九段下ビル(解体済) | 出ベンゾ記

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ベンゾジアゼピン離脱症候群からの生還をめざして苦闘中。日々の思いを綴ります。

市ヶ谷駅のほうから、靖国通りを九段下まで下ってくると、日本橋川にかかる俎橋を渡ることになる。マナイタバシと読むんだが、この傍にエメラルドグリーンのビルが建った。しばらく前のことだ。



昨年の晩秋だったか、近くまで行ってみると、これが専修大学の140年記念館という建物であることがわかった。2020年竣工。日建設計。

この一帯は専大関係の施設が10棟ほども固まる、専大の領土みたいなところだが、1号館はまだ明大リバティタワーも法大ボアソナードタワーも無い時代に、伝統校としてはかなり早い時期に採用された高層ビル校舎だった。


その専大140年記念館の足下に、上のような看板が立っている。
こんな地名だったのかと思うばかりだが、通称九段下ビルとあって、なるほどそれならばわかる。

一目で復興建築と知れる有名なビルだったからだ。


1927年、南省吾の設計により竣工。1階は店舗、2階は店主住宅で、3階は貸事務所だった。この形態は復興建築として唯一のものだったとされる。

なお、南省吾の他の作品は不明。


晩年はタイルの剥落を防ぐため常時、ネットに覆われた状態だった。


そして2011年、東日本大震災後に、防災の観点から解体となった。しかたがなかっただろう。


なお、85年のビルの歴史のなかで特筆すべきは、戦前、このビルにタイヘイレコードの録音スタジオが開設され、かなりの数の軍歌や戦時歌謡のレコードが制作されたことか。

知られていない逸話が、まだまだ埋もれていそうである。