私にとって詩を描くことは祈ることと同じ。それを私は希望と呼ぶ。

私にとって詩を描くことは祈ることと同じ。それを私は希望と呼ぶ。

それは闇の中に見出した光
苦しみに絶望し 痛みに涙して
その零れた雫が奏で 咲いた花のような光
それは絶望に対する楔 そして世界への賛歌
言葉は連なり詩となり 詩は列なれば物語となる

過去作品の掲載 https://goldenslumber02.wixsite.com/mysite

発売中
「返答詩集 余韻」 http://poempiece.com/books/510
「始まりの場所 終わりの場所」 http://poempiece.com/books/510




    3

触れられなくても
続けていれば次の歩みとなっていく

伝えられなかった思いは
願いに繋がっていく

届かなかった歩みを繰り返し
いくつもの出逢いと別れを経て
思いは絵という形になっていった

一見しただけで気に入り店に置く人
置いたものを客が気に入り興味を持つ人

季節ごとの絵や店の雰囲気に合うものを
頼まれることがあれば

部屋に飾りたいからと
個人的な注文を受けることも増えてきた

励ましの言葉は挫けそうな時に勇気となり
描き続ける新しい理由となっていく

しかし彼女にはどうしても分からなかった
絵の何を人が気に入ってくれたというのだろう

知りたいと思うのに 知りたくて仕方がないのに
誰もが口を開くと 漠然としか出てこなかった

何が人の心を掴んだのかを知りたくて
蜃気楼のように手応えの無いものを
探しているみたいだった



「時を越えて」


線路の始まりはどこだろう
どこまで続き
どこで終わるのだろう
人里離れた山の奥から
人溢れる街中まで
線路は続いていく
夕陽を浴びて
帰路を急ぐ人を乗せて
帰りを待つ人への想いを運ぶように

駆け抜ける町並み
通り過ぎる田園
闇の中を射抜くように過ぎ去り
山を一望し

あの時降り立った場所へ
この道は続いているのだろうか

あの時始まった何かへ
この歩みは紡がれていくだろうか


「とあるお店にて」


ⅶ・働くということ 温もりがそこにあるという希望


言葉にできないことに
生きることの手触りがあるならば

言葉にしきれない中に 胸に抱いた想いの中に
想いとして感じ取ることのできない刹那の波に

言葉の奥底の 言葉以前の揺らぎの 想いの深淵の彼方に
大海原 空 宇宙のように広がる 感じ得る全てに

生きることの本質が横たわっている

何かが違う 違和感 憤り 不満さえも
求める物を知るための手がかりとなる
一瞬の煌めき

周りの顔色をうかがい 周りの主張に合わせ
自分の想いを誤魔化し 感じたことを押し殺すならば
胸の奥に渦巻く感情の存在を 無いかのように振る舞うならば
苦しみにすら耳を貸さずに生きていこうとするならば

人は自らの感じたことを 感じ取れなくなっていくのではないか
自らの内に抱いた想いを 信じられなくなっていくのではないか
何の意味があるだろうか 自らに疑問を抱く時
人はただ働くだけで自らを失っていく

金銭を時間と引き換えに手にしたとしても
人としての存在自体も失っている
達成できない者たちは自らの力の無さを恥じ 失望し 責められ
終わりの見えない努力の果てに 生きる価値を見失い 壊れていく

何かを与えるだけが仕事であるならば
そうではない人は生きていく価値がなくなるのか
仕事ができないとされる人間は
生きていく価値がないということになるのか

人の命の価値は能力の優劣で決められるものだろうか

人がここにいるという 温もりが命の全てであり
ただ人が無心に 生きている瞬間に 生み出されたものが
誰かに届く時 人という存在が 何よりも与えていることになる

「生きているのは自分一人だけではない」と人に触れて知ることは
何にも代え難い 励ましとなり 勇気となり 生きる力となり 喜びとなる

ただ生きていたいというだけではない

生きているということの感覚を知るために
出会いを求めることが生きるということ

自分らしく生きるための導きは 心の奥深くに 星のように廻っている


3「言えない想い 癒えない痛み」


言いたいことがあるのに 言えないのはどうして

口にしても 心で想っただけでも
理由のない涙が出てくる

どれだけ探しても 理由が見つからない

触れだけで溢れてくるから 近づくことさえできない

孤独に閉ざされて
想いが胸の内を彷徨っている

誰にも言えないから 心に鍵をかけて閉ざしていた
別に辛いことは何もないというのに 日常がこんなにも空しい

平穏なはずの日常に 押し寄せる洪水のように
飲み込まれる悲しみに 言葉なんて意味がない

生きる苦しみは現実には見あたらない
必ずしも現実に伴うものでもない

心の中にあるから 誰にも見えない

自分だけの世界であり
痛みは自分であり

現実が平凡であればあるほど
胸の痛みはより鋭く 理由は消えて 痛みだけが残る

理由がないからこそ
救いがないのかもしれない


―――――――
おまけトーク
話した人が自然について深く考えている人というのが雑談の中で分かって。素晴らしいなって思ったら、たぶん自分以外の人はガチ勢だから、自分は大したことがない、という話になり、いや、でもガチ勢までいくともはや思想だから、それくらいがちょうどいいよ、と話した。自然について考えを深めている人と話すと、何か大きな自然を前にしたような敬虔な気持ちになる。素敵な時間だった。自然は一円もお金にならない。それでも命には必要だ。この矛盾めいた構造に気持ち悪さを感じつつ、依存していることに人の限界を感じつつ。その流れでなぜか英語話そうぜ、てなって、急に英会話が始まる。全然言えねー💦てなったけど、色んな関心事がこうして誰かとの出会いを通して繋がっていくのは、やっぱりなんだかうれしい。
 



