追記3あり『Perfume 4th Tour「LEVEL3」』東京公演のマニアックな話題をいかが | 音楽三昧 ・・・ Perfumeとcapsuleの世界

追記3あり『Perfume 4th Tour「LEVEL3」』東京公演のマニアックな話題をいかが

『Perfume 4th Tour in DOME 「LEVEL3」 supported by チョコラBB』の全日程が終了し、日常に戻りつつある方々もいらっしゃると思う。




それで今回のエントリーはこのBLOG恒例のLive終了後のこのネタだ。しかし、このネタのニーズがどれぐらいあるんだろうか(苦笑)。


まあ、オレ自身用のアーカイブとしても使えるので(笑)。









○音響staff関連



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『Perfume 4th Tour in DOME 「LEVEL3」 supported by チョコラBB』の主要な音響関連staff(公式パンフレットより)


○ F.O.H engineer ・・・ 佐々ふみ[MSI JAPAN]
○ Monitor engineer ・・・ 小林雅彦[MSI JAPAN]
○ System engineer  ・・・ 名取由紀、足立充[MSI JAPAN]
○ Sound coordinator ・・・ 村田孝[MSI JAPAN AGENCY]



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今回の公演も、過去のPerfumeのLive音響を担ってきたメンバーで固められている。



もういまさら説明の必要も無いと思うが、長年PerfumeのF.O.Hを担当する佐々ふみ氏を筆頭に、メンバーが装着するイヤモニへ響きを届けるモニターのエンジニアリングは、『2008年・武道館公演』から一貫しての小林雅彦氏。


そしてシステムのエンジニアリングは、『JPN Tour(2012年)』から名取由紀氏が参加し、今回から新たに足立充氏が参加している。



そしてこれらの音響staffを統括するのが、やはり『2008年・武道館公演』から一貫しての村田孝氏と "鉄壁の布陣" で臨まれた。











○F.O.Hスピーカー関連


このBLOGをお読みになっている方々の中で東京公演に参加した人は、入場するとディレイスピーカーが設置されていたことから、今回はMartin Audio社の "PAシステムの革命的進化"とも言われる、次世代SRスピーカーシステムの 『MLA』(Multi- cellular Loudspeaker Array)が用いられていないことにお気づきなって、落胆した方々もいらっしゃるかもしれない(苦笑)。


しかし個人的にはそれほど落胆しなくても良いと思った。その理由としてはPerfumeのワンマンLiveでは初となる機材が投入されていたからだ(ちなみに、おちおちさんの情報では大阪公演でも『MLA』は導入されていなかったようで。おちおちさん、情報ありがとうございます)。 








さてオレは最終日の座席がアリーナB17だったため、入場してすぐさまにリギングされているSRスピーカーに目が釘付けになった・・・ リギングされている個々のアレイを構成している、1個のエンクロージャーの真ん中が仕切られていて、2区画に分かれている。ということは、もう "あれ" しかない。 そう、





L-ACOUSTICS社の最新鋭ラインアレイスピーカーである『K-1 System』が贅沢にも投入されている!!!





ちなみに『K-1 System』が採用されたのはPerfumeのワンマンLiveでは初のことであり、オレとしてはある意味、記念すべきことだと考えている(笑)。これまではPerfumeのLiveでは定番となっていたL-ACOUSTICS社『V-DOSC』だった。






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*L-ACOUSTICS社の『K-1』のシステム構成


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 2010年の『GO!FES』の際に投入された『K-1 System』






それで今回のF.O.H用スピーカーのシステムプランニングは、まずメインがステージ正面の両サイドに各2本ずつリギングされ、合計4本の『K-1 System』を投入していた。さらにその外側に両翼のオーディエンスのカバレッジ(対象範囲)を確保するため、サイドフィル・スピーカーが2本リギングされていた。

またグランドの内野付近に左右ともタワーが設営され、ライトやプロジェクターが設置されていた。そのタワーにディレイ・スピーカーがリギングされていた。






ちなみに、サイドフィル・スピーカーとディレイ・スピーカーは共にACOUSTICS社『V-DOSC』だった。




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Sub-Wは座席の関係上、視認できなかったが『K-1 System』のものがグランドスタックされていたと思われる。








