熊が,北海道の羅臼岳登山道や岩手県の北上市瀬美温泉で人を襲うなど,2025年はこれまでは人の安全圏と考えていた場所での熊による被害が深刻化し,4月以降の死亡者数は少なくとも7人に達し,過去最多を更新している。また,人里での出没が増加しており,市街地での目撃情報も珍しくなく,人の生活圏での熊の目撃情報が連日報じられている。

日本アルプスを中心に展開する山岳ガイドの男性は,「これまでの熊による被害で特に印象に残っているのは,三毛別事件と福岡大学ワンダーフォーゲル同好会襲撃事件である。どちらも北海道のヒグマによる執拗な攻撃を受け,多くの人の命が奪われた悲惨な事件だ。熊はターゲットを定めると徹底的に襲う傾向があり,熊に遭遇した場合には可能な限り,その場からできるだけ遠くに離れ,人の多い場所に速やかに移動することが望ましいと思う。登山者の熊対策としては,『熊は臆病』との認識の下,熊鈴や熊スプレーの携帯を推奨してはいるが,熊の性格によっては音のする方に近づいてくるのではないかとの見方もあり,悩ましいところである。痴漢撃退などに使用されるスタンガンのような武器の使用も検討していた登山家もいたが,熊との至近距離での使用になるため,使用する前に熊の攻撃を受ける可能性が高いことに加え,熊の分厚い肉体には効果は期待できないと断念したようだ。しかし,これだけ熊が人の生活圏に入ってきている状況を見れば,国や自治体としてはもちろん,個人としても何らかの有効な熊対策を検討しなければならないだろう」と,有効な熊対策の必要性について言及する。

今年1年の世相を表す「今年の漢字」が12日午後,京都市の清水寺で発表され,「熊」の文字が大きく描かれた。日本漢字能力検定協会が全国から「今年の漢字」をインターネットなどで応募した結果,2025年は「熊」が1位となった。全国各地で熊の被害や市街地での目撃情報が相次ぎ,寒くなった今も冬眠せず,人々の生活や経済活動にも深刻な影響を及ぼし,人々の印象に強く残っているのだろう。

なお,環境省は,2025年11月30日に閣議決定された補正予算案において,熊被害対策パッケージとして総額34億円を計上した。この予算は,公務員ハンターの人件費や緩衝帯の整備,放置果樹の伐採など,地方自治体が行う被害防止対策への交付金事業に28億円,熊の個体数調査に5億円,国立公園での電気柵設置や熊スプレー貸し出しに1億円が充てられる。

来年は,平和を象徴するような漢字が選ばれてもらいたい。