合いの結果、顧問を引き受けたという。


それが私が一年女子を引き攣れて入部。


余計な事をしてくれたと逆恨みして、私へ嫌がらせを繰り返したというわけ。


まったく、ガキの嫌がらせのレベルだ。


教員と言ってもこの程度。


でも、本当の敵は他にいた。


この後、次々と私を襲う試練。


大人は信用できない。


それを嫌というほど思い知る。


こうして私の一年目は過ぎていく。


中学生になった私に、父は入学祝だと言って三万円をくれた。


というのも、三女が進学するとき、長女が中学を卒業するので、制服も鞄も持ち物の多くがそのまま使えるので、お下がりをそのまま使った。


そして私の時には次女が卒業し、そのままお下がりを使うことになっていた。


サイズが小さくて使えない場合を除き、大きくてもそのまま問題なく使えるので、その事に不満はなかったが、押しつけがましく言われるのが我慢ならなかった。


小学校入学時もそうで、私が入学した時は、姉妹全員が揃って通うことになる。


長女と違い、私はほぼ全部お下がり。


しかし、長女の余所行きは、私に降りてくるころには流行遅れで古着になっている。


つまり普段着となるわけなんだが、大事に着るも何もない。


暴れん坊の三女が派手に破くし、彼方此方痛んでもくるし、ほぼワンシーズン着たらお役御免になる。


別に私の管理が悪いわけでもないし、物持ちが悪いわけでもない。


けれど、長女に言わせればムカつくんだそうだ。


そんなわけで、本当は私に譲りたくない本音が見え隠れする。


それを父親に言ったところ、学生鞄を買うようにと入学祝を貰った。


だが、それに怒り狂ったのは長女だけでなかった。


しかも何故かボダ子まで対抗心を燃やし、入学式三日前になって制服を新調すると言い出し、無理やり学校指定の洋品店へ連れて行かれる。


この行為がさらに長女の嫉妬心を煽り、三女をひねくれさせてしまう。


まったく、どいつもこいつも素直に言えばいい物を…。


ボダ子は言わなきゃわからないし、プライドを刺激しないと自ら動こうとしないんだよ。


計算でやったわけじゃないが、いつものパターンでこうなった。


面倒な姉妹の嫉妬と妬みを受けて、私は中学生になる。




入学式の日、来ないと言っていたボダ子が入学式にやってきた。


それさえ姉たちには嫉妬になるらしい。


参観日さえ後回しになる末っ子は、来て欲しいと言えば我儘だと言われる。


なので何時しかどうでもよくなっていた。


だから、入学式に来ても来なくても今更で、特に気にせず友達と誘い合って中学へ向かう。


この時、三女は「学校ですれ違っても絶対話しかけるな」と、私に向かって言っていたくせに…。


入学して三日目、オリエンテーションも終わり、全員どこかしらの部活に入らなければならない。


私は、幼いころから吹奏楽部に入りたかったので、とりあえず見学に行くことにした。


しかし、あまりの入部希望者の人数にドン引きしていたら…部のOBである電気屋の親父が、今日も後輩指導にやってきて、イキナリの恫喝に一気に希望者が引いて行った。


流石にあんなふうに怒鳴られて、日々の練習に励めと言われても、モチベーションを維持できそうにない。


私は穏やかにのんびりマイペースにやりたいタイプだ。


ガツガツがっつくタイプではないので苦手。


そんな風に思い悩んでいたら、三女の同級生が私の教室にやってきた。


彼女たちの用件とは、女子部員を募集していて、協力してほしいとのこと。


でも、三女に関わるとろくなことが無い。


やんわりと断りを入れたが、中々諦めようとせず、日参されてしまった。


三女の部活メンバーである彼女等に手を焼き、三女に「いい加減にして」と訴えたが、「嫌ならお前がハッキリと断ればいいだけの話」と言い、聴く耳持たずに平行線で終わる。


仕方なく、彼女等の頼みを聞いて、「声をかけてみるだけ」と言い、部員が集まらなくても恨まないでほしいとことわった。


各クラスの女子に声をかけ、三人の女子部人が集まった。


これで女子卓球部の廃部は免れるという。


男女それぞれの部長が私のクラスまで訪ねてきて礼を言われた。


三年にとったら最後の夏で、初めて念願の男女ダブルスで公式戦に参加できるという。


嗚呼、私は思いがけず、みんなの役に立ったんだ…とホッとした。


けれど、運動が苦手な私は彼等について行けるはずもないので、最初は入部を断っていたが、声をかけた以上、部に入るように説得されてしまう。


練習について行けなくてもいいし、自分のできる範囲で構わないからという条件付きで入る事になる。


私は部の功労者である以上、三女は面と向かって反対できない。


マネージャーは認めないという顧問の方針で、私は正規部員として入部した。


でも、本当のトラブルは、この後私を襲うことになる。


それは、女子部の三円と顧問に問題があったのだった。


そんな事とは知らずに部活がスタートする。




入部してすぐに基礎練習が始まった。


校庭を十周走るメニューなんだが、私は半分走ればいいところで、とてもじゃないが全メニューをこなせない。


そんな私でも面倒がらずに先輩たちは励ましてくれた。


一方で足手まといだという三女は、一切私に関しては他人行儀で、ラケットに関しても同じ物を持つことを嫌い、私も三女の持つペンタイプはあまり好きになれずシェイクハンドにした。

