2024年5月頃の朝鮮半島の出来事 | 日記「ウクライナ人の戦い」 Masanori Yamato

日記「ウクライナ人の戦い」 Masanori Yamato

「ウクライナ戦争」を描くことで、プーチンとは何者なのかを書きたい。

 

2024年5月頃の朝鮮半島の出来事(メモ)  2024/5/11 20:00

 

最近は韓国より、北朝鮮関連のニュースの方が多いような気がする。

 

先月(4/11)の韓国総選挙で尹錫悦政権与党の「国民の力」が惨敗したことが話題となった。「国民の力」108議席、野党「共に民主党」175。その後は、パリ五輪に向けて、サッカーをはじめとして、球技チームがことごとく敗退したから、五輪参加資格を得られなかった。だから、韓国選手団の構成は非常に寂しいものとなるだろうというニュースをいくつか見た。

 

このため、尹錫悦大統領の残り3年の任期を危ぶむ声が出てくるのである。200人以上が賛成すれば朴槿恵の時のように大統領弾劾決議が可決される。尹錫悦がなぜ総選挙で敗けたのか、そして、どうすれば残り3年を無事に渡り切れるか。この点について朴斗鎮の意見は聞く価値があると思った。朴斗鎮は次のように解説する。

 

尹錫悦は朴槿恵大統領を弾劾し、これを機に文在寅政権下で出世し、検事総長まで上り詰めた。そして、文在寅政権の後期に反旗を翻して大統領選に出馬した。総選挙の得票率は「国民の力」と「共に民主党」の差はたった5%しかなかったが、小選挙区制という制度上の仕組みも相まって大差がついた。尹錫悦に保守政治を期待する韓国国民は少なくないと思う。アメリカと中国のはざまで軍事は米国寄り、経済は中国頼みという長年の韓国政治を正してもらいたいと願う国民は多いと思う。ところが、尹錫悦政権の2年間の政治は中途半端だった。総理をはじめ閣内の人事を見ればそれがわかる。自分自身が政治経験がないということもあるのだろうが、民主党寄りの人物を重用してきた。これが、国民の期待する保守政治を実現できなかった理由である。だから、負けた。

 

残る3年をどう乗り切るか。それは尹錫悦が開き直るしかない。韓国政治は李承晩、朴正煕、盧泰愚までの保守政治が確立するかに見えたが、金泳三、金大中あたりからおかしくなった。朴正煕の娘である朴槿恵もどっちつかずだった。尹錫悦の生き残る道は一つしかない。「大統領弾劾のための特別検察官を国会が指名するならしてみろ」と開き直って、米国、日本との軍事・経済の外交を展開することを宣言することである。大統領の権限を駆使して国会と対決することである。その気概を国民にアピールすることである。

 

朴斗鎮はそう言い切るのである。その朴斗鎮は北朝鮮についてもおもしろい分析をしていた。

金正恩政権は危うい状態になりつつある。北朝鮮はこれまで3本の柱で成り立ってきた。「①洗脳教育 ②恐怖政治 ③配給」である。

この③の配給システムがほぼ機能していない。人民は飢えにあえいでいる。300万人が餓死したという報告が韓国情報当局から出ている。国民に米を食わせられなくて何が「首領様」だというのか。北朝鮮の必要電力は600万㎾という。今発電されている電力は200万㎾に過ぎない。その内約半分は軍が使用している。これは2000年当時の発電力にも及ばない。これで、どうして産業を育成できようか。

 

金王朝は金日成、金正日と思想面で強固に武装していた。「頭領」として、「首領様」として神聖化されてきた。特別の記念日には人民に贈り物をしてきた。今は、コメの配給させ途絶えさせてしまった。確かにいろんなところに視察に行ってる。行く先々でよくしゃべっている。指示しているのだろうが、その指示が問題である。軍の経験もなければ、経済について勉強している訳でもないのに思い付きであれこれ言うことでおそらく現場を混乱させていることと思う。最近では、在日の朝鮮総連幹部たちも細かい指示書に困惑しているということを自分は聞いている。