彼女は店を渡り歩いては
絵を置いてくれないかと頼んで回っていた

急な話に多くの人は困惑し
変な物を売りつけられるのではと警戒し
話をする前に興味もなく拒絶することの繰り返しだった
了解を得たにも関わらず無造作に捨てられていることもあった

売れなくても 捨てられてもいいと
悲しみの中で思う

心の中の風景に
記憶の一頁でもいいから
心に留めておいてもらえないだろうか

願いを託した絵画を携えて
彼女は今日も足を運ぶのだった


「営み」



緑の深い人里離れた山の中
ひっそりと佇む山村の家々
誰もが見ていようと 見ていなくても
淡々と紡がれる日常という営み

生活を支え
命を彩る
尊くも強く
儚くも温かな命の歌

海から上げられる収穫を奉るように
烏賊は白く輝くように光を浴び
いかなごは雪のように大地を埋める
吊されたタコは布団のように一斉に風にはためく
生き物の恵は自然の施しのよう

柿が玄関に吊されれば紅く輝き
収穫を願う

大根は草原のように建ち並び
稲架により整列する金色の歌

時が止まったかのように奏でられる
水車が風に周り
静けささえも歌のように
草のすれ音さえも囁きのよう

立ち並ぶ三角屋根の家々
日本という国古来の姿の帰る場所
家の暖かさと温もり 趣深く心地よい静けさに
この地は帰る者を待っている

営みは報われるかも分からず
天に委ねただ淡々と行われ
耕すという行いは同じ作業を繰り返すだけのものでしかない
収穫の季節が訪れれば誰もが尊さを知る



燦々と降り注ぐ陽光に海が煌めき
漁船がゆらりと揺れる
街が傍に佇み海が寄り添う
山を覗けば青空を背景に黄金色の稲穂が広がり
漁業が終われば一面に海の幸が並べられ陽に輝く

いつから忘れてしまったのだろう

自然の恩恵に祈りを捧げ
絶やさない歩みによって日常が営まれていたことを

一生を営みに費やす者の 傷だらけの尊い手によって
人々は生かされているということを

底知れない豊かさと限りある命の恩恵によって
人々は今日も生きるということを


「とあるお店にて」

ⅵ・誰もが仕事に自らの存在を賭けている

人の在り様よりも先に 人の力だけが問われてしまうなら
求められるのが結果だけであるならば
「誰か」である必要はなく 誰でもいいということになる
人間的な感情や心の揺らぎは要らない

一体なぜ人は生きるのか
結果だけが答えなのか
果たして人として生きることの意味があるだろうか

存在と生き方があって初めて
持ち得る技術や知識や知恵と命が光を放つのであり
生きるための能力はあらかじめ備わっているのではないのか

仕事に問われているのは 人が求められているものは
彩り 瞬き 煌めき 移ろう 感情の中で何を選ぶのか
いかに生きるのかという人間性

抱えるものに垣間見える 弱さと強さ 苦悩と歓喜 醜さと美しさ
愚かさと賢さ 憎しみと愛しみ 全てが問われ 暴かれるならば
自らの存在を賭けて 働いて 生きているとは言えないか


 2「望みの最果て」

傷の深みに誰も気づくことはない
傷つけた本人さえも忘れている

自分のことしか考えず
他人は利用価値があるかどうかが全て

心の傷は消えない 未来へと足を踏み出しても
痛みは残り続け 過去に囚われてしまう

胸の内を曝して傷だらけの心を見せてやりたい
裁けるならこの手で呪いたい 何も変わらない 空しいだけ

行き場のない憎しみをどうすればいい
日常は切り裂かれ 見えない雨に打たれている

消えない涙を流し続けている
見えない痛みで傷だらけになって
癒えないままで心は彷徨っている

綺麗事は奥底に潜む醜さを覆い隠してくれる
みんな甘美な響きに酔いたいだけで
いつも振り回されてきた

彼らを責めようとは思わない
自分のことしか愛せないだけ

信じるから傷つくのなら
信じなければいい

この世界に独りで生きていると思えば
空しいこともない

自分だけを頼れば
苦しむこともない

 

ーーーーーー

おまけトーク

話した人が自然について深く考えている人というのが雑談の中で分かって。素晴らしいなって思ったら、たぶん自分以外の人はガチ勢だから、自分は大したことがない、という話になり、いや、でもガチ勢までいくともはや思想だから、それくらいがちょうどいいよ、と話した。自然について考えを深めている人と話すと、何か大きな自然を前にしたような敬虔な気持ちになる。素敵な時間だった。自然は一円もお金にならない。それでも命には必要だ。この矛盾めいた構造に気持ち悪さを感じつつ、依存していることに人の限界を感じつつ。その流れでなぜか英語話そうぜ、てなって、急に英会話が始まる。全然言えねー💦てなったけど、色んな関心事がこうして誰かとの出会いを通して繋がっていくのは、やっぱりなんだかうれしい。

