習近平は毛沢東のどこに帰着しようというのか | 日記「ウクライナ人の戦い」 Masanori Yamato

日記「ウクライナ人の戦い」 Masanori Yamato

「ウクライナ戦争」を描くことで、プーチンとは何者なのかを書きたい。

 

習近平は毛沢東のどこに帰着しようというのか  2024/1/14/ 20:00

 

 

毛沢東語録がまた出版されているという。

 

12/26には、習近平は政治局常務委員6人を引き連れて毛沢東廟を訪れた。冷凍保存されている毛の遺体に頭を垂れて参拝した。

 

中国は共産党一党独裁の支配体制である。共産主義体制というにはあまりに資本主義的であり、その経済は資本と金融システムに依拠している。毛沢東亡き後、鄧小平の「改革開放路線」により、低賃金を武器として世界の工場として膨大な外資を呼び込み、公共投資で高速鉄道を全国に張り巡らし、長い間の住宅投資を促進させて、上海や深圳、天津、広州など、主要都市の発展は世界が目を見張るほどに様変わりした。

 

その中国から外資が流出している。上海一番の繁華街である豫園周辺地区でも店舗をたたんでしまった店が出て来ている。深圳や広州のマンション価格が日に日に下落している。いま中国経済の目玉は、増大する若者の失業率の増加と外資の引き上げである。そんな中にあってイーロン・マスクのテスラを初めとして、中国資本によるいくつかのEVメーカーの奮闘が目を引く。国内販売と輸出で大きく貢献している。今、世界のEV生産量の半分は中国が占めている。国内需要と輸出で中国経済を支えている。

 

ただ、そのEV車も2023年後半からそのリチウムバッテリーの性能の未熟さから国内需要にも陰りが見え始めた。多くのEVメーカーが倒産しており、ここにきて中共政府の補助金の打ち切り宣言などにより、各社安売りに走り、利益が大幅に減っている。株価はどんどん下がっている。EUは中国製EVの輸出攻勢に2024年から関税措置で防御しようとしている。

 

上海の株式総合指数は昨年の10月頃は3200Pを付けていたが、今では2880pである。

 

習近平は毛沢東のどこに帰着しようというのだろう。まずは何にもまして雇用を回復してこそではないのか。李克強は生前「黄河と揚子江の水は逆流しない」と述べた。習近平が鄧小平の改革開放路線を蔑ろにしつつあることを暗に示唆したのである。安倍さんの回顧録にも似た感想がある。それは、安倍さんが総理となった2006年頃のことであるが、中国とどう向き合っていくべきか悩んだという。そして、「戦略的互恵関係」ということばを以って胡錦涛主席と会うことにした。

「中国の一党独裁体制の正当性は何か?それは、中国共産党のおかげで、国民生活がよくなると思わせることです。中国の国民を守ってきたのは中国共産党であるという正当性であるはずです」

と『安倍晋三回顧録』の中で語っている(P81)。

 

こう引用すると、安倍さんが中国共産党を賛美していたように見る向きもあるかも知れない。わたしの引用の仕方が悪いのだが、当時、安倍さんは、米国との関係は気を使う必要はないと考えていた。問題は中国とどう付き合っていくかである。当時は靖國問題と尖閣問題があった。加えて、NATO陣営との関係で米国が中国封じ込めに敏感になりつつある時期であった。中国はまだ成長の上り坂にあった。そんな中で日本も対中姿勢を示さなければならないのであるが、いたずらに中国と対立するのを避けながら、どう付き合っていくかこれが難しかった。中国(中共政府)に理解を示したうえで付き合っていく日本の対中姿勢をどう表現するか、これがなかなか見えなかった。そこで「戦略的互恵」というキーワードを編み出すわけであるが、その際の「中国と中共」の把握の仕方である。胡錦涛と向き合うに際して、安倍さんの「中共政府」の把握の仕方の表現である。

 

その時からすでに18年が経とうとしている。

 

政府内の高官たちの腐敗取り締まりの強化や、ロケット軍の上層部の更迭と、陸軍内の軍や師団、連隊の解体や再編成など、最近の習近平は組織内の人事に忙しいようだ。しかし、求められているのは中央政府と地方政府の財政の立て直しではないのか。そのためには中国経済全体の復活が不可欠であるはずだ。

 

習近平は毛沢東を讃えることで、イデオロギーにより自らの権威を高めようとしているのかもしれないが、そのかじ取りの成否は世界の経済が見ており、市場が判断しているということを考えないのであろうか。