限りある時間を後悔なく生きよう
8月2日(土)青森ねぶた祭〜7日。
中年以降は、高度なスキルを持つ人ほど、成果も幸福度も落ち込む。その原因を解説すると共に、年齢を重ねると向上する知識・スキルを紹介し、人生後半を幸せに生きる秘訣を解説したのが「人生後半の戦略書」(アーサー・C・ブルックス著、木村千里訳、 ソフトバンククリエティブ、2023年発行)。
「流動性知能」と「結晶性知能」
2012年、私は順調な人生を送っていた。一流のシンクタンクの会長で、業績は上々。講演をすれば人が集まるし、数冊ある著書はベストセラー。でも、幸福ではなかった。なぜか?その答えを求めて9年間、多種多様な文献を調査し、「ストライバー」の研究に没頭した。
仕事で成功を収めた人の多くは、中年期に入るとキャリアの落ち込みに怯え、人間関係の希薄さに悩み始める。このような密かな苦悩を「ストライバーの呪い」と呼びたい。では、なぜこのような下降が始まるのだろうか?
有力な説として、中年期に入ると脳の組織が変化し、特に前頭前皮質(額の裏側に位置する部位)でワーキングメモリーや実行機能などを担う中枢機関の働きが落ち始めるからである。そのため、素早い分析や創造的な発明、マルチタスク処理などが以前より困難になる。
心理学者のレイモンド・キャッテルは、「人には2種類の知能が備わっており、各知能がピークを迎える時期は異なる」(1971年)と提唱したのである。1つ目の知識が「流動性知能」。推論力、柔軟な思考力、新しい問題の解決力で、30代〜40代に低下し始める。
もう1つが「結晶性知能」である。これは過去に学んだ知識の蓄えを活用する能力で、50代、60代と年齢を経るほどに向上していく。若い時は地頭に恵まれ、歳をとったら意味や使い方の知恵に恵まれるという発見である。
「流動性知能」の落ち込みを経験しているなら、「結晶性知能」へ飛び移る時がきたということである。50代〜70代で大きな幸福感、満足感を抱いている人たちは、例外なく「結晶性知能」を活かせる仕事(たとえば教育者など)へ飛び移った人たちである。
人間は単独の存在のようでありながら、実際には家族、地域社会、国など、1つの大きな根系を形成している。にもかかわらず、多くのストライバーが「1人で生きている」という幻想で成人期を過ごし、今になりその結果に苦しんでいる。特にトップに立つ人が孤独なのは、立場上、職場で深い人間関係が築けないからである。
人生とキャリアを再構築するには?
中年になると、宗教と精神性への関心が高まるのは一般的な現象である。年と共に人生は割り切れないところだらけだと気づき始める。そうなると、宗教のあいまいさと矛盾を許容できるようになり、精神性や超越性がわかるようになってくるのだという。
ストライバーはこの変化に無防備である。多くの場合、精神生活にはほとんど投資してこなかったからである。しかし、宗教や精神性を重んじる人は、信仰を持たない人よりもおおむね幸福で、うつ病になりにくいことを示す研究が山ほどある。
私たちは毎日、自分のことばかり考えている。だが信仰を実践すれば、焦点が宇宙へと移り、真理の源、生命の原点について考えさせられる。心身が生き返り、気分転換にもなる。新しいものへ挑戦するきっかけが欲しいなら「散歩」をしよう。
主要な宗教には例外なく巡礼がある。イスラム教徒にはメッカ、仏教徒にはブッタガヤ、キリスト教には「サンティアゴ・デ・コンポスーラの巡礼路」。人はなぜ巡礼するのか?1つに歩くことは優れた運動だからである。健康と幸福を実現するには特に効果的である。
「70億人のうちの1人」、これはダライ・ラマの言葉である。それが意味するのは、人生、仕事、人間関係を狭い視野から捉えるのは止めようということだ。歩きながら、自分が70億人の1人であることに思いを馳せると、何もかもたいしたことではない。
もう1つ忘れてはならない瞑想の効果がある。それは感謝である。歩きながらポジティブな出来事に意識を向けると感謝の気持ちが増し、幸福を味わいやすくなる。あなたの道を歩き始めれば、あなたは変わるかもしれない。(T OPPOINTから抜粋)