先月末におもちゃ病院で、トランジスタ回路セミナーの第4回目を開催しました。
今回は前回までのスイッチング回路ではなく、いよいよ増幅回路の説明に入ります。
いつものように、トランジスタ(バイポーラトランジスタ)の原理の説明と手を動かして
組み立て・実験するハンズオンの形態で、5名の方で講師の私も含め6名で行いました。
題目:トランジスタ電子回路セミナー 第4回 電子回路中級編
日時:8月23日(土) 13:00~15:00
場所:筑紫野市 カミーリヤ 2F 研修室
最初にここまでの復習(トランジスタのスイッチング回路)を行った後、いよいよ
トランジスタの増幅回路の説明に入ります。
題材はマイクアンプです。
秋月で購入した安価なECM(エレクトリックコンデンサマイク)に接続する1石アンプを作って
セラミックイヤホンを鳴らします。
ECMマイクには、数十mVの出力がでますので、これを数十倍のアンプで増幅して、感度のいい
セラミックイヤフォンで音声を聴くというものです。
アンパンマン製品を始めとして、おもちゃにはECMマイクがよく使われているので、これはマイクとアンプ(増幅回路)の動作を勉強するにはいい教材だと考えました。
【前振り】 3種のトランジスタの増幅回路の説明
トランジスタの増幅回路はバイアス方式により、① 固定バイアス回路、② 自己バイアス回路、
③ 電流帰還バイアス回路の3種があります。
下にそれぞれの回路方式を説明します。
固定バイアス回路は、もっとも簡単なバイアス回路です。
前にスイッチング回路を設計した時に、バイアス抵抗をつないでベース電流を流し、
コレクタ-エミッタ間の電圧が0に近くなる、つまり飽和するように220Ωとかを選びました。
増幅回路では、この抵抗を飽和しないように大きな値(図では470kΩ)にします。
こうして、コレクタに1.5Vくらいの電圧が現れるようにします。
これに入力コンデンサを介して、入力信号の電圧でベース電流に重畳し、出力電圧を得ます。
次は自己バイアス回路です。
固定バイアス回路とほとんど変わりませんが、コレクタの負荷抵抗RLからベースへのバイアス
抵抗をつなぐようにしています。
こうすることで、固定バイアスで問題になる熱暴走をある程度抑えることができます。
熱暴走の仕組みは、① トランジスタが発熱する → ② トランジスタのhFEがあがってベース電流
が増加しコレクタ電流も増大 → ③ ますます発熱する
というループで電流値が増し、最悪トランジスタの熱破壊に至る現象です。
負荷抵抗RLの後にバイアス抵抗をつけることで、② コレクタ電流が増す → コレクタ電圧が下
がってベース電流が減る というフィードバックをかけ、少し安定させることができます。
最後は電流帰還バイアス回路です。
前の2つに比べて、部品点数が多く複雑になりますが、最も安定して動作させることが
できる方式です。
今回はまず、2.自己バイアス回路をハンズオンしてブレッドボードを試作して、その動作を
学ぶことにします。
【実習8】 自己バイアス回路でマイクアンプを作る
ECM(コンデンサマイク)を使って、小信号トランジスタ2SC1815を使って50倍程度の増幅を
行い、セラミックイヤホンでマイク音声を聴く回路を作ります。
さきほどの原理図に対して、出力コンデンサが追加になっています。
これは入力コンデンサと同じく直流カットのためです。電圧のみで動作する圧電素子のセラミックイヤホンでは問題ないかもしれませんが、原理の理解と念のためいれています。
また、スピーカを鳴らすためには、電子オルゴールの時と同様にもう一段トランジスタを追加してスピーカを駆動するのに必要な電力を稼ぐ必要があります。
高分子材料の膜があり、これの両側を薄い金属で覆いコンデンサのようにしています。
1kΩをRLとしてマイクの (+) 側に接続します。(デカップリングコンデンサは省略)
次にトランジスタ回路のベース抵抗100kΩ、コレクタ抵抗RL 1kΩ、エミッタ抵抗 10Ωの設計
方針と設計内容について説明します。
このパワポの資料に設計内容は書いてますので、概要だけ。
それで負荷抵抗RLは1kΩにしました。
電源が3Vなので、RLに1.5mA流れると両端に1.5V現れ、このトランジスタの動作点は電源の
ちょうど半分の1.5Vになります。(RE 10Ωは小さいので無視します)
さて、Ic=1.5mA流すのに必要なベース電流はどれくらいでしょうか?