    ―第二章―
画家が心に描く景色

    1

彼女は売れない画家
心に見た風景に触れるために筆を握り
想いを色に託して散りばめる

崩れ落ちる波 空に波打つ雲
雲から降り注ぐ滝 涙に暮れる雨
昇る瞬間の太陽 月夜の静けさに舞う桜
人の笑顔 手に触れた温もり

描くだけなら写真を写し取るのと変わらない
見た物をただ描きたいわけではなかった
見えないものを絵に加えたいわけでもなかった

心に感じた躍動
美しいと思わず溜息が漏れた瞬間
ささやかな幸福に満たされた思い出
放たれた想い

出来上がった作品には何の感動もなく
心が震えた瞬間はどこにもなかった

思うように描けない
苛立ち キャンバスを破り 筆を投げ捨てたこともあった

彼女は新しいキャンバスを立てかけ
新調した筆でもう一度描くのだった

何度でも 届かなくても
救いを求める指先のように

心に見た眩しさを 描きたくて
心に触れた温かさを 見てみたくて

本当に描きたかったのは
彼女が見た夢だったのかもしれない


「遙かなる風」


黄金の大地が緑に変わりゆく
見上げれば蒼い山々が連なり
風吹けば川のせせらぎが安らかに流れ
橋から見渡す景色に帰る場所が溶け込み
彼方に行き先を見る

石垣を覆う草が風に揺れる
脇を流れる小川に笹舟が流れる
人の思いを乗せて
手に込めた願いを繋ぐように

舟はどこまで行くのだろう
誰かに届くことはあるだろうか

沈まない舟はない
川を流れ続けるなら
風の彼方の川の果てまで流れていくとしたら
笹舟が見る景色はどんな世界なのだろう

草が揺れて赤いベンチが顔を覗かせる
使われなくなったバス停が残された 旅の僻地
訪れる人はいるだろうか
誰も訪れなくても 取り残されたベンチは
帰らぬ人を待つかのように
今日もまた 旅人の訪れを待っている



「とあるお店にて」


ⅴ・たとえ仕事を辞めることはできても


たとえ仕事を辞めることはできても
自分を辞めることはできない
働く時間をどんなに生活と隔てて考えようとも
生き方は 生きる限り問われ続ける

人生と仕事を分けて考えてしまったら
働いている間の自分は一体どこにいるのか
どこで生きているのか

働くために生きるのではないはず
生きるために働くのでもないはず

働くことの積み重ねに
自分が自分として生きる一瞬も存在するはず

自分の願いと他人の願いとの間に
営みがある


「故郷―夢の彼方―」


    1「哀しみのゆくえ」


傷と痛みは旅立ち
哀しみと虚しさは辿り着く

地平の彼方へ
行き着く先は広漠の地

思い出は残像に過ぎなくて
時を経て虚しさを積み重ねてきた

空いた隙間が
重苦しくて耐えられない

何で埋めていいのかも分からない
苦しみで埋めようとしているのかもしれない

涙をどれだけ流そうとも
心が満たされることはない

風に扇がれる木の葉のように
彷徨うしかなくても

見つけてもいない煌めき
確かに手にしたいと願う何か

探しても見つけられないから救われない
どこに行っても触れられないから空しい

求めているものが何一つとして手に入らない
生きることに失望してしまう

未来を希い
世界を旅している
 

 

 

ーーーーーー

おまけトーク

思考のタイプ3パターン
・具体的なイメージで考える:物体視覚思考タイプ
・パターンや抽象的な概念で考える:空間視覚思考タイプ
・言語化して論理的に考える:言語思考タイプ
言語化が全てではないということ。

    9

鼓動を繰り返すだけで 失われていく時をすくい取るかのように
生と死の鬩ぎ合いにたゆたう海のように 彼は生きた

出会いを無くさないように
胸に抱いた想いを守るために

この世界に ただ残すために

彼は祈りながら 汗を滴らせ
血を吐きながらも 手を動かし続けた

命を燃やすように 今しか見えない暗闇の中で
灯火を松明として 歩み続け

彼が「凛」と題した作品は
紛れもない彼女の後ろ姿だった


「春夏秋冬」




桜の花びらが野山に添える
空に奔る青と白
大地を彩る緑と赤

赤みは人肌のような
散りゆく様は故に儚い



花は赤く舞い踊り
黄色に揺れ囁き
金色に光を散りばめ歌い
緑に溶けるほどの青さで泳ぐ
月と語らうように白銀に輝き

絨毯のように憩いの空気を広げ
足を止めた場所が休息の地

畦道沿いの子どもが籠と網を持って
自然の豊かな生命に触れ
果てしない世界を駆ける

旅は長い
だから急ぐことはないと語りかける

時は緩やかに 果てしなく巡り
時がくれば息吹となって移ろいゆく



春に目覚め 夏に踊り そして秋に実る
時は緩やかだが決して待つことはない

春に青く染め上げた棚田が
夏に緑が萌ゆる稲穂が
秋に黄金に輝き時を告げる
たゆまぬ歩みが実を結んだ命の営み

訪れる時のために
歩みとは続いていくもの

命とはそういうもの
運命とはそういうもの



白銀の世界は全てを飲み込み静寂を奏でる
山の戴く白い冠が地上に舞い降りたかのよう
実を結んだ息吹は眠りの時を迎える
目覚め 踊り 謳歌した命もまた 眠りの時へと誘われる

生きるには剥き出しの自然は厳しすぎる

野は深く 原は広く 白の世界は 深夜のように果てしない
取り残された旅の地もまた眠り続けている

人の存在のない場所で
取り残された無人の駅
線路はどこまでも続く

過去へと想い馳せる
思えば遠くまで来たものだ

故郷はもう手を伸ばしても届かないほど彼方に
決して忘れることがないように 近くに佇んでいる


「そして訪れる春」


空に一筋の風紋
水に一輪の水紋
水田に一枚の花片が落ちた

一際強い風が吹く
稲穂が一斉に揺れ 水面に小波が揺れ
花片は高く舞い上がり 空へと消える

雲へと吸い込まれ 広がる大地は整然と佇み
幾何学的な美しさで人の営みの足跡を現している

規則正しく整えられ 並び 果てしなく続く
灰色の直線と緑の縞模様

花片を見下ろすのは氷を抱く山
抱き護るかのように 野山に囲まれる街

合間を川が奔る
錦雲の影すら水面に触れられそうな
白いほどの青さで

緑を湛え
風は安らかに
川は清らかに

旅の果てに立ちはだかるような山は
月のように白く 空のように青く 瑠璃の宝石を秘めたかのように美しく
人智を超え 恐ろしいほどに 荘厳に聳える


「とあるお店にて」


ⅳ・願いが生まれ出た彼方に

今まで歩み 出会ってきた
煌めきと痛み 涙と希望 夢と現実の壁

この世界に生きることを通して この社会に生きることを通して
命との触れ合いを通して 働くことを通して
抱えた願いを 抱く夢を 誰かの心に灯すことはできるかもしれない

