『Perfume LIVE @東京ドームDVD 』のマニアックな話題をお一つどうぞ | 音楽三昧 ・・・ Perfumeとcapsuleの世界

『Perfume LIVE @東京ドームDVD 』のマニアックな話題をお一つどうぞ

この一週間、Perfume界隈は "ファンクラブ会員限定写真集の発送" から"SMAP×SMAPの出演""東京ドームLive・DVDの発売"、そして昨日はPTAからの"青い封筒"の送付(苦笑) と怒涛のような日々で、ファンとしては嬉しい限りだった。



たぶんこの辺で、ひと段落つくと思うので『Perfume LIVE @東京ドームDVD 』の音響のマニアックな話でも・・・・・・。




『東京ドームLive・DVD』の収録されている音源の"Recording & Mixing"が、未だに「東京ドームLive」のLive会場における音響、いわゆるPAシステムを担当した「MSI JAPAN」とそのスタッフが担当していると思っている人も多いみたいである。


しかしPAシステムにおけるEngineeringと、Liveパフォーマンスを収録する "Recording & Mixing" における Engineering には差異があり、したがってそれぞれ異なった知識・技術・経験が必要となってくる。



そこで今回はLive音源の"Recording & Mixing" における Engineering について書きたいと思う。



では "Recording & Mixing" における Engineering とはどのようなものなのか。




                        ※※※



○Recording とは・・・・・


楽器や歌唱などに合わせたマイクロフォンなどの選定と組み合わせ、その設置とセッティングを行い、マルチトラック・レコーダーにその音声を収録・録音する。

Live音源では会場内に複数のマイクロフォンを設置し、会場の残響音やオーディエンスの歓声や拍手など、そのLiveの臨場感を左右する要素も同時に収録・録音も行う。





○Mixing とは・・・・


マルチトラック・レコーダーなどへ既に収録・録音されている、各トラック音源のバランスに関しての音量調整などがメインの作業となり、ナレーションなどの追加の音声の切り貼りなども行う。

収録・録音されている音源のノイズ除去、Live音源ではオーディエンスの歓声や拍手など除去や