パーティドレスを着た女性に誘導され
二人は奥のソファに腰を降ろした。
健一は店に入ったところで、やっとキャバクラだと気付いた。
キャバクラなど行きたくなかったが気付いた時にはもう手遅れだった。
健一は葛西に
「葛西さん、僕あんまりお金持ってないんですけど…」と言ったが
「大丈夫、大丈夫」
と葛西は健一の考えを一掃した。
店内には他に二組の客がいた。
一組は中年男性で、もう一組は若い20代の男たちだった。
健一は前者の中年男性ばかりが来るところだと思っていたが
若い人も居るんだなと思った。
髭の生えた渋い男が健一たちのテーブルにやってきた。
白いシャツに黒いベストを着ている。
飲み物はお決まりですか?ときかれ
健一はあわててメニューを手に取り眺めたが
そこにはビールかブランデーしか書かれていない。
健一はもうお酒は飲みたくなかったが仕方なくビールを注文した。
注文し終わるとすぐさま女性がやってきた。
「どうもーめぐです、よろしくねー」
と赤いドレスを着た女性が葛西の横に座る。
健一の横には、【まな】という女性が座った。
まなは店のほかの女性より幼く見えた。
葛西の横に座っためぐと言う女性はすらっとしていて化粧が濃く
色気たっぷりなのに対して、まなは少しぽっちゃりで垢抜けていない感じだった。
健一は初めて来たキャバクラで横に座ったのがまなで良かったと思った。
色気たっぷりの綺麗な女性は苦手だからだ。
まなは20歳の大学生だと言っていた。
しかも有名でレベルの高い大学だったが、健一にはそれが本当か嘘かわからない。
そんなレベルの高い大学の学生が
キャバクラで働いているなど考えてみたこともなかったのだから。
まなは見た目は垢抜けていなくても積極的だった。
健一の膝の上に手を置いてにっこりして話す。
いつのまにかその膝の上の手は健一の手と重なっていた。
まなと話しながらも健一はやけに冷静だった。
この店がまなを自分にあてがったのは一瞬で僕の好みを見抜いたのか、
葛西さんも楽しそうにめぐと話している、葛西さんの好みも見抜いた、
そう考えるとこの店はすごいなと思った。
客によってうまく女性を選んであてがうのだから。
一時間ほど経ったころだろうか、
まなは健一に携帯電話の番号とメールアドレスを聞いてきた。
健一は迷うことなくまなと番号交換をした。
そのあと飲み物の注文をとりに来た髭の男性がテーブルにやってきて
60分経ちましたが延長されますか?と葛西に訊いた。
葛西は健一にどうする?と訊いてきたが
健一は横に居るまなに気を使って「もういい」と言う事が出来ず、
「どっちでもいいです」と答えた。
葛西はあと30分だけ延長しますと髭の男性に伝えた。
まなは延長するなら女の子が変えることもできるし
自分を指名することもできると言ってきたが
健一はすぐさままなを指名すると答えた。
葛西もそのままめぐを指名して女性が変わることはなかった。
30分が経過してお会計をするときに健一は目を疑った。
そこには28,000円と書かれてあった。
健一は持っていたお金1万円を葛西に渡した。
葛西は健一の一万円を受け取り全額を支払った。
店を出てから健一はこんなに高いものなのかと葛西に訊ねた。
葛西は顔色を変えることなく支払いをしていたが
健一にこんなに高いとは思わなかったと告げた。
延長の際の指名料が高いのだろうと話した。
始発の電車までまだ一時間ほどあったので
葛西はラーメンでも食べに行こうと健一を引っ張った。
健一はぐったりしてうなずくことしかできなかった。
ラーメン屋に入った二人はキャバクラのことを話しながら麺をすすった。
健一は葛西にお金を出してもらっていることなどを考えると
正直な感想を述べることができず楽しかったと告げた。
しかし実際に全く楽しくなかったわけでもなかった。
キャバ嬢まなには興味がなかったが大学生のまなとは会ってみたいと思っていた。
ラーメン屋を出て始発の時間が来ると
健一はおごってもらったお礼を言った。
葛西もさすがにぐったりしていたが、
「あぁいいよ、またな」と言って二人は別れた。
家に着く頃には朝日が出てきていたが
なんともすがすがしくない休日の朝を迎えることになった。