IT企業のPR -53ページ目

広報とマーケティングの関係

これまで、広報が、開発部門、営業部門と連携していくことの大切さを述べましたが、広報とマーケティング部門の関係を強化していくことも大切です。企業においては、通常、広報部門がプレスリリースの作成、記者発表会の開催など報道関係者を対象にしたメディアリレーション活動を主に行い、マーケティング部門が、カタログやDMなどの販促物作成や、セミナー・自社イベントの企画・開催、広告などのマーケティングコミュニケーション活動を行っています。


メディアリレーションにおいては、報道関係者は事実を必ず求めますので、誇張表現のない事実を正確に伝えるコミュニケーション活動になりますが、マーケティングコミュニケーション活動においては、どちらかというと、誇張表現を使って、製品・サービスの機能をおおげさに伝える傾向があったと思います。しかし、だんだんと、ブログを始めとするソーシャルメディアを使って個人が製品・サービスを厳しく評価する時代になり、誇大表現を使うことが企業の信頼の失墜になりかねないため、マーケティングコミュニケーションにおいても誇張表現を使わないコミュニケーション活動が求められていると思います。


また、広報部門においても、報道関係者のみを対象としたメディアリレーションだけではなく、ブログなどのソーシャルメディアを対象にしたメッセージ作りに積極的に携わっていく必要が高まっています。米国では、プレスリリースだけではなく、ソーシャルメディアを対象にしたソーシャルメディアプレスリリース という手法も採用され始めています。ソーシャルメディアプレスリリースの書き方については、テンプレート (英文)をご参考にしてください。


こうした背景から、より広報とマーケティングは協力して、共通したメッセージをもりこんだコミュニケーション活動をしていくことが求められています。


営業に結びつく広報とは

営業に結びつく広報を行うには、まず営業のパフォーマンスを向上させるうえでどのようなことが大きな課題になっているか把握することが大切だと思われます。営業全般に関するリサーチを行うCSO Insights が、2006年度に世界中の企業1275社対して行ったリサーチ (英文)によると、営業のパフォーマンスを向上するうえで近々にやらなくてはならない最も優先度が高い課題は、「営業に結びつけるリード作りの最適化」(調査した企業の44%以上が回答)でした。つまり、いかに効果的に営業に結びつくリード作りができる体制を整えていくかが、営業の現場で大きな課題になっています。


この「営業に結びつけるリード作りの最適化」とは具体的にどのようなことを意味するのかについて、同リサーチで以下の点をあげています。


- ニーズがある見込み客や、製品・サービスに関心を持つ見込み客を特定する能力の向上


- 見込み客が特定された場合に、適切なメッセージを作り出すこと


- その適切なメッセージを、見込み客の特性にあった方法で伝えていくこと


- 見込み客が関心をもって導入を考えている場合に、すばやく適切な営業に連絡がいき、最初のミーティングで効果的な話し合いができるように充分な情報を提供すること


- 見込み客が関心をもったけれども、導入までは考えていない場合、見込み客の関心が導入にいたるように育んでいくこと


- 見込みから導入までの一連のライフサイクルをトラッキングして、どのようなメッセージやどのようなマーケティングプログラムが最も効果的であったか、または効果的でなかったか判断できるようにすること


以上の点を有機的に実施できる体制を整えていくことが、「営業に結びつけるリード作りの最適化」といえます。上記の点をみれば分かるように、「営業に結びつけるリード作りの最適化」を行う上で、広報としての役割が大きいと思います。例えば、見込み客にあったメッセージ作りなどはまさに広報の重要な役割です。こうした点を考慮にいれながら、マーケティング部門、営業部門と連携していくことが今後大切になると思われます。


開発と広報との連携

前回、広報と営業の連携が必要であることを書きましたが、今回は開発部門と広報部門の連携について書きたいと思います。エンジニア向けの「組み込みネット」というサイトに載っていた浮谷光明さんが書かれた「広報の役割」 という記事の中で、開発サイドと広報サイドでしっかり連携して、情報のギャップを埋めていくことの大切さを教えてくれています。その中で、開発サイドと広報サイドで情報のギャップがある例として次のようなエピソードを紹介しています。


<以下抜粋>

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以前,あるソフトウェア・ベンダが「新バージョンの製品を年内に発売」というCMを流しました。しかし、実際にはその製品が年内に発売されることはありませんでした。しかも、開発サイドはCMが流されるまで、そのCMの存在さえ知らなかったというのです。

 開発サイドにしてみれば、「そんなCMの話は聞いてない」という状態だったわけです。一方、広報サイドはというと、こちらはこちらで、「開発が遅れているなんて聞いてないよ」というわけで、お互いに「聞いてない」という状態だったそうです。そんなバカなことがあるのかと思いますが、これは実際にあった話です。いったい何が問題だったのでしょうか。

 それは、それぞれの立場の思い込みです。開発サイドとしては、「開発が遅れていることくらい知ってるでしょ」という思い込み。そして、広報サイドとしては、「何も聞いていないんだから、開発は予定どおり進んでいるんでしょ」という思い込み。このようなそれぞれの思い込みが両者の状況認識のギャップを広げていったのです。その結果、広報と開発の間のコミュニケーションに決定的な不ぐあいが生じ、情報は共有されず、そしてそれぞれが希望的観測に基づく孤立した情報しか持っていないということになったわけです。

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以前、自分が担当していたクライアントでも同様のことがありました。同社の米国本社がアメリカで大きな製品発表を予定していて、日本を含め世界中からメディアを招待して大々的に製品発表会を行うことになっていましたが、開催まであと2週間という段階になって製品開発における問題が発生したとのことで、急遽全てのイベントがキャンセルになりました。相当、大規模なイベントを企画していたので、このキャンセルにともなう損害は大変な額になったと思います。原因としては、急に大きな問題が起きたわけではなく、小さな問題点が積み重なったためとのことでした。


このように、開発部門と広報の間の情報のギャップによる思い込みや誤解により、致命的な結果をもたらしてしまいます。これをなくすためには、浮谷さんが言われるように、開発と広報の連携を強めて、「自分が知っていることでも,相手は知らないかもしれない」と考えて必要十分な情報を提供していくことが大切です。