人は自分を認めて欲しいと思う
自分の想いが届いて欲しいと願わずにはいられない

願いが生まれ出た彼方に
人が人として 自分らしく生きようとする全ての営みが交差する時
声を聴いている人がいるのだろう

確かに届いたと信じられる出会いがあるはず
垣間見える人の輝き 情熱 温もり 生きる姿勢に触れて

何かに心満たされる瞬間に支えられ
人は生かされている

広漠の世界で果てしない孤独が触れあう瞬間に
大切にしたいものが重なる場所で

出会うべくして出会う必然
生きていることを感じ取る瞬間
生きていくことを信じられる奇跡


    「闇の中でも星の光で花は咲く」


手を伸ばすほどに
希望や光や夢みたいな煌めきが遠ざかって闇に消えていく

どこまでも孤独の世界が広がって
深淵の闇を生きている

想いを放たなければ苦しくて仕方がない
言葉にならない想いを叫ぶように 空へ

海の中を藻掻くように光へと手を伸ばす
生きる喜びを光のように希求して

届かなくても 叶わなくても
生きるために

届かなくても 触れられなくても
願い続けている

希望という名の光
失ってしまえば永遠に消えてしまう絶望と隣り合わせの断崖

決して枯らしてはいけない花は
心に根を下ろして血を吸い続けて美しく咲く

灯台の光を辿って闇の荒波を超えていくように
吹雪吹きつける山で彼方の星を見つめて歩むように

歩き続けなければ辿り着けない
生きていける場所を探している

 

 

ーーーーーー

おまけトーク

人生に降りかかる四つの作用
・反応する力:何かがあったときに自然とそう思う感じる受動的な作用。
・意志の力:何かを続けたり変えたり、アクションを起こす能動的な作用。
・楽をしようとする流れ:不快や嫌な事やストレス、苦痛から逃れようとする作用。
・より良くなりたいという願い:人生や自分をよりよい方向に向けようとする作用。
人生はこの四つの作用の力学で決まる。
人生が変わらないという時。反応する力が強すぎるのかもしれない。人は反応でできている、というくらい、生活の大部分を反応で生きている。人生を変えるには、意志の力を最大限使う他ない。反応する力は悪ではなくて、習慣もまた反応だから、環境設定や、習慣に落とし込むことで、反応する力のフォルダに入れることができる。それまでは意志の力が必要。ここまでが一番大変。最初は意志の力と、よりよくなりたいという願いを掛け合わせて変化を起こすことになる。個々から先は反応する力と、より無駄を省いて最適化する、楽をしようとする流れを活かしながら、習慣になっていく。いかに習慣作りが大事か、という話。


    8


作品を買った彼女は誰もそうするように 大事に胸に守り
育ててきた花のように 愛しんで両腕に抱く

彼女はぽつりと口にする

友達もいない 家族もいない
私は誰の心に残るのだろうか

彼は強く拳を握りしめて頷いた
「きっと残る」という言葉は
慰めではなく 決意だった

彼女は寂しそうに微笑んで
深々と頭を下げ 背中を向けた

もう二度と会うことはないだろう
彼は遠ざかる彼女を目に焼きつける
最期に残しておくために

作品たちの訴えてきた想いが
彼女の後ろ姿と重なった


「水路と草原」


川は空を写し取ったように青く
光を散りばめたかのように煌めき
万の緑に千の青を描いている
緑は山へと結ばれ
青は空へと抱かれる

世界はどこまで続いていくのだろう
どれだけ走っても決して届かないくらい
この世界は広かった


「とあるお店にて」


ⅲ・生きることへの希求

誰に出会い 何を伝え どんな話を交わし 言葉を選び いかに受け取るのか
人と人との間で揺らぎながら どうやって人と関わるのか
正解や指標は存在しない

「こうしたい」「こうなりたい」「こうしてほしい」という願い
歩んだ道 生きたこと 全てが集積されている

今まで歩んできた道に結果は宿るのだろう
結果とは生命から生まれ出た果実のようなもの
実らせるのは 命の営み

育む過程を 仕事や役割 働くという言葉で表すのなら
人間らしい生き方を 生きている実感を 希求するということ
人の生活から生まれ出る全ての営み
より豊かな命を生きようとすること

人が人として生きていくということ
人を必要とすること 手を伸べること
人から必要とされること 伸べられた手を掴むこと
人と人との間に関係を繋ぎ 絆を紡ぐこと

結果とは生きたことの一つの結末でしかない


    「生きるということ」


燃える命を灯のように掲げて 指先は暗闇を探る
泣くように鼓動打つ心臓を 何度も確かめながら

ここにいることの意味を
探して旅をしている

心臓の音色を知るために
旅は続く

何をしても聞き取れない
どこへ行こうと見えはしない

描き重ねた想いの全てが
意味がないような気がして

意味がないならどうして胸が一杯になるの
泣いたって言葉は出てこない

想いが零れるばかり

心臓の鼓動は誰に鳴らしているの
何のために生きていくの

答えを求めて旅は続く
通り過ぎた景色には二度と戻れない

剥き出しの自分で必死に生きる
ありのままの姿で 夢のように

世界を形作る線と心を成す線に絡め取られて
身動きが取れなくなって
混沌のような渦に飲み込まれて
藻掻きながら 彷徨って
足跡の数だけ 幾多の道が生まれた

彼方の星ばかりを見て走り続けていた
意味がなかったとはどうしても思えない
旅の中で出逢った物を紡いで歌にして
世界を彩り描いてみる

出逢ったもの全てが繋がって歌詞となって
全て心の宇宙の中で 星のように輝いている
無くしたものさえも この世界では拾い集めることができる

どれだけ時が経っても逢いに行ける

描いて 歌って 紡いで
生きている

心臓の鼓動は鳴り続けている
届けたいという 願いのために

 

