続・Perfume LIVE @東京ドームのマニアックな話題をお一つどうぞ⑨ | 音楽三昧 ・・・ Perfumeとcapsuleの世界

続・Perfume LIVE @東京ドームのマニアックな話題をお一つどうぞ⑨

先週は『Perfume LIVE @東京ドームDVD 』が7万枚を売り上げ、総合部門で首位を獲得し、これで女性グループの歴代DVD首位獲得数で単独トップに立つことで、Perfume界隈は非常に盛り上がった。ここでまた一段落つけると思うのでマニアックなネタでも(笑)。



このシリーズの前回は、下記のようにMonitorとそのengineeringについて触れ、東京ドームLiveの舞台演出における、同期システム利用の可能性を示唆した。




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近年では "ワイアレス・イヤモニ" のステレオ送信が電波法で許可されるようになってから、Monitorの音声をイヤモニでチェックするアーティストがかなり増えた(たしか"ワイアレス・イヤモニ" が登場した初期段階から、Liveで積極的に採用していたのは松任谷由実氏だと思う)。この"ワイアレス・イヤモニ" の発達からMonitor engineerはハウリングのリスクから開放され、またアーティスト側はステージ上を縦横無尽に使ってのパフォーマンスが可能となった。さらに演出上の指示や緊急事態に対する指示も、ステージ上のアーティストに対してリアルタイムに行えるようになった。


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Perfumeのステージングを考えた場合、やはりダンスパフォーマンスを重視し、リズムを明確に把握できるようなイコライジングが、その中心となるだろう。また近年の音楽系Liveの場合、ステージやステージセットの変形・移動やライティングなども楽曲の進行に合わせ、コンピューター制御を用いて、ある程度自動的に、且つ包括的に運用・同期させるシステムを採用することが多い(すべてではなく、重要な "キュー出し" や舞台・ライティングの制御は人間が手動で行うこともあるだろうが)。最近のPerfumeの大規模Live公演の場合も、そのシステムを採用していることが考えられる。


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このような同期システムを採用した場合、ステージ上のアーティストにもシステムとの同期を促すために、Monitorにガイドリズムのクリック音(FM変調の「キコカコ」という音)をミックスして聴かせる場合も多い。しかしこのクリック音を不快に感じるアーティストも多く、「いかに自然に演奏・歌唱の音声とクリック音をミックスするのか」というところも、Monitor engineerの腕の見せどころでもある(ちなみに実際にPerfumeのメンバーがガイドリズムのクリック音をイヤモニで聴いているかどうかは不明)


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このように前回の記事では「実際にPerfumeのメンバーがガイドリズムのクリック音をイヤモニで聴いているかどうかは不明」とは書いたものの、現代の大規模Liveにおける演出を考えると「MonitorにガイドリズムをMixして、システムとの同期をさせているのは間違いない」と考えていた。



そして、その後『東京ドームLIVE写真集』が到着し、そこに収録されている対談内容に"同期システムとクリック音" に関連した記事があった。







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「(かしゆか・前略) 東京ドームで1番悔しいかったことがあって。さっきの、のっちが幕がピュって飛ぶって言ったけど、そのとき『シークレットシークレット』の最初のポーズで止まってなきゃいけなかったんです。「ダララララ」って音が始まってから、振りに入るのに、私、幕が飛んだことに緊張しすぎてイヤモニに「1、2、3、4」ってクリックが入ってきた瞬間、"何だろうこのクリック?!"って思って(笑)。



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ということは、やはり今回の東京ドームLiveにおいて、三人の耳にするMonitorにガイドリズムをMixして、システムとの同期を促していたということになる。



現代の大規模Liveにおける舞台演出は、舞台装置・照明・演出効果などの制御を、音楽信号や時間信号(タイムコード)と一体化させて、そのすべてを包括的に制御できる同期システムを用いることが一般的だ。


その同期方式としてはMTC(MIDI Time Code)や MSC(MIDI Show Control)、SMPTEタイムコードなどが挙げられるが、今回の東京ドームLiveに用いられた同期方式は不明である。(ただしMSCは日本ではあまり普及していない方式であり、用いられた可能性は低いと考えている)



