昨日、NHKにて「れいわのへいわソング2021」という番組が放送されました。
この番組は、さまざまなアーティストが広島から“平和ソング”を届ける特別番組で、7月15日に上野学園ホールで番組の公開収録が行われました。
せっかくなので、今回歌われた楽曲から、5曲ほど解説してみようと思います。
①Triangle / SMAP
今回は、Sexy Zoneによるカバー。
この曲は、SMAPの38枚目シングルとして2005年11月23日にリリースされました。
2005年は、終戦からちょうど60年。世界では、2001年に起こった同時多発テロをきっかけにテロ撲滅運動なども起こっていましたが、その一方で、イラク戦争には拍車がかかり、日本でも自衛隊を「非戦闘地区」に派遣するなどしてアメリカに参戦する形となりました。
そんな中で制作されたこの曲は、SMAPの中でも珍しい反戦ソング。
都心を少し外れた 小さなこの部屋から
どんなに目を凝らせど 見えないものばかりだ
例えば 遠い空に誰かが祈っていたり
例えば 身を潜めてキミが怯えていたり
すべてに満ち足りた 明日の日を
求め彷徨う 亡者の影
破壊でしか 見出せない
未来の世界を 愛せないよ
「戦争をして人間としての命や生活を破壊することでしか作ることのできない未来の世界は愛することはできない。そんな世の中でいいのだろうか」という問いかけ。
僕の目が 君の手が 僕らの声が
それぞれ異なっているように
自由でこそ 生命だから
人種や性別、話す言葉は違っても、全員同じ平和な世の中で生きる権利をもった、大切な一つ一つの命。
なぜ人間は争わなければならないのか。なぜ人間は平等に平和な世の中で生きていくことができないのか。
改めて考えさせられる1曲です。
②島唄 / THE BOOM
この曲は、説明するまでもないでしょう。
表面上は男女の別れを歌ったラブソングであるが、実際は沖縄戦での悲劇と平和への希望が唄われている、というのは、周知の通りです。
沖縄出身のISSAさんによって、沖縄の方言で歌われました。
③ひこうき雲 / 荒井由美(現・松任谷由美)
今回、ヒロシマ・ピース・オーケストラの一員として、演奏に参加させていただきました。
1973年にリリースされたこの曲は、実は「友人の死」について歌われた楽曲です。
松任谷さんが高校3年生だった頃、近所の団地で飛び降り心中が起こりました。
この出来事は、世間を賑わす事件にもなりましたが、このニュースで高校1年のときに重い病(筋ジストロフィー)で亡くなった小学校の同級生のことを思い出し、そこから着想を得て書かれました。
そして、リリースから40年経った2013年、スタジオジブリ『風立ちぬ』の主題歌となりました。
『風立ちぬ』は、戦争、特に「日本海軍の零式艦上戦闘機」(通称零戦)をテーマにしたアニメ映画。
歌詞に注目すると、その心の内がよく表れています。
空に憧れて
空をかけてく
あの頃の命はひこうき雲
子供の頃から飛行機に憧れていた主人公・堀越二郎は、近眼のためにパイロットへの道は閉ざされていたものの、独創的な設計を行い、その非凡な才能を開花させ、零式艦上戦闘機などの優れた飛行機を次々と生み出した。
この零式艦上戦闘機は、神風特別攻撃隊により、特攻用、つまり体当たり攻撃用の爆撃戦闘機として使われ、多くの命が失われた。
そのことを念頭に置いて歌詞を見てみると、とても重く、深く、切ない歌詞であることがよくわかります。
この曲は、みなさんが思っている以上に重い曲なのです。
④風を待つ / STU48
瀬戸内を拠点とするAKB48の姉妹グループ・STU48。
2019年2月13日にSTU48の2枚目シングルとしてリリースされました。
この曲の歌詞ですが、元々の歌詞には込められていなくても、深読みすると空襲や原爆と重なるところが多々あります。
日差しのようにあの日に戻れればいいのに
瞼(まぶた)閉じても ここに僕しかいないよ
空襲や原爆によって、家族や友人を亡くした方々のことを考えると、この歌詞はものすごく重く感じます。
さらに、この曲はヘ長調です。
同じ調号の関係(平行調)の短調はニ短調(d-moll、D minor)です。ニ短調は「死」を表す調です。
それと対になることから、ヘ長調は「平和」を表します(これが転じて、「牧歌」「のどか」というイメージを与えるようになりました)。
つまり、「平和ソング」としてもちゃんと役目を果たせているのです。
⑤昨日見た夢~平和の誓い~ / Ed McCurdy
この曲は、アメリカのフォークシンガー・Ed McCurdyが1950年に発表した反戦歌で、主に1960年代に活躍したユダヤ系アメリカ人2人によるフォーク・デュオ・Simon & Garfunkelによりカバーされました。
『Last Night I Had The Strangest Dream』が原曲であり、今回は、LUNA SEA、X JAPANのメンバーのSUGIZOさんによって、日本語訳・アレンジしたものが歌われました。
昨年8月15日、SUGIZOさんにより自身の公式YouTubeチャンネルでリリースされています。
今回の「れいわのへいわソング2021」の中では、もっともストレートな反戦歌となりました。
昨日僕は とんでもなく おかしな夢を見たんだ
世界が 戦争終結に全面的に合意したという夢を
夢で見た 巨大な部屋には 男達がいっぱいで
彼らが署名した書類には二度と
戦わないと書いてあった
書類全てに 署名が済むと 100万部コピーされた
彼らは 手を合わせこうべを垂れて感謝の
祈りが捧げられた
そして 通りの人々はぐるぐると
輪になって踊っていた
銃も 剣も 軍服も地面に放り捨てられていた
昨日僕は とんでもなく おかしな夢を見たんだ
世界が 分断終結に全面的に合意したという夢を
発表された1950年は、まさしく世界が真っ二つに分断された年です。
1950年6月25日、朝鮮戦争が勃発し、北朝鮮およびそれを支援して人民志願軍(義勇軍)を派遣した中華人民共和国と武器弾薬その他に軍事顧問、パイロット、医療部隊などを派遣したソ連、そして韓国およびそれを支援して国連軍を編成したアメリカ中心の西側16か国と、大きく分断され、日本も参戦国に算入されていないものの、国連軍(アメリカ側)の要請(事実上の命令)により特別掃海隊などを派遣、死者も出すこととなりました。
戦争や争いに終止符が打たれる日が訪れると信じ、集結を呼びかけるという内容のプロテストソングです。
SUGIZOさんは、毎年必ず原爆ドームを訪れ、想いを馳せているそうです。
こうやって見てみると、みなさんが思っている以上に深い意味が込められた曲であることがわかるかと思います。
曲の作られた背景、曲に込められた想いを知った上で改めて聴くと、また新しいメッセージを受け取ることができるのではないでしょうか。