さて旧世代のラインアレイスピーカーはリスニングエリアの音響特性を考慮して、エリアごとにその設定を最適化するということまではできないものだった(『V-DOSC』も後期モデルでは最適化できるものもあるようだ)。



*旧世代のラインアレイスピーカー










一方、今回採用された『K-1 System』ではリスニングエリアを3エリアに分割して、各エリアごとの音響特性の最適化がはかれる。したがって響きの明瞭性が向上した。特に高音域はフラットでスムーズな響きを達成している。さらにHard Avoid性能(過剰な反射を防ぐ性能)も向上しており、反射や残響を適切にコントロールできる。




*『K-1 System』















○コンソール関連


開演の前にF.O.Hブース付近を散策し、コンソールやラック、アウトボード類をチェックしてみた(笑)。


F.O.H用ミキシング・コンソールはイギリスの老舗の最高級ミキシング・コンソールのメーカーである "MIDAS社" 『XL4』を用いていた。




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 *MIDAS社の『XL4』





このコンソールは『代々木Live(2009年)』、『⊿TOUR(2009年)』、『JPN TOUR(2012年)』に採用されていたものと同じであり、PerfumeのF.O.Hを長年担当する佐々ふみ氏(MSI JAPAN)の御用達だ。




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*代々木Live時のミキシング・コンソール

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*⊿TOURの横浜アリーナ追加公演最終日のミキシング・コンソール




ちなみに "MIDAS" のロゴを見るだけで、音響マニアは涎が出るだろうなぁー(笑)。"MIDAS"のミキシング・コンソールはアナログ・コンソールとしては最高峰と言われている。









ラックやアウトボード類は視認できなかったが、おそらくメインとSub-W、サイドフィル、ディレイなどの各スピーカーを管理するのは、DOLBY社の「Lake Processor」だと思われる。



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 *DOLBY社の「Lake Processor」


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 *PCのコントロール画面はDOLBY社の『Lake Processor』のインターフェイス。『⊿TOUR』・DVDより







これを用いて、タイムアライメントなどの音響管理を行っていたと思われる。















○今公演の音響傾向



"東京ドーム公演は音響が悪い" と、どうしても揶揄されてしまう(苦笑)。


まあ、音圧の不足でこのように揶揄されてしまうのだろうが、そのように思ってしまう方々は "東京ドームの音圧レベル規制" を知らないんだろうなあ(苦笑)





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村田孝[MSI JAPAN] : 前省略・・・ 『東京ドーム』はこれまで何度も経験していますが、規制値が100dBのところをピークで、105dB入ると必ず周辺のどこからかクレームが入ります。


                                                『PRO SOUND』2012年8月号より

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オレの場合はクルマのオーディオでは、リスニングポジションでの音圧レベルはピーク値で110~115dB前後で常に聴いているので、100dBではたしかに物足りなさを感じることは否めない。



しかし地方の方はご存じない方々もいらっしゃるかもしれないが、東京ドームの周辺を散策するとすぐそこにマンションなどの住宅がたくさんある。オーディエンスにとっては極上の響きでも、近隣住人の立場からすると "ただの騒音" でしかないだろうからなぁ・・・(苦笑)。これは東京ドームに限った話ではなく、日本という狭い国土で行われるLiveというものは、そのような配慮をしつつ行わないと、近隣住民などの反対からどんどん実施が難しくなるだろう。

では東京では近隣への配慮を考えなくても良いベイエリアに、ドーム級の大規模施設を作って行えば良い・・・ って(苦笑)。ドーム級施設に集った大量のオーディエンスを捌ける公共交通機関は、今のところ東京のベイエリアには無い。そしてそんなに簡単に大量の輸送手段が構築できる訳でもないだろ(苦笑)。そういうことはインフラと一体で考えないと。防災上の問題もあるだろうし。