それで下記のような物体を、当日のLive会場で見かけて気になっていた人も多いと思う。


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これは "Moving Light(昔はバリライト(Vari*Lite)と呼んでいたと思う)"というもので、色彩・光量・光の方向等を多数のライトを用いて、プログラミングによって自由自在にコントロールし、遠隔操作が可能なものである。



東京ドームLiveの公演にはMoving Lightの "Operator" としてPRG株式会社所属の梶浦直政氏が担当している。この「PRG株式会社」は舞台演出用のLighting機材の販売・レンタル・演出企画を行う会社である。


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このような "Moving Light"などの照明機器のコントロールやプログラミングを行うためには、専用のコンソールを用いる。"DMX Console" とも呼ばれるものだ。


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上記の画像のPRG株式会社が所有し取り扱う"DMX Console" は、先ほど述べた、MTCや MSC、SMPTEタイムコードのすべての同期方式に対応している。



このように現代の大規模Liveにおける舞台演出は、舞台装置・照明・演出効果、それに加えて音響とその音響効果、さらにステージ上のアーティストにもシステムとの同期が求められ、演出家のイメージしている表現が、総合的且つ包括的に練り上げられ、作り上げられていくのだ。



そしてステージ上のアーティストと演出システムをつなげる唯一の生命線。それがMonitorから聴こえてくる "クリック音" なのだ。


前回の記事であるLiveパフォーマンスにおける "Monitor Engineering" と "Monitor Engineer " の重要性について書いた文章は、皆さんには伝わったのだろうか・・・・・・・・。





○追記

システムとの同期ということを意識して見てしまうと一瞬、「無機質で、アーティストの表現したいものや感情・情熱が伝わらなさそう」と考えてしまいがちだ。


しかしPerfumeのステージングを見ると同期システムを用いるということが、むしろ三人の表現したいものや感情・情熱が浮き彫りになって、際立ってくるような気がする。 そこが "Perfumeの面白さ" の一部であるとオレは考えている。






○追記2

Perfumeの三人はLive中のMonitorとして "モールドタイプ" のイヤホンモニター(イヤモニ)を用いていることは前回の記事でも取り上げた。


Netをブラウズしていたら、カスタムイヤモニターのシェアの80%を握る「Ultimate Ears」の "モールド・タイプ・イヤモニ" 製作のための耳型採取の様子が動画であったので、参考までに掲載しておく。




なんかくすぐったくて、耳の中が気持ち悪そう・・・・(笑)。




○補足


「Monitor」とは・・・

アーティストがパフォーマンスしたサウンドや音声を、アーティスト自らがそれをチェックするために提供される音響のことをさす。現場では通称 "返し" と言われる。ステージ上に複数のモニタースピーカーを配置して提供したり、アーティストが装着するイヤホンモニター(イヤモニ)に提供したりする。演奏者の演奏しやすさ、強いて言えばパフォーマンスの完成度に影響を与えるので、F.O.H以上に重視される。




「タイムコード」とは・・・

時間、時刻情報を符号化した電気信号のこと。同期システムを構築する際に用いられる。




「MIDI(Musical Instrument Digital Interface)」とは・・・

電子楽器の演奏データを機器間でデジタル転送するための世界共通規格。これを拡張して照明や映像機器など、ショーの演出をコントロールする目的で策定されたのが "MSC(MIDI Show Control)" であり、同期システムを組むことを目的として策定されたのが "MTC(MIDI Time Code)" である。



「SMPTEタイムコード」とは・・・

映像、音響機器の同期および編集で用いられる信号形式。同期システムを構築する際に用いられる。




「DMX(DMX512-A)」とは・・・

通信プロトコルの一種であり、主に舞台照明や演出機器の制御に用いられる。照明機器であれば、ライトの光の強弱、Moving Light の位置、動き、形などをコントロールするための通信プロトコルとして用いられ、512chまで対応する。