 

「親しみのあるお父様」という曲が流されている。金正恩は自ら「庶民化首領様」を演出しようとしているのかもしれないが、それは金日成、金正日と続いてきた金王朝の神格化を棄てようとしていることではないのか。それは、軍をはじめとして側近たちの金王朝に対する忠誠心を動揺させているのではないのか。

 

金正恩は「首領様」に就任して丸12年を迎えたが、金正日には身近に支えてくれる先代からの側近が身内しかいない。金正日時代から続く後見役の側近たちをことごとく粛清してきたから。彼は今では、金日成の命日である「太陽節」に「太陽宮殿」にも参拝しなくなった。これは金正恩が金日成、金正日の思想から離れようとしていることと見ることができる。それは、新しい指導者像を造ろうとしていることの表れであると見ることができる。海外はこの変化に期待するところもあるだろうが、国内において、特に軍部がこれをどう見ているか、わたしはなにか起こりそうな気がしている。

 

朴斗鎮はそう見ているのである。

 

きのう(5/10)、訪米していた横田めぐみさんの弟・卓也さんが代表を務める「拉致被害者を救う会」が報告のため官邸に赴いた。岸田はこの席で、バイデン大統領との会談で重要な議題の一つが「拉致問題解決」であったと述べたことを新聞メディアが明らかにしている。

 

一向に道筋が見えない拉致問題であるが、岸田・バイデン会談で議題となり、「拉致被害者の会」の連休中の訪米で、米国政府高官らと会談している。クリテンブリンク国務次官補や国家安全保障会議のラップフーパー上級部長、アーミテージ元国務副長官のほか、元駐日米大使のハガティ上院議員らと面会したと報じられている。

 

今のところ、拉致問題で金正恩に動きがあってるという情報はない。この件は、今年に入って、金正恩の能登半島地震に対するお見舞いの電報に始まった。それを打ち消すかのような内容の金与正が「朝鮮中央通信」で「拉致問題は解決済み」と発表した。その後の3月、崔善姫(チェ・ソンヒ)外相は「拉致問題で日本政府と接触しない」と声明を出した。この声明は注視する必要がある。崔善姫は第一外務次官時代から対米外交の専門家であり、2022年から外相に就任している。

 

その後の今年に入っての経緯は、4月の岸田・バイデン会談で議題として上がり、「拉致被害者を救う会」の連休中の訪米である。

 

この一連の動きからわたしは「拉致問題」は水面下で動いていると見ている。金与正の談話と崔善妃の声明は、拉致問題を日朝間の問題としての解決だけで終わらせないという意思表示だと推測しているのである。それは、アメリカ主導の北朝鮮に対する経済制裁の解除も含めて条件提示をしていることであろうと思う。だから、岸田がバイデンと会談し、「拉致被害者を救う会」がアメリカ政府を訪問したのあろう。この日米の動きを北朝鮮は注視していたと思う。

 

拉致問題解決の条件が金銭補償や食糧支援に留まらず、西側諸国の北朝鮮に対する経済制裁の解除まで拡大されなければ日本政府とは折衝しないというているのである。その理解を日米で共有することが4月の岸田・バイデン会談で最大の議題であったろうと想像しているのである。

 

金正恩と金与正、崔善姫は日本の経済的支援や食糧援助などを期待する以上のものを勝ち取ろうとしている。それは、「拉致問題解決」をカードとして欧米の経済制裁を解かせ、同時に北朝鮮を国家として認めさせようとしている戦略まで考えているのであろうと想像する。

 

岸田の拉致問題解決に前のめりになっていることを千載一遇の機会と捉え、絶好のきっかけを作ってくれたという受け止め方をしていると思う。金正恩と金与正、そして北朝鮮政府は体質的に内部から変わろうとしているのであろう。そう考えると、「親しみのあるお父様」という愉快なプロパガンダ企画も理解できるような気がする。金日成、金正日偶像心酔を金正恩は敢えて破壊しようとしているのかもしれない。