そういう意味では確かにMartin Audio社の『MLA』を導入すれば、ある程度はオーディエンス満足感も得られて、近隣住民への配慮にもなるとは思う。







さて24日のオレの座席はスタンド1F・1塁側後方で、やはり音圧の不足は否めなかった。


また「1mm」のパフォーマンス時ぐらいまでは、メンバーの歌唱と音源のミキシングの状態を探っていたためか、響きの傾向が安定していなかった。東京ドーム公演はF.O.Hエンジニアは近隣のクレームなどを考慮して、序盤は手探り状態なんだろうと思う。

これは、このエリアがディレイ・スピーカーの『V-DOSC』でカバーされていたこともあってか、メインの『K-1 System』と比較すると若干の力不足も影響しているのかもしれないと思った。しかし「1mm」を過ぎると明瞭性などが安定するようになっていった。

特にMC時の会話のクリアさは素晴らしかった。特筆すべきは遅延の少なさだ。タイムアライメントなどの設定が功を奏したのかもしれない。





それで最終後の開演前に、オレは初日の感想を大阪公演に参加した音響仲間に話した。彼は大阪公演はスタンド、東京公演初日もスタンド1F後方だったそうで。その彼の話によるとF.O.Hは大阪公演よりも、東京公演のほうが健闘しているということだった。

その傾向としては大阪公演ではMC時の会話が聞き取り難かったそうで。このような響きの傾向は座席にも左右されると思う。しかし東京ドームの方は音響対策などのノウハウが、長年に渡って蓄積されている。それが有利に働いているのかもしれないと思った。








25日の最終日の座席はアリーナB17であったため、メインの『K-1 System』の真正面だった。音圧は十分で、このシステムの特徴である明瞭性の高い、伸びのある高音域が楽しめた。

また音源の残響も著しく少なく、Hard Avoid性能がきわめて高いことが分かった。音源の残響が少なすぎて、むしろオーディエンスの手拍子の残響と遅れが余計に気になった(苦笑)。しかし『K-1 System』って本当に凄いなぁ・・・。その良質な響きの中で「Party Maker」ではオレは興奮してしまって・・・ トリップしてしまった(笑)。



オレは2010年の『Perfume LIVE @東京ドーム』に参加した際もアリーナだったのだが、その際のF.O.H用スピーカーはすべて『V-DOSC』であった。その時の響きの傾向と今公演を比較すると、格段の向上を実感した。したがってアリーナのオーディエンスはかなり良質な響きを楽しめたのではないだろうか。






少し残念に思ったのが、スタンドのカバレッジ用に採用されたフィル・スピーカーとディレイ・スピーカーが『V-DOSC』だったことだろうか。

ただし通常は『K-1 System』で構成した場合は、フィル・スピーカーとディレイ・スピーカーが『V-DOSC』を採用するようなので、スタンダードなシステム構成のようで。ここにも『K-1 System』を導入することで、スタンドのオーディエンスにさらに良質な音響空間をサービスできる可能性がある。ただしそうなるとその費用も高騰することになるだろう。


Perfumeの場合はステージセットやライティング、レーザー演出、ビジュアル演出など、非常に高度なものを使い、当然そこにもかなりの費用がかかると思う。したがって、音響関連にそこまで予算を回せるのかというところだろうか。




繰り返しになるが、そうはいったって2010年の『Perfume LIVE @東京ドーム』の際はすべてのF.O.Hスピーカーが『V-DOSC』だった訳だから、それと比較すると贅沢な話なのかもしれない。したがって今回の公演ではPerfume側は音響関連にも、かなりの予算と力を注いだと評価しても良いと思う。







確かに近隣住民への配慮とオーディエンスの満足度の両方の達成を考えると『MLA』がベストだと思う。しかし両方とも体験したことがあるオレとしては『K-1 System』はかなり健闘していると思った。





むしろ高音域はフラットでスムーズな響きは『K-1 System』の持ち味だと改めて実感し、それを堪能できたと感じられた東京公演だった。













<○追記1・28日am9:20>


上記の音響仲間であるSUNさんからコメントで訂正が入りました。




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あっ上下バッサリと感じたのは東京1日目です。
かしゆかの「2人で喋ってる」感の無さと、あ~ちゃんのピーク兵器(笑)の落ち着きあたり。


