崩壊する「中国の夢」   2024/3/20  1:30 | 日記「ウクライナ人の戦い」 Masanori Yamato

日記「ウクライナ人の戦い」 Masanori Yamato

「ウクライナ戦争」を描くことで、プーチンとは何者なのかを書きたい。

崩壊する「中国の夢」   2024/3/20  1:30

 

その貪欲さが繁栄を築き、その強欲欲さが中国を崩壊させる。

 

上海や深圳がいまその輝きを失いつつある。成長と繁栄の夢がほころびつつある。深圳市の公的債務が82兆円であるという報道を見た。日本の一般会計の予算が112兆円である。

 

上海の浦東区と深圳は鄧小平時代に経済特区として指定され、巨額のインフラ投資がつぎ込まれ外資を誘致してきた。特に浦東と深圳は金融と物流における国際都市として機能し、不動産開発とIT産業の集積は外国資本を長年誘致してきた。それは、40年にわたって中国経済のをけん引してきたばかりか、都市開発のお手本を内陸部の地方都市に見せつけてきた。

 

「万科」という国有企業が深圳にある。中国第2のデベロッパーである。その「万科」を支えるためにいま中共政府が乗り出している。債務の借り換え能力が危ぶまれているのである。満期を迎える社債の利払いの返済能力が疑われている。そのため、中国工商銀行の主導で中国銀行、中国交通銀行、中国農業銀行等が総出で800億元(1兆6000億円)をかき集めている状況である。

 

今月(3月)に入って、その「万科」の格付けをムーディーズがジャンク級に格下げしたとブルームバーグが伝えているということを今日知った。3/15には、S&Pグローバルもnegative watchに変更する方向で検討に入ったという。このことは、同じデベロッパーである「恒大集団」や「碧桂園」のデフォルトとは意味合いが違う。もし中央政府が「万科」の支援に失敗したら、中国共産党の信用格付けが問われるということになるから。(上記2項は「Youtube福丸くんリターンズ」から引用)

 

中国経済危機は不動産開発の失敗とよくいわれる。この不動産開発の失敗が地方政府の膨大な債務となって表面化しつつある。その額は1800兆円に上るという。成長と繁栄の約束としての不動産投資が借金の上に成り立っていたことが明るみになった。なぜ地方政府はこれほど膨大な借金をして都市開発を進めてきたのか。そして、だれから借りてきたのか。

 

それは、中国人の金と地位に対する貪欲さの顕れであるといっていい。

 

中国には「融資平台」という地方政府が設立した金融機関がある。全国に1万以上あるという。「融資平台」とは、俗に云われる「シャドウ・バンク」が集めた資金を運用する機関である。もっぱら地方政府の都市開発資金を融通してきた。「シャドウ・バンク」とは、信託会社や保険会社、資産管理会社などから成り、高利回りをうたって投資家や人民から資金を集めてきた。オンラインで投資を促すという。

 

地方政府の党書記や高官たちは中央政府に都市の成長の証として成果を報告してきた。「融資平台」から資金を調達し、長年都市開発を主導してきた。道路や橋梁、鉄道などのインフラ整備とともに、都市開発と住宅建設を促進してきた。GDPに貢献していることを中央政府に認めてもらうがために。

 

中央政府の高官たちや、「全国人民代表会議」の3000人に及ぶ議員たちも、「全国政治協商会議」の2000人のメンバーも、みんなこうして政治的キャリアを築き、地位を掴み、資産をなしてきたのである。

 

習近平一人の罪ではない。毛沢東がマルクス・レーニン主義を掲げて中国に共産主義国家を建設した時を出発点として、鄧小平の「改革開放」路線から、中国人の貪欲さが人生最大の価値観を形成してきたのであろう。

 

そう考えると、習近平が鄧小平を否定し「毛沢東に帰ろう」という思いも理解できるような気がする。企業家や高官たちの腐敗と蓄財を権力で奪おうとする粛清に臨むのも解らんでもない。2022年10月の第20回党大会で習近平を党の核心として採択し、習近平の思想を党の思想と確信した大会決議もなるほどと思う。「共同富裕」という思想も頷ける。

 

ただ、これほどに成長した中国経済である。その生産力と金融資本の影響力はもはや国内だけに留まらない。世界が中国の行く末を注視している。北京政府の政治手腕を見守っている。

「中国の夢」はいま地方政府の破綻から崩壊し始めている。終わりのない成長と繁栄を約束した中国経済の夢はほころび始めている。