今回のセミナーの様子
11月末に おもちゃ病院のドクター向けトランジスタ回路セミナーの第7回目を開催しました。
前回はおもちゃにもよく使われる、赤外線リモコンの原理を説明しました。
今回は、まとめとしておもちゃ病院のドクターの便利ツールを作ります。
大分おもちゃ病院より頒布いただいたスピーカチェッカを題材にしました。
いつものように、手を動かして組み立て・実験するハンズオンの形態で、
4名の方が参加、講師の私・協力頂けるベテランドクターも含め6名で行いました。
題目:トランジスタ電子回路セミナー 第7回 電子回路中級編 スピーカチェッカを作る
日時:11月29日(土) 13:00~15:00
場所:筑紫野市 カミーリヤ 2F 研修室
まず、かるくスピーカチェッカの仕様の説明、回路図、部品リストを説明しました。
中華のCH32V003A4M6 16ピンCPUを使って、つつじが丘おもちゃ病院大泉院長の
電子オルゴールをベースにカスタマイズされて、
① スピーカチェッカ、② マイクチェッカ、③ 導通チェッカ、④ LEDチェッカ、
⑤ 断線チェッカ と多機能なチェッカを提供されています。
電源をONすると、① スピーカチェッカですが、スイッチを短く押すたびにモードが切り替わります。
黄色LEDの点滅の回数でモードが分かるようになっています。
静電式タッチスイッチの説明
今回のチェッカは多機能ですが、⑤ 断線チェッカ が特に気になる機能です。
いままで、キーボードを使ったおもちゃのメンブレンスイッチの配線が切れている場合
どこで切れているかを検出するのが大変だったんです。

これを使えば、キーボードマトリックスの根本につないで、配線上に指を動かしていき
ピー音が消えたところで配線が切れているのが分かります。
こんなおもちゃに使います
このチェッカでは、タッチスイッチとしてTTP223というICを使っています。
セミナーなので、どんな原理で動作するかをさらっつと説明しました。

タッチスイッチの電極は数PF~10PF程度の静電容量を持っています。
この電極に、10~100mS置きに、1mSくらいでON/OFFしてチャージ/ディスチャージします。
ディスチャージするときには、適当な抵抗値を持たせます。(プルダウン抵抗を使う?)
すると、OFFの時には τ=CRの時定数で電圧が下がっていきます。
ここで、電極に人間の指が近づくと、人体のC2が加わってτ=(C+C2)Rになり、時定数が大きく
なります。そこで、図のタイミングで電圧をAD変換すると電圧の違いでON/OFFの判別ができます。
静電スイッチの説明
電極の静電容量とON/OFFの閾値の設定がキモになると思います。

TTP223の使い方については、下記の記事を参考にされてください。
電子工作 その11(タッチスイッチ:TTP223の使い方を学ぶ)
マイコンで静電式タッチスイッチを実現する方法として、CVD方式というものがあります。
その詳細はMicrochip社のAN1478 を参考にしてください。AN1492も参考になります。
制度を上げるため、計測用の電極とリファレンス(使わない)電極の2つを使うようですね。
前に説明した方式でも、何度か計測を繰り返してノイズを除けば実用になるようです。
あまりよく知見がない世界ですので、あまり話すとボロがでますので、この辺にしましょう。
次に今回のセミナーの本題、表面実装部品の基板へのはんだ付けの説明に入ります。
みなさん、半田付けをしたことはありますが、小さいチップ部品の実装の経験は少ないよう
でしたので、まずは座学からです。

ネットで調べた中で、色んな所から写真を使わせて頂きました。ご提供ありがとうございます。
抵抗やコンデンサは2極しかないので、そんなに難しくないですが、他ピンのICになると
難しくなります。 位置決めがいちばんのキモになります。
また、フラックスや半田吸い取り線も必須アイテムになります。
ブリッジが発生したときの除去方法もレクチャーしました。

ベテランは、フラックスと半田ごてでさっとなぞって半田を除去するのですが、
慣れない我々は、フラックスと半田吸い取り線を使うのが安心です。
【閑話休題】
さぁ、スピーカチェッカの組立を開始しますよ。
TTP223 6P ICはSOP23-6 で一番小さいので、前もって実装して置きました。
半田付けが得意な参加者さんはフルキット希望なので、TTP223も自分で実装します。
まず、セミキットを希望する参加者さんの基板を使って、CH32V003 16P ICの実装を
実演します。

自分はICを半田付けランド(PAD)に置く前にフラックスを塗ります。
PADに半田が流れやすくなります。少しべたついて、ICも動きにくくなりますしね。
ICを16個のPADの中心に置いたら、養生テープ等で固定するといいですね。
それから、一番はじのピンを半田付けして仮止めします。ここで位置がズレてないか確認
しますね。
反対はじのピンを半田付けします。そうしたら、位置が固定されますね。
ここでも、フラックスを塗ったほうがいいですね。ICのピンにハンダが流れやすくなります。
それから、次々にピンを半田付けしていきます。
コテ先はあまり細いものより、少し太いものが自分は好みです。
さぁ、できました! ここで安心しないでルーペで半田付けを確認します。
ダメ押しで各ピンに再度半田ゴテを当てて、ICピンとPADに半田を流すのもテクの一部です。
0.5mmピッチ100Pとかになると、一部ついてないことがよくありますので。
さて、ここで皆さんの実習の始まりです。
2時間くらいで、半分の参加者さんが動くようになりました。
予想より、手伝いは少なくて済みました。みなさん、意外とお上手です。

時間が来たので、のこりの半分の方は残念ながら家に持って帰って宿題です。
大分おもちゃ病院の森様のお陰で、表面実装部品の半田付け練習も含め、有意義な
セミナーを実施することができました。面倒な対応、本当にありがとうございました。

さて、これで4月から始めたおもちゃ病院ドクター向けトランジスタ回路講座も終了です。
来年は何を題材にしましょうかね?
TINYAVRマイコンを使ったCOB換装の組み込み講座でも開きたいのですが、
ラジコン、マイコン、デジタル回路? 教える側も面白い内容がいいですね。
今回作成したセミナー用のテキストは、下に置いておきます。
つつじが丘おもちゃ病院さんの静電タッチセンサのリンクは下記です。
コメント等でアドバイスを頂けますとさらに助かります。
それでは、おやすみなさい
過去のセミナー
おもちゃ病院でトランジスタ回路ハンズオンセミナーを実施しました(第1回)
おもちゃ病院でトランジスタ回路ハンズオンセミナーを実施しました(第2回)
おもちゃ病院でトランジスタ回路ハンズオンセミナーを実施しました(第3回 前半)
【おもちゃ病院】トランジスタ回路ハンズオンセミナーを実施しました(第3回 後半)
【おもちゃ病院】トランジスタ回路ハンズオンセミナー(第4回)を開催しました
【おもちゃ病院】トランジスタ回路ハンズオンセミナー(第5回)を開催しました
【おもちゃ病院】トランジスタ回路ハンズオンセミナー(第6回)を開催しました