 

--------

おまけトーク

誰かの要求に応えなければ。そんな気持ちが先行するから、断ったときに罪悪感が渦巻く。大丈夫だよ。私はもう誰かのためにしなくても、ちゃんと価値があるし、だから、無理に応えなくて大丈夫なんだよ。罪悪感よ。さらば!私は自分のために生きていいし、自分のしたいことをちゃんと優先していいんだよ。自分へ。一番の味方より。




彼は宛もなく彷徨う旅人
街を渡り歩く 移ろい続ける風

陽の移ろいと景色が 心を留めた場所に
風呂敷を広げ 作品を並べ佇む

時間と場所の何が 足を止めさせたのか
心に引っかかったものを探すために

ここは広く 人の足音はリズミカルで疎らだった
話し声 通り過ぎる車 鳥の囀り 木の囁き 風の音
全てが 広がる空に 飛び立ち 吸い込まれ 消えてしまうようで

太陽の光に照らされ 通り過ぎた人の横顔に
涙が地面に落ちた瞬間に 得体の知れないものを見る

報われない悔しさ 伸ばした手が届かない失望
愛しい人に見た救い 何気ない花に降り注ぐ勇気

―――ごほっ…

彼は突然何度か咳き込んだ
彫刻刀が手から零れる
口元を押さえた掌に血の跡が残っていた

一体いつまで生きていられるだろう
傍にあった黒いハンカチで拭き取る

残したものは誰かの傍に居続けられるだろうか
並んでいるいくつかの作品を見つめた

子犬を買っていった女性を思い出す
浮き上がっては沈んでいく記憶の断片に何かが引っかかる

掴もうとしても届かない 靄がかかっているかのように
一瞬見えたように思え―朧に…淡く…霞み―消えていってしまう…

おもむろに木片を取って削り出した
今のが何であったのかを知るために

ぽっかりと空いたような時間に取り残される中で
何かを掴もうとするかのように

いつの間にか太陽の移ろいも意識から消えていく

「――あの…」
投げかけられた言葉は木々がざわめくように
水面に波紋を広げて 彼の意識を呼び戻す

目の前にいたのは
犬の像を買ったあの女性だった

ある作品に目を留めた時
彼女は凪いだ海になったかのようだった

「…これは―」
先日の夢で見た中で象った一枚の絵

夕日が差し込む
辺りは柔らかな光に包まれる

客足は彼方の雲のように疎らで
喧噪は夜空の星のように静かだった

彼女の声はなぜか小さくても聞き取ることができた
流れる風が 言葉を届けてくれたからだろうか

太陽の光が彼女の涙を真珠のように照らしていた


「風と月」



稲穂が夜風に安らぐ宵の頃
満月が微笑み水田に姿を現す
風が緩やかに撫で 水紋が広がり 緑と戯れる

果てしなく広がる田園
たゆまぬ日々の営み

時を絶やすことなく
自然の恩恵を受けながら

見守られて 命は育まれていく
木のように 花のように



見守るかのように
地蔵がうつむき手を合わせ
豊作を祈る護り人

両腕で抱くように桜の枝が垂れ下がる
日々の営みと旅路に幸を願う隣人のように

水面に映る花片 風に揺られて落ちて
小波に揺れる ふわりと舞い上がり

風の両手が空へとすくい取るように
彼方へ消える 月夜の元へ旅立つように


「とあるお店にて」


    ⅱ・大切にしたいもの


お店の匂い 店員の息遣い 醸し出す雰囲気
語られなくても肌で感じる 心で受け取り 自らの心に語りかける
働く人たちの 大事にしたい何か 触れる人へ 届けたい何かを

届けたいのは
この世界に生きる自分そのもの
抱える想い 秘めた願い

「仕事だから」という理由や「このくらいの給料だから」という理由はない
自らの生み出す何かに対する「これくらい」という手抜きや
受け取る誰かへの「あなたなんてこんなもの」という投げやりな態度でもない

大切にしたい何かを
誰かに届けたいと願う
シンプルなもの

情熱が 人が人として生きる営みを彩り
願いが 生み出す全てに息づいている
人の生き方が 働くという形で現れる

自分自身として生きているだけで
眼差しが 指先が 言葉が――確かに伝えている

語る言葉がないとしても 大切にしたい何かを
宿る想いを 心に感じる温もりを

人は出会いを通して
大事にしたい何かを探している


    「散りゆく言の葉は 儚い花」


言葉を消すことができても
想いを消すことはできなくて

想いは溢れて何を伝えればいいのか分からなくなる

言葉にするのは簡単なのに
どうして伝えられないのだろう

言葉は移ろい すぐに揺らいでしまうから
何のために言の葉は散っていくのだろう

心だから 空っぽの言葉に触れると哀しくなる
どうでもいいと想っても 言葉はいくらでも紡げてしまう

想いなんて形が無いから簡単に変わってしまう
見えないからいくらでも求めてしまう

どんなに伝えたいと想ったとしても
言葉にした瞬間に過去になって消えてしまう

無くさないために
この想いを胸に抱くために言葉にして

不安でも 苦しくても
信じられるように

信じられない時はまだ芽を出していない
時間をかけて育まれる花

放った想いはどこへ行くのだろう

何が伝わるのか分からなくて
受け取る言葉なんて選べなくて
届けてくれる誰かがいる

いつだって言葉は掴めない
風に踊って手をすり抜ける
掌に残るものなんて僅かだから

風が心を運び導いてくれる
咲く花が想いを受け止めて
足元に咲いてくれる
 

 

 