今回は -Y を購入したので、増幅率は中央値のhFE = 180として計算します。
なので、ベース抵抗にかかる電圧は1.5-0.7=0.8V、オームの法則で R=I/E 8.3u/0.8≒ 100kΩ
と分かります。
ここまで、ついてきていただけたでしょうか?
最後にエミッタ抵抗 REと増幅率の関係を説明します。RE=0Ωの時はどうでしょうか?
エミッタ内部抵抗はVT(熱電圧25mV)/Ic(コレクタ電流)なので、Ic=1.5mA時≒16.6Ω
したがって、RE=0Ωのときの電圧増幅率AV=1000/16.6≒60倍になります。
RE=10Ωのとき、電圧増幅率AV=1000/26.= 37.6倍
RE=100Ωのとき、電圧増幅率AV=1000/116.6=8.6倍 ということになります。
次の電流帰還バイアス回路で説明しますが、REをつけることでベース電流にフィードバック
がかかるので、増幅率は落ちますが動作は安定します。
【負荷曲線の確認】
まずは、2SC1815のデータシートからVCE特性の図を持って来ます。
Ibを各値で固定して、VCE電圧を可変させた時のコレクタ電流Icをプロットしたものです。
といっても、東芝の本家のVCE特性はIb大電流時のカーブしかありませんでしたので、
秋月の中華製の2SC1815のパチモンのデータシートを持って来ました。
まず電源電圧3Vと負荷抵抗1kΩから、Y軸の3mAに点をとり、そこから負荷線(ロードライン)を引きます。 この線とトランジスタの特性曲線が交わる場所が、実際の動作範囲になります。
次に電源電圧の半分、1.5Vの位置に赤丸をつけて動作点を決めます。
この図では、ちょうどベース電流 Ib=6µA と 12µA の中間あたり、Ib=9µA付近になります。
ここで入力信号が ±5mV 入ったとします。
ベース側から見た入力インピーダンスは約1kΩ程度なので、ベース電流は ±5µA 変化します。
このとき負荷線上で交点を読むと、VCEに現れる出力は 1.5V を中心に ±0.3V 変化します。
つまり ±5mV の入力が ±0.3V に増幅されて、増幅率は約60倍となり、設計値とほぼ一致していることがわかります。
ブレッドボードを作ってから、眠たくなるような理論の説明を行いました。(スミマセン)
さて、実際にマイクアンプを動かしてみましょう。
マイクに音を入れると、イヤホンから音が大きく聞こえるでしょうか?
う~ん、何人かはOKですが、何人かはどうもうまくいかないみたいです。
ブレッドボード上の部品の接続を確認してみます。 あっ、動くようになりました。
どうも抵抗値を間違っていたようですね。100kΩのところに100Ωがつながっていました。
ベース電流が流れ過ぎて、VCEが小さくなり音が小さくなっていたようです。
これでは、スイッチング動作のときと同じ動作ですね。(少し聞こえるのがビックリです)
VBEも測定して、0.7V近辺になることを確認します。
最初はRE=10Ωが入っているので、電圧増幅率AV=1000/(10+16.7)≒ 40倍
これを100Ωに変えてみましょう。今度はAV ≒ 9倍 なので、あまり大きな音が鳴りません。
RE=0Ωにすると、先ほど説明したように 約60倍になります。人間の耳でわかるでしょうか?
電流帰還バイアス増幅回路のハンズオンは次回に持ち越しです。
過去のセミナー
おもちゃ病院でトランジスタ回路ハンズオンセミナーを実施しました(第1回)
おもちゃ病院でトランジスタ回路ハンズオンセミナーを実施しました(第2回)
おもちゃ病院でトランジスタ回路ハンズオンセミナーを実施しました(第3回 前半)
【おもちゃ病院】トランジスタ回路ハンズオンセミナーを実施しました(第3回 後半)










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