昭和20年代の終わり頃の2月に
寒い寒い冬の、小雪が舞っている頃に
関係者数十人と神の山に入り、
夢で見た大きな松の木のあたりに到着した。
しかし、誰も鎌も鍬も使う人がいない、黙って立っているだけだった。
ばんしは、はふと我に返り、
そうだ
「山の神のお使いとの、お約束した神を探しますが、
もし神が罰を与えるのでしたら、全てこの私に当てて下さい。」
と山々にこだまするくらい
大きな大きな声で山全体に叫んだ。
すると、関係者の人々は安心して作業を始めた。
何か神社の痕跡か、
何か石の様な物があるはずだ、それを見つけるんだと。
しかし、時間は空しく過ぎるのに何も出てはこなかった。
そこで今まで作業を見守っていた、ばんしは
意を決して
「ちょっと、わしに鍬を貸してくれ。」
そう言って山の土めがけて
おもいっきり振り上げた鍬を打ち込んだ。
「カーン。」
山々に響く音がした。
石の彫刻で家の形をした、
縦横70センチ位の、神社の御神体のちょうど屋根の部分に
鍬が当たった音だった。
「あったぞー。」
「ここだ。ここにあったぞー。」
全員駆け寄った。
たったの一撃だった。
何時間、関係者が探しても
見つからず、見かねたばんしが、
たった、ひとくわ打ち込んだ場所に御神体はあったのだ。
不思議な出会いだと思った。
その日から、ばんしは神社の建設費用と
土地の購入費用を捻出する為に
土木作業の仕事をした。
朝早くから夜遅くまで必死で働き
お金を作った。
そして、関係者の心ある人々の寄付も募り、
山の土地を購入し
御神体を安置する場所と、
8畳一間の拝殿が完成し、今の
山の神さまが誕生したのだよ。
と、ばんしは話してくれた。