ーーーーーーー

おまけトーク

色んな人と話していると、気づいたら楽しく話しているうちになぜかマウント取られていることがある。良いのよ。別に楽しく話していってくれれば。でも話し終わった後に、あの時間は何だったんだろう、と釈然としない感じになることがある。きっと、そういう人は、不安なんだと思う。そして自分の生き方というか、スタンスを肯定したいんだと思う。そうだよね。今ほど激動でサバイバルな時代はないと思うの。だから、みんな不安だよね。きっと。その中で私はまっすぐに自分の信じた道をひた走るような生き方がしたいと思う。GRIMSPANKYの「FREEDER」の歌詞がドンピシャすぎて泣く。濁らないでいこうぜ


    6

眠るように夢の中に還っていく
無数の流れ星が瞬く走馬燈

我が子を抱き 未亡人となり
背中を見送り

孤独な生活を真摯に護り続け
最期の日から手を放すように

仰ぐ星の彼方
空のような無音の足音を残し
森のような深淵の沈黙に眠る

夢の中に還っていくかのようで
永遠の星空のように安らかに
雲一つない青空のように淡く

穏やかな時に包まれ
横たわって目を閉じた姿の傍らに
娘だろうか―涙を溜めて―微笑みを湛えていた

一つの絵画のような静謐さで
果てしない空のように美しく
死さえも優しく舞い降りたような…

彼はいくつかの場面から一つの想いを選び取る

彼女が我が娘を抱きしめた姿でも
孤高に生きた背中でも
気高い眼差しでもなかった

死に際に両手を温かく包み込まれ
幸せそうに目を細めた 彼女の刻だった



「花と鳥と 風と」




花は鳥のよう
風に乗り飛び立つ

白い冠を抱く山々へ

羽根のように風に散り
空を舞う

大地で踊り
桃色に染める春の宴



鳥は風のよう
自由に空を泳ぐ

空へと羽ばたき 雲のように旅をする

気ままに訪れ
地平の彼方へと飛び

大地に境などなく 無限に広がっている
時に限りなどなく 悠久に流れている



「とあるお店にて」


ⅰ・出会いから始まるもの


出会うことで開かれる道がきっとある
新しいものに出会えるこれからを想っていたい

胸の高鳴りを宿して今日も旅をする

出会いには何かが必要なのかもしれない
気まぐれ 運命の悪戯
導き 直感 背中を押す想い

いつもの通りに 映るお店
静かに森の中の一本の木のように 佇んでいる
街に埋もれたような 星座の中に潜む一つの星

今まで気づかなかった 何度も目にしたはずなのに
舞い降りる光のような 初めて知る

「何だろう」と思いながらも後ろ髪引かれて
通り過ぎる毎日 気になりながらも 遠ざかりながら
振り返る 勇気もないから 素通りしてしまう

踏み出そうとして 躊躇う 出した足を 戻して
繰り返しながら 時が過ぎていく
進めない自分に戸惑いながら 心の中で 迷いながら
歩き出せない自分の中で 歩き出さない足元で
何かを育てている

無数の星のような出会いを繰り返して目に留まった
繚乱の花のような色彩の中で 目に映った瞬きが 一陣の風を呼ぶ
出会った道を辿って導かれ 繋いだ星座の軌跡が 勇気となって
一条の光が行き先を照らし出す

足元に育ち 心の中に育み
日常に思いがけない彩りを 添えることがある
期待を抱いて心が高鳴る一歩が
果てしない道の行く先を 大きく変えるかもしれない

出会いとは何が待ち受けるのか分からない
神秘と奇跡が秘められている
驚きと発見 希望と挫折 果てに閃きと可能性 終に余韻と夢を

出会いは 一歩先に あるのかもしれない
見つけてもらう瞬間を 待っているのかもしれない


    「思い出と今」


いつか目の前から いなくなるかもしれない
思うだけで 不安と哀しみが押し寄せる

忘れたくなくて 夜空に祈っている
心に降り積もった想いを 無くさないように
朝陽に願っている

初めて出逢った時のこと
伸べた手に初めて触れた瞬間

離れたり近づいたりする度に 好きと嫌いを行き来するように
怒ったり哀しくなったりするように 愛しさが重なって募っていく

ただ一緒にいただけでは近づけない

慈しみ護ってきた想いが温かな光を放つ時
世界にたった一つだけになる

永遠ではないことを知っているから
確かめるように 何度でも手を伸ばす

生きている時に限りがあるから
一緒にいたいといつだって思う

忘れた時に思い出して
永遠に続くように願う時がある

想いもしない形で別れがくるかもしれない
後悔しないように 哀しいくらい抱きしめている

いつか来る別れた後の日々が
優しく降り注いでほしい

彼方の星のように
足下の花のように

 

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おまけトーク

朝ご飯がナッツで足りなくなってきて、レタスを買う。
朝、起きて、軽く筋トレして、シャワー浴びて、小雨の中サッカーして、ナッツ食べてレタスをかじる。美味い。美味すぎる。レタス最高。冬までの楽しみ。




