こんにちは。

トレイルランナーズ大阪の安藤大です。

 

 

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第1回ベトナムトレイルマラソン Vietnam Trail Marathon3~レース編。

 

ベトナムのトレイル上からは写真のように美しい雲海を楽しむことができた。

 

(スタート前)

レースは、ホテルを3時にバス出発し朝4時のスタート。バスはホテルの前からのスタートなのでランナーはぎりぎりまで部屋でゆっくりできる。昨晩はレースの開会式が終了したのが8時、9時には就寝したものの、起床は午前2時で睡眠時間は5時間と寝不足だ。それはほかのランナーも同じ条件だ。

 

海外レースでは時差や普段と異なる環境(ベッドに枕、騒音)であることも多く、きっちり睡眠を取ることができる方が少ない。

 

日本を発つ5日ぐらい前に、トレイルランニングの講習会で「こういう走り方をしたらダメですよ」と悪い手本を見せようとしたら、尖った石に右足の側底部をぶつけ、イタタ…その時はじんじん痛いぐらいだったのが、帰宅して靴下を脱いでみたら腫れていた。これまでランニングのケガは一切なく、トレイルで転んだことさえ少ないが、こうした些細なミスはある。すり傷や打撲、ねん挫ぐらいはケガに入らない。別に死なない。死ぬこと以外はかすり傷だ。

 

僕は軽量で耐久性の低いシューズを好んで履く。軽量性と耐久性は相関し、軽くて履きやすければ耐久性は低くなる。こうしたケガのリスクが起こるかもしれないことをわかった上で僕は軽量のシューズを履いている。物事には常に良い面と悪い面、表裏一体がある。

 

レース前にドイツ製フォームローラーで足をよくマッサージ。ほどほどに張ったフレッシュな足でレースに臨みたい。軽くて持ち運びしやすく本当に便利だ。いつも持ち歩いている。

 

レース後は、必ず足裏をマッサージする。最近では、「フォームローラーでマッサージをすればトレーニング効果が半減する」「マッサージの効果は一時的」といった研究もあるようだが、体感としてレース後すぐ入念にマッサージをすると足の疲労残りが明らかに違う(その日のうちには普通に歩くことができるようになる)。

 

自分の足をマッサージをしながら「足裏のアーチがだいぶ落ちているなあ」「前ももがだいぶ張っているなあ。泥んこの下りでブレーキをかけすぎたから?」と筋肉の疲労度をチェックするのも楽しい(こうした身体の声を聞く習慣を持つことが20年間何のケガもないことに繋がっている)。自分の体の声を聞くとはよく言われることだが、自分から耳を傾けなければ身体は答えてはくれない。具体的にはトレイルを走った後にすぐシューズの泥を落としたり、こうして自分の足をマッサージしたりするなどだ。長距離ランニングレース後は足裏のアーチが疲労により落ちているので、ケアが不十分な状態でランニングを再開するとケガにつながりかねない。

 

レースはスタートラインに立つ前からすでに始まっている

(レーススタート)

今回も無事にスタートラインに着くことができた。仕事に体調管理、身体のケアに旅のトラブル回避…それらを無事に乗り越えた者がスタートラインに立つ。レースは号砲が鳴ってから始まるのではなく、スタートする前から始まっているのだ。

 

今日もスタートライン中央最前列だけは空いていた。セミナーや勉強会に参加をする時でもどれだけ満員会場でも最前列はいつも空いている。僕はいつものように一番先頭に並んだ。僕が最前列に並ぶのは、自分が何人の選手に追い抜かれたのか、現在どのぐらいの順位位置をキープして走っているのかわかりやすいからだ。あとは最前列中央に立ってスタートをすれば必ずその年のレースのプロモーションビデオに映るからね(笑)

 

(レーススタート!)

「3、2、1、スタート!」大会主催者がカウントダウンをし、レースが始まった。さあ、お手並み、いや足並み拝見としよう。ボクシングのジャブは僕から出す。しかし、決してスタートダッシュをするなどバカげたことをしない。ほどほどのペースで400m、500m…僕がずっと先頭を走っている。追い抜かす選手はおろか、横にも誰も並んでいない。

 

「(遅すぎる。いったいみんなどうしたんだ!?)」このまま一人で先頭を走り続けるのは不安になって、慌ててキロ6分にまでペースを落とすと、ようやく追い抜かれ始めた。よかった。

 

 

「1、2、3、4、5、6…6人か。」

 

 

