PHVとEVの対決、Political Correctness(政治的正義) | 日記「ウクライナ人の戦い」 Masanori Yamato

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「ウクライナ戦争」を描くことで、プーチンとは何者なのかを書きたい。

 

PHVとEVの対決Political Correctness(政治的正義)  2024/1/13

 

 

対決というとどっちが勝ってどっちが負けるかという構図を想像しがちであるが、おそらくは両者は併存して競争を展開していくと思う。特にEV車のバッテリーの改良と進化は世界で競争が展開していくと思う。それは、現状の車載バッテリーの能力がPHV車と比べた時、その機能において、価格において劣っていることが明らかであるからである。

 

ここ数年、米国テスラと中国BYDによるEV車の快進撃の話で世界の自動車業界は盛り上がった。今年の下半期は、そこに中国産EV車輛の輸出攻勢にEUが防御しなければならないと考えていることが注目を集めていた。

 

このEV車開発であるが、そもそもは20年以上トヨタはじめ日本自動車業界が世界を席巻してきたハイブリッド内燃機関車に対抗しようとして、ドイツや米国、中国が目指した新しい研究開発である。内燃機関の性能ではトヨタに太刀打ちできないという認識からEV車という新しい形態に特化しようとしたものである。

 

ドイツでも米国でも中国でも、このEV車の研究開発は2010年ごろから始まっている。本格的に生産が開始されたのはテスラが上海工場を建設した2019年1月頃からである。その前年の6月(2018/6)、中国政府はEV市場への外資の出資制限を撤廃した。EV車生産に限って、いわゆる「外資と中国資本の合弁会社である必要性はない」という措置を打ち出したのである。

 

PHV車とEV車の本格的格闘はたかだかここ3=4年ほどのことである。この数年のあいだに、中国では400社を超えるEVメーカーが誕生し、1-2年で300社以上が倒産していった。いま中国で生き残っているメーカーが何社あるのか知らないが、販売台数で見れば、最大手のBYDと、新興御三家と言われる小鵬汽車(XPeng Motors)、蔚来汽車(NIO)、理想汽車(Li Auto)が大手と言える。

 

テスラをはじめ中国のEVメーカーの株価は2023年の第3四半期までは順調にあげていたが第4四半期辺りから極端に下がり始めた。2024年から中共政府の生産と販売・購入面での補助金が極端に切り詰められていく方針が打ち出されたからである。

 

その補助金打ち切りに備えて、各社はすでに車両価格を数十万円単位で引き下げている。その結果、生産台数と販売台数は伸びてはいるが、利益率が極端に落ち込んでいる。投資家たちはそこにEV車の未来に悲観的観測を持っているのである。

 

中国のEUにおける各年の販売台数シェア目標率というのがある。

2019   0.4

2022   3.7

2025    15.0

 

2023年の統計数値はまだ出ていないが、現在、EUは中国EV車の格好の市場となっている。EUだって中国のEV輸出攻勢を黙って見ているはずがない。2023年末に、フォン・デア・ライエンEU委員会委員長が警鐘を鳴らしている。ドイツやフランスが2024年には、中国EV車に関税の負荷等で応酬するはずである。

 

しかし、考えたらドイツはアホという他ない。中国市場はVWをはじめドイツ車の一番のお得意さんだったのである。しかし世界を見渡すと、もう20年ほど前から、PHVを初めとするトヨタを筆頭に日本自動車が世界をリードし始めていた。トヨタが世界の自動車業界を席巻し始めていた。

 

そんな中でのEV車の形態の発案である。ドイツもアメリカも、中国もEV車の研究開発に没入した。中国の研究開発は2010年ごろから始まったと言われている。思うにこの頃、中共政府は不動産開発に代わる中国産業の切り札としてEV産業に賭ける決意をしたと想像する。

 

そして、このEV自動車産業を後押ししたのが2015年のNYにおける国連サミットの採択結果である。いわゆる「SDGs運動」である。SDGs」の開発目標は17ある。

 

貧困をなくそう 飢餓をゼロに 全ての人に健康と福祉を 質の高い教育をみんなに ジェンダー平等の実現 安全な水とトイレを クリーンなエネルギーを 働き甲斐と経済成長を 産業と技術革新を 不平等をなくす 住み続けられるまちづくり 作る責任と使う責任 気候変動への具体的な対策を 海の豊かさを守ろう 陸の豊かさを守ろう 平和と公正をすべての人に パートナーシップで目標達成

 

EV自動車の推進を後押しした理念項目が、上のである。

 

ここに、トヨタやホンダを筆頭とする日本のハイブリット技術を凌駕しようとしてのEV車輛の製造と販売を目論む各国の政治的野望が合致したのである。アメリカとEUと中国がそうである。アメリカやドイツ、フランスはトヨタやホンダと張り合える技術力を有していたにもかかわらず、日本の自動車産業を潰そうと一気にEV車輛への切り替えを国際基準にしようと目論んだ。これに最速で便乗したのが中国である。

 

EUでは、内燃機関自動車を2030年までに全てEVに切り替えるという当初の国家政策を見直す動きが出ている。ドイツやフランス、スエーデンやノルウェー等が見直しをに着手している。政府支出の補助金が持たないこと。リチウムバッテリーの製造過程におけるCO2の発生量を測定すると、内燃機関製造以上にCO2を出していることが明らかになったこと。加えて、自国自動車メーカーから政策変更要望が強いこと、等が揚げられている。もう一つは中国国内で生産された安いEV車輛がダンピング価格で自国自動車産業を侵食していることを防ごうという意図がある。

 

トヨタを潰そうと、中国と欧米が手を組んだEV車普及政策であったが、そのEUが今や中国に呑み込まれようとしている。アホという他ないが、それでも、ここにきてEV車への一辺倒の政策が本当に正しかったのか、EU諸国で疑義が生じている。Political Correctness(政治的正義)に一気に飛びついたEU諸国の政治判断に内部から疑いが生じている。