シェイクハンドは、三女と同級生の正木先輩が使用していて、私は彼女の下について日々練習に励むようになる。


また、私はサウスポーであったので、男子部の三年の先輩も練習に付き合ってくれ、ワクワクドキドキの中学生活を送った。


まあ、それくらい男女ともに一年生の入部は大変喜ばれたのだけど…。

中学生最初の中間テスト。


五教科のみのテストで、可もなく不可もない成績。


一見すると順調のように思えた中学生活も、この後、隣町のSJ中学校の練習試合の申し込みがきっかけで、とんでもない事件が起き、地獄へと変化する。


何も知らない、無知というのは、時として悲劇を生む。


私のクラスの担任は、実は保健体育の教員で、男子卓球部の顧問だった。


でも、何故か女子部の顧問を拒否し、困り果てた三年女子が一年の頃、国語科の国本女史に顧問を依頼する。


その頃の女子部は同好会。


つまり公式戦への出場は個人参加。


団体への登録はシングルスが四人、ダブルスが一組の計六名が条件。


三年女子が三名で、二年が四名、一年女子も同じく最低二人以上必要となるため、私に三人に声をかけさせたというわけだ。


夏の全国大会が終われば三年は引退するので、一年生は三人以上の入部が必要だった。


そこで顧問が必要になって、名前だけ借りていたという経緯があるという。


だけど、そんな事情があったとして、一年生の私に何の罪科があるというのか。


そう言う込み入った事情は、現三年生が国本と昇華すべき問題だろう。


だが、国本の矛先は、何も知らない私へと向けられた。


それはある日突然、何の前触れも無く始まった。

小学校を卒業した私は、春休み中に父に会いに行くことにした。


ボダ子は、「卒業のあいさつに行ってきなさい」と言い、猛反対する長女を無視して送り出す。


この行為が、何故か長女を刺激するようで、私ばかり甘やかすというのだ。


いやいや、誰も会いに行くとか言わないでしょうが。


ちゃんと自分の気持ちを口にしないで、ボダ子が気付くはずがないだろう。


長女だからと言って、家事が出来ないのであれば、食費の管理なんかしなければいい。


レシピがわからないなら、ボダ子に頼めばいいが…ネグレクトの為、一切協力はない。


それなら簡単なものからちょっとずつ覚えればよい物を…。


初めから投げ出して、面倒なことは全部妹に押し付ける。


そして「自分に出来ない事が、他人が出来ると思うな」と私に向かって言うのである。


いや…普通、それは逆の意味で使うんだよ。


他人が出来ることは、工夫と努力次第で自分もできるだよ。


とかって話すと、何故か何時も一言余計なのか殴られる。


ボダ子曰く、私は幼稚園の頃からよく本を読んだが、長女はほとんど読まないので、物を知らないのだという。


私の場合、喘息の発作で寝ていることが多く、布団の上で出来ることはテレビを見るか、本を読む事ぐらいだった。


だから、小学生になると図書室の本を良く借りた。


私は本を読み始めると周囲の音が耳に入らなくなる。


そのせいでよく長女に殴られた。


目障りだと言って。


泣きながらボダ子に訴えると、さすがにこの時は叱ってくれたよ。




そんな事が繰り返されて、私は父親と対面する。


ボダ子の言い分、父の言い分、其々の話を聞いて判断をする。


どちらの言い分が正しいかではなく、話の筋が通っているかどうかが大事だ。


ボダ子の言い分は、この父に騙され、DVによって支配され、自由が一つもなかったというモノだ。

それがどこまで本当なのか、父の言い分を聞くまではわからないと思っている。


その父親の言い分は違った。


まず、キチンと実家に挨拶に行ったという。


但し、まだ離婚が成立していなかったため、伯父に追い返されたという話だった。


けれど、必ずけじめをつけてボダ子を幸せにすると誓ったらしい。


この辺りの話は、実は高校生の時に、私は伯父から同じ内容を聞かされるので、本心と事実を語っているのである。

その結果、嫁が子どもを置き去りにして家出。


ボダ子が一年近く同居して面倒を見る展開となっているが、ボダ子はこの辺りの事情について話したがらずに誤魔化す。


で、ボダ子は生まれたばかりの長女を連れて、行方をくらまし、一年後に親父に発見され、次女誕生で連れ戻されて行動を共にしたという流れになる。

親父はけじめとして、先方の言う金額の慰謝料を支払い、キチンと離婚を成立させた。

それが私が五歳になる年の事であり、その時になってボダ子が入籍を拒んだため、私達は婚外子扱いになった。


つまり親父が騙したわけでもないし、ボダ子の意思で我々は苦労を背負いこんでいることになる。


会社が倒産したのだって、父のせいじゃなし、借金も10年ですべて返済している。


その後、無理がたたって身体を壊した。


それが別れの原因。


なら、せっかく実家へ戻ったのに、何故どうして援助をしてもらわなかった!?