僕と同じペースかそれ以上に速い選手は6人いることがわかった。一人一人の走り方や息づかいをチェックする。コースの距離が30kmだろうが70kmだろうが、スタートして最初の10分で、今日はどのぐらいの記録や順位でゴールするのだろうなとだいたいわかる。これは700日以上トレイルランのイベントを運営し経験を積み重ねてきたおかげだろう。

 

うち1人の男性ランナーには到底追いつけないことがわかった(24歳でフルマラソンの自己記録は2時間30分のトライアスロンアイアンマンの契約アスリートだった。その後彼は優勝した)。あとの5人にはどうにかついていくことができそうだ。視界に見える範囲で無理のないペースで進んだ。

 

4km地点を過ぎて、1kmで獲得標高差400mの急上りに差しかかった。レースの序盤に急上りがあると多くのランナーは文句を言うが、僕は平坦なコースでオーバーペースになりすぎてしまうよりはすぐに一息入れることができ、これからのレースコースについて一度考えることができるので、序盤に急上りは大歓迎だった。

 

上りで自分のペースに合った男性がいたので、その後ろにぴたりとついた。上りも下りも自分のテンポにあった人の後ろにつくとスピードが上がる。これを「同調」という。1人で走るよりも2人、3人で走った方が楽なのだ。ただし、同じリズムの人でないといけない。

 

まもなく上りが終わり下りに差しかかったというところで、男性の息があがってペースが落ち始めたので、「(ぺーサーありがとう。おかげで楽ができたよ)」そう心の中でつぶいて、先へ進んだ。再びこの男性と会うことはなかった。レースではこのような一期一会がよくある。

 

暗闇の中を走っているとコース上に牛がおり、ランナーが通過するたびに「モ~」と鳴く。「モ~、モ~」その牛の声がすぐ近くにランナーがいること、距離をご丁寧に教えてくれる。牛が鳴くたびにプレッシャーがかかる。教えてくれなくていいのに。前半の急上り区間で他人のペースでゆっくりとしすぎたのか、走れど走れど先頭集団の姿が見えない。ほかのランナーから追われている気分はするのに、前を走るランナーは見えない。これは嫌な気分がした。

 

レースが行われるモク・チャウは、梅の花が有名だ。はじめ日本の桜のように見えたが、花のつぼみが小さい。地元の人に聞けば、梅だと知った。

 

image

伐採した梅の木を後ろに積んだバイクが道路を行き交う風景は一種独特だ。

 

(11.0km地点、18.5km地点)

給水所はノンストップの無補給で通過。「日本山岳耐久レース(ハセツネcup)スタイル」だ。水分や食料をなるべく自分で携帯をし、給水所を利用しないレース戦略をそう呼んでいる。

 

いつも勝負レースでは給水所はほとんど利用しない。「給水所で何をどのぐらい補給するのか」そう考えるだけで脳は疲れるし、一番の理由はランニングのリズムを崩したくないからだ。「この大会に給水所はない」と考えてしまえば気が楽だ(実際には70kmもの長距離の水分を自分で携帯することは不可能なので水分だけは補給している)

 

僕は足の速いランナーではないので、休憩しないことで他人と差をつけたい考えだ。その分のんびりと景色を楽しみながら余裕をもって進みたい。5分、6分あれば平坦な道であれば1kmもの差がつく。ほとんどのランナーは休憩が大好きだからだ。

 

18.5km地点の給水所を通過する際、女性スタッフから「5番よ!頑張って!」と応援された。「5番?前には4人しかいないの?」もっとランナーがいるかと思っていたので驚いた。

 

給水所ではコース上のチェックポイントでは通過した証明として、自分のサインをしなければならない。サインされた数を見れば、自分の前に何人の選手が通過したのかがおよそ知ることができる(昔は時刻の記入も必要でそれで前を走る選手との時間差までわかったのだが現在記入はしなくてもよくなった)。

 

「(退屈だ…)」

 

前にも後ろにもランナーがおらず一人旅だった。最近はレースに出ればいつもこうだった。

 

「(今日のレースもこのまま追い抜くことも追い抜かれることもなく、一人でコースの試走をするようにレースが終わるのか…)」

 

そう寂しく思いながら一人走っていた矢先、

 

 

「いたーーーー!!!あれは、ジョー・ミーク!?その前に男性が一人」

 

 

今回のレース中でテンションが最高潮に達した瞬間だった。100kmのウルトラマラソンを7時間台で走るロードの女子世界トップアスリートに追いつくとはまさか思いもしなかった。それも序盤の20キロ地点でだ。

 

まるで宝物を発見したみたいに、僕は心の中で喜び叫び、両手でガッツポーズをした。

 

「あの2人をパスできれば暫定3位、4位?」

 

そう考えると興奮した。後編へと続く。

Never Stop Running.

 

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