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「上下バッサリ感」って東京初日の話だったのね(苦笑)




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残響の少なさも関係あると思いますが、下は150hzを越える辺りまでカットしてるように思えました。

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これはSUNさんと同感です。私の東京初日はスタンド1F・1塁側後方で、高音域はSUNさんがいたエリアほどの減衰感は無かったんですが、確かに低域は150Hz前後の高いところまで減衰を感じ、倍音も絡んでそれらが前半の不安定感と繋がっているような気がしましたね。












<○追記2・28日am9:20>



ちなみにオレのクルマのオーディオのリスニングポジションでは、いつもこれぐらいの音圧レベル(SPL)で聴いている(苦笑)。







東京ドームでの音圧レベルが100~105dB前後と考えると10dB前後の差というところか。 dBは対数(log)をとっているので、聴感としては約2~3倍前後の差だ。


個人的にはLiveは純粋に響きを楽しむためではなく、ステージングやビジュアル、オーディエンスの熱量などの "時間と空間を楽しむもの" だと捉えている。したがってオレはこの辺の話は、もう致し方ないと考えている。














<○追記3・30日am11:27>


Perfumeファンの音質・音圧レベルへの要求度は高い。しかしながら近隣住民への配慮というのもLiveを主催する側としては欠かせない。このオーディエンスの満足度の向上と近隣住民への配慮の二つを達成するのなら、『MLA』の導入がベストだと思う。これはあくまでも音響的視点で語った場合だ。



しかし今公演では導入されなかった。その理由は音響設備費の高騰だけが理由ではないと、オレは考えている。






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ライター : 今回、ディレイタワーを使わずにメインのスピーカー・システムだけで成功されたのですが、営業面も含め、タワーを使わないメリットにはどのようなことがありますか。」



村田孝[MSI JAPAN] : (MLAを導入した場合の)音響費は安価になりましたね。通常のドームクラスですとタワーが4本くらいないと均一にサービスできません。むろんスピーカーも増えますし、タワー自体の準備も含め、やはり経費がかかる。また見切れ席も増えます。すべてマイナス要素です。」

                                                『PRO SOUND』2012年8月号より

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こうなれば主催者側としても『MLA』を阻む理由が無いのだが・・・・ なぜか。






オレは24日の公演時に入場して、ステージ・レイアウトを見たときになんとなく理由が分かった。グランドの内野付近に左右ともタワーが設営され、ライトやプロジェクターが設置されていた。そのタワーにディレイ・スピーカーの『V-DOSC』がリギングされていたからだ。

このプロジェクターは各種のプロジェクション・マッピング演出などで利用され、当然、今公演の演出では不可欠なものだろう。





要するに今公演では "ディレイ・スピーカーを導入するか、否かの以前" に、むしろプロジェクターなどの設置のために、タワーを設営せざるを得なかったのではないのだろうかと思った。



村田氏が語っているように『MLA』がもたらす音響設備費の軽減は、タワー設営を省けることが大きな要素を占めると思う。タワー設営は、タワーそのものの費用もあるだろうが、設営にかかる人件費がかなりのものとなるだろう。

しかし他の要因でタワー設営が不可欠になった場合、むしろ『MLA』を導入すれば費用が高騰するのではなかろうか。




そしてなんてったって『MLA』は次世代SRスピーカーシステムであり、 "MSI JAPAN" ではフラグシップモデルに位置している。システム自体の費用はかなり高額だろう。タワー設営し、且つ『MLA』を導入する・・・・ 公演全体の費用が高騰し、主催者側としては利点が少ない。







「タワー設営が不可欠なんだし、それなら従来の方法でいこう・・・・」







という判断が首脳陣から出てもおかしくないと思う。そのような今公演を包括的な視点から鑑みると、オレは『K-1 System』の導入は非常に妥当なものだと思った。












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