責めて、子どもたちだけでも…とか、方法はいくらでもあったはず。


そこがボダ子が境界型と自己愛型の複合タイプ所以なのかもしれない。




さて、そんな話を父から聞かされ、ボダ子から「中学卒業したら、働いて養え」と言われていると言い、自分自身は高校進学したい旨を告げた。


すると、父は「中途半端な事をせず、大学まで行け」と言い、そのための支援をするという。


私はその話を聞き、ボダ子ではなく父と暮らす決心をする。


そうすれば、三女も進学しても問題ないし、家を離れても大丈夫と思っていた。


だが、そんな私の計画を無視して暴走する三女。


三女は、中学を卒業したら働くと言い出した。


その訳は…。

ボダ子は情夫の口車に乗せられて、次女を生贄に差し出していた。


そう、長女ではなく次女を…。


男は何かと引き換えに、ボダ子に娘を差し出すように言った。


ボダ子は下二人は小学生で、いまだ生理は来ていない子どもだったので、大人の男性を受け入れるのは無理と判断し、すでに中学生になっていた次女を差し出したというわけ。


ボダ子にとって長女は大事な娘だ。


自分のために利用するなら他の娘の中から選ぶが、生憎下は小学生とくれば差し出されても男も困るというモノ。


というわけで白羽の矢が当たった次女。


丁度、文句も言わずに大人しく従う娘だったので都合も良い。


こうして最初の犠牲者は次女だったのである。


だから頻繁に妹の入院に付き添っていた。


そうすれば夏休みでも呼び出しを受けずに済むと考えた。


そんな事情があるとは思わなかったが、私は何も言えずに怯える次女の眼差しを見て、ボダ子と男に対して何かあると悟る。


この事件以降、私はボダ子を見限る決意をする。


でも、その前に父に会う必要がある。


イキナリ、何の説明も無く家を連れ出されたので、意味も分からずに今の暮らしを受け入れている。


父がいた時の秩序は無くなり、ボダ子と長女に支配されて虐待を受けている現実。


誰も承諾した覚えはなくて、今の理不尽に合う生活の説明が欲しい。


長女はわかったようなことを言うが、実は本当のところ何も理解していない。


何時も一方的にボダ子の言い分を聞いているだけで、それが事実かどうかは全く考えてもいない。


長女は、「ボダ子が言っているから」事実だろうという。


何処が事実なんだよむかっ


そう思っても、口応えをすれば殴られるだけだった。


ボダ子や長女にとって、真実とは自分の都合が良いかどうかで、全く事実とは異なるのである。


だから状況次第で二転三転するもの。


それがボダ子と長女にとっての真実。


つまりいくら本当のことを言ってみても、ボダ子や長女は話の辻褄が合うことはない。


ストーリーは創られるのであって、創られたストーリーに沿って物語は進行する。


ボダ子も長女も何時も事実と異なる話をする。