夢は美しくも儚く
甘くも哀しく
愛しくも刹那的で
見たものは心を掴んで放さない

流れ星のように
視界を横切る花片のように

言葉にしようとするほど散ってしまう
夢のように切なく

彼は彫刻にして刻みつける

言葉にできないのなら
せめて―ここに残せるように


「記憶」


特別な何かではなくとも
一面に広がる海
果てしなく広がる田園

金色に 茜色に 空色に 大地を彩り歌う
雲を貫き 列なる山々に 紅に萌える 木々の宴

木々のざわめき 稲穂の揺れ 波の移ろい

全てはありふれている
特別ではないからこそ
全ての人の傍にある


「受け入れるということ」


受け入れるということ
あるがままに 認めるということ

否定も非難も 肯定も賛美も 等しく
誰が何を思おうとも 存在自体を否定することはせず
誰かの世界に存在する 思いが瞬く

心の在り方を誰が責められるだろう

共感する必要はなく 批判する必要もない
自由だけが広がっている

受け入れることの豊かさは 行為そのものではなく
心の内に訪れる安らぎにある

零れる怒り 溢れる涙 満ちる虚しさ
全てが存在を許されている

美しい旋律と 戦慄する醜さが瞬き 渦巻く
心という広大な宇宙で 想いの全てが
受け入れるという行為の天秤にかけられている

言葉はどこから訪れてどこへ行くのだろう

奥に眠る想いは
七色に輝き舞い踊る花弁のように

心に移ろい流れる全ての想いが
世界の内なる心を彩る

瞬いては消えていく
煌めき移ろう季節のよう

大地に聳(そび)える大樹のような
言の葉が散っていくのだろう

全ては大地に眠る
心という大地に眠る


    「生きるための光」


降り続く苦しみの中で
歩き続けるには光がいる

闇の中で 吹雪の中で 嵐の中で
決して見失わない灯がいる

空にあっても覆い隠されてしまう
決して見えない光

だから疑ってしまう
信じられない時もある

信じてきたものが信じられなくなりそうだから
苦しみの中で必死に掴む

誰にも見せることのできない
心の中だけに昇る太陽

舞い降りた苦しみの中で
光を選び取るには星がいる

信じることを選ぶための
一条の光がいる

誰にも示すことのできない
自分にしか選べない光

だから傷ついてしまう
怖くなることもある

信じてきたものが信じられなくなりそうだから
進むことが恐くなり 立ち止まりたくなる

過去に散りばめた想いは自分だけのもの
光を放って照らす夜空の星

選べる未来は一つだから 決められないこともある
道が見えないから 進めない時もある
葛藤の中で 大切にすると決めたものがある

苦しみの中で 耐えるうちに手放したものもある
大事にできなかったもの 選び取れなかったもの
無くしてしまったものに埋もれるように 自分を諦めたくないから

諦めない勇気を出したくて
歩むことだけは 自分と約束したから
生きていくことだけは 選んで進んでいく

見えなくても
消えたと思っても
決してなくなったりしない

心の中に散りばめた
宇宙の彼方に 道標となるために
星となって生まれ変わる

 

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おまけトーク

 困っている人がいるとどうにかしてあげたくなるのは私の良くないところだなーと思うのは、ついつい、親身になってしまうし、何かできることはないかな、と思ってしまう。お人好しといったらそれまでだけど
 たらればで、もし一家が大変として、親子共々避難してきたら、どうしようかとか思う。これはもう一軒借りればいいのか?とか思ったり。
 だから同情心とかで何でもやってあげようなんて思わないことね。自分への忠告。私だって生きるのである程度一杯で、手を伸ばせる範囲なんて、限られてるんだから。助けたいと思うのは自由だけど、よく考えなさいね。という自分への説教。


    4

ある人の涙 微笑み
愛しい人と一緒に見た夕陽 月夜

美しくも儚く 目覚める時には淡く溶ける
記憶という掌から零れ落ちるように
消えていってしまう

残像のような
遠い日の思い出のような

夢の残り香は訴えかける
夜空に願う星のように

誰にも聞こえることのない
祈りのように

忘れたくない
失いたくない
無かったことになんできない

声なき声は彼に彫刻刀を握らせる

あったかけがえのない何かを
心に残しておくために

できあがった作品に彼は首を垂れる

出会うべくして出会った人たちは
吸い寄せられるように彼の前に立ち
はっとして 作品に思わず手を伸ばし
思い出を語り 宝物のように大切に持っていく

やはり彼は何も言わない
ただ後姿を見つめて
祈るように眼を瞑る

そんな時だった
足を止めた女性がいた
とある像を見つめていた

子犬の像はくるりと丸い瞳をして
舌を出して笑っているかのようだった

「似てる…」
彼女はそっと呟いて―思わず―触れる
撫でる手つきは生きているものを慈しむようだった

はっとして――彼女は手を放して 彼に謝る
彼は微笑んで ゆっくりと首を振る

彼は子犬の夢を思い出す
差し出された手と笑い声
―あなただったか…

誰もがするように
彼女もまた とつとつと語り始める

犬を飼っていたことを
亡くした悲しみが残り続けていることを
思わず手にとってしまったことを

語りながら―彼女は犬を撫で続けていた
ずっと大事にしていた―宝物のように

彼女は子犬を抱きしめて
時が止まったように 動かなくなった

時間にしてほんの数秒が ゆっくり感じられた
失われた時を 取り戻すかのように
長い時間が経った
項垂れ 眼を瞑る姿は
黙祷のようだと 彼は思った



「旅路」


今日はどこへ出かけようか

出逢いに想いを馳せて
別れに郷愁を

景色に心奪われて 足を止めても
記憶を乗せて 時は止まらない

たゆたうように 静かに ゆっくりと
内側を巡り 外側へと流れ 深い場所に吸い込まれる
呼吸と血脈と 命の鼓動

    「生き方」


    ⒊


声が――聴こえるだろうか
胸の奥の そよ風よりも微かな囁く声
流れ星のように刹那に消える閃き
彼方の星よりも淡い光

世界に吹き荒れる風
欲望と執着―価値と意味―真偽と正否―混沌
飲み込まれれば 翻弄され 意志を見失う
何を手にすればいいのか分からず探し続け  彷徨うことになる

不安―焦り―孤独―痛みが
意志がないことを
自分自身を失っている虚しさを
訴えている

どんな苦しみに飲み込まれても
思い通りにいかないとしても

結果にさえ 耐えるように
注意深く 果てを見つめてみる 望み続けてみる

一陣の風が吹き抜けるのを感じるだろうか
果てを照らす一筋の光が射し込み
自らの行く道を見るだろうか

進んでいないのではない
立ち止まっているのでもない
世界が動き出す時を 待っている

思うように進めない己を
恥じる必要はない 責める必要もない
導きとなる光は 心の中にあるのだから



    「星と命 闇の輝き」


命は輝く
消せない闇に飲み込まれても

命だから光を放つ
闇の中でこそ輝く

闇は混沌であり残酷な世界
美しさと奇跡に溢れた世界

夜空を見上げれば
煌めく星たちの祈り

闇の中にあっても
命は輝くことができる

圧倒的な闇の前では点でしかないとしても
間近で見れば一面を覆う輝きを放つとしても

星を繋げば星座となり
果てのない宙に物語を紡ぐ

過去の痛みが安らぐための唄
未来の輝きが少しでも守られるための祈り

想い続けている
願い 祈る

あの星を忘れないでいようと
決して消させはしないと
過去に散ってしまった
夢の託した軌跡を

繋ぐために
この胸に抱いている星

 

ーーーーーー

おまけトーク

サッカーで、ちょっと体が動くというか、体が分かっている範囲が増えた、ような気がする。手応えというか。バスケもそうだけど、上手くなるのに6年かかったわけで。つまり私にはセンスも才能もない低スペック人間で、勉強も運動も人間関係もありとあらゆる面で努力だけでどうにかしてきた部分が大いにあって。下手で当たり前だし、それでいいんだと思ったし、考えてみれば、私は才能がないとか、ダメ出しをされたりとか、そういう茨の道みたいな場所を切り開きながらここまできたわけで。駄目だと自分を思った時に、思うほど他の人は自分を駄目だと言っているのか、と冷静に考えたらいいと思う。絶対そんなことないから。今はもう子供の頃と違うし、優しい世界に、私は生きているんだ、と知っておくといいよ。という自分へのアドバイス。


    3


止まらない水のように
足音は流れ続ける

その中で時が止まったように
はっとして 歩み寄り 手に取る人がいた

眼差しは愛に溢れ
悲しみに満ちていた

時間に取り残されたのだろうか
過去に何か景色を置き去りにしてしまったのだろうか

彼は何かを言うことはなく 作品も沈黙を守っていた
見た者の心の中の風景が 答えるだけだった


「夕暮れ」


陽が落ちようとしている
眩い光は淡く彼方に溶け出している

向かう先はいつも家
変わることのない帰る場所

過ぎ去った時の一抹の寂しさ
見送る背中に残された時の余韻

ただいま という一言の温もり
おかえり という一つの安らぎ

今日も一日が終わる

過ぎ去る日常は何も残さない
変わりゆくだけ

心の中に湛える 思い出に降り積もる
砂時計のように

どんな時も変わらないものがある

帰る家があるということ


    「生き方」


    ⒈

見果てぬ夢を思い描き
歩みそのものが喜びだった
踏み出した最初の一歩から始まった物語

感じた全てを背負い
歩む道

どんな生き方がしたいのかという希求
どんな自分でありたいのかという願い
世界にどうあって欲しいのかという祈り

辿り着くための道は何だっていい
歩き続けることに夢を見られるのなら
見果てぬ願いを見失わないなら

過去に残していった何かは
思い出の中で蘇る記憶や感情の襞となって
今に生きているから

道に降り注ぐもの
心の果てから舞い降り
心の奥底から訪れたのかもしれない

未来を変えるかもしれない出会い
叶わなかった過去に抱いた願い
今を歩む道を照らす灯台



人は誰しも自らの人生のトップランナーとして先頭を
過去から必死に走り続けてきた今を
自分だけの人生を背負って生きている

誰も示すことはできないから 自分に問いかけて
答えが出せなくても 答えかもしれない何かに出会って
自分を信じて 歩み続けている

出会い続けるということ 出会いを信頼するということ
変わり続けるということ 変化を受け入れるということ
扉が一つずつ開いていくということ

手の中にあるものは可能性 未来そのもの
自分自身へと続いている道
感じるものを頼りに 手探りで歩む道

眼で 耳で 指先で 聞いて 触れて

身体を通してのみ 知り得るもの
心の楔となる何か

自分の中にしかなく
自分でさえも分からないかもしれない

想いや思考では触れられないもの
分かりたいと手を伸ばさずにはいられないもの

漠然とした心の揺らめき
小さな灯火

命の鼓動が輝きながら 全身を捧げて
燃え上がる炎から散り舞う火の粉の数ほどの 失敗を繰り返しながら

諦めずに生きてきた命
情熱が放つ光が 身体を支えてきた

この道の果てに想いを馳せてみる
これまで歩んできた道を 決断の数々を
これから歩んでいく道を 掴みたいと願う未来の姿を

どこまで自分らしい在り方ができるのか
いつまで自分としてこの世に存在できるのか
生きる限り自らの存在は問われ続けるのだろう

目の前の出来事を 出会いを通して


避けては通れない結末が待ち構えているとしても
生き方 命の使い方は
自らの手の中にあるはずだと信じている


    「希望―信じ続けるということ」



絶望
傷つけられ 裏切られ
痛みの中で 流す涙に 降り注ぐ闇のこと

虚無
未来が黒ずんで見えなくなること
歩んできた過去が 霞んで消えてしまうこと

生きるということ 信じるということ
自分自身を 受け入れるということ

信じるということ
闇の中にいても見えない星を探すこと

見えない星を探すということ
未来を見つけに行くということ

覚悟 全てが自分次第であると背負うこと
勇気 覚悟が揺らぐような 重い一歩を踏み出すこと
信じるということ

思い通りにはいかなくても 願いが叶わなくても
自らの立つ大地に もう一度旗を突き立てること

見失っても 自分だけの標だから
揺らいでも 信じられなくなっても

もう一度戻ってこられるということ
信じた数だけ 確かに進んでいる

信じ続けるということ
生きるという希望
 

 

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おまけトーク

仕事をしてて、ブチぎれる案件があり、心があらぶっていて、この心を静めて次に行きたいと思い、わが心よ、静まり給えと思う笑。何かお供え物をしなければ。と思い、アイスモナカを捧げる(←食べたいだけ)こうやって、自分の機嫌を取ったり、心模様を大事に感じ取って扱っていくって大事だよなーと思う。