そうなると嘘をついているのは私たちの方にされてしまうのだ。


逆らえば殴られる。


こうして私達は何時も黙らされていた。




私はボダ子に連れられて、家を出てからずっと父親と文通をしていた。


手紙のやり取りは母子寮では嫌われる行為だが、私にとって父親は慕う存在だった。


ボダ子は嘘をつくが、父はそうじゃない。


両親の関係は娘には理解しがたいが、父と娘の関係は良好だった。


それがボダ子と長女には不満だったようである。


不満の理由は自分の思い通りにならないためで、自分の都合の悪い事実を突きつけてくる人間を嫌う。


私は父の良く似ていたので、何時も「お前は親父にそっくりだ」と言われる。


そう、何かにつけて文句を言うたび、「お前は親父に似ている」とボダ子も長女も言うのである。


ボダ子の言う人生の邪魔とは、自分の都合よいストーリーに合わせない事を指していた。


だからボダ子は排除したかったのだ。


父も娘たちもすべて。


無かったことにして、自分の人生を一からやり直したい。


それがボダ子の本心。


職場に居れば、嫌な現実…子どもの存在も忘れていられる。


仕事が終わったら、一人でゆっくりと休みたい。

そのための空間が欲しかった。


そしてボダ子は寮に内緒で社宅の一室を借りた。


そこは自分だけの空間。


誰にも邪魔されない。


そのために名を偽り、いくつかの名前を使い分けていた。


次女を犠牲に、男に求めた何かとは、男が持っている株。


それに投資して分け前をもらう。


手にした資金をプールし、その余剰金で社宅を借りていた。


自分のために娘を利用したのだ。


やがて私は中学生になる。




中学に進学する前、かねてからの計画通りに父に会いに行く。


当然、長女は激怒する。


実父に会いに行くのに、誰の許可がいるというのか。

私は長女を無視して会いに行ったが、その時、次女も一緒に行きたいと言った。


けれど、長女の逆鱗に触れ、直前で諦めてしまう。


私は殴られようが、蹴飛ばされようが、自分の意思は貫く。


何故なら、実父に合う権利は私にあるからだ。


それはボダ子であっても邪魔は出来ない。


わかっていたので堂々と会いに行ったというわけ。


そんな私に対して三女は長女と同じ態度で言う。


ボダ子の味方をする長女と三女。


本当の悪人は誰なのか。


この時私は何となく理解していた。


だから、直接父と会って話をしたいと思っていた。


そして自分の将来のため、ボダ子ではなく父と暮らすことを考えていた。


その旨、父に伝えるため。


けれど、愚かな三女の取った行動が、この私の計画の邪魔になる。


三女は自分の居場所を求めて足掻いて行くのだ。


ボダ子と長女に阻まれて、人生の選択を誤ってしまう。


三女の矛先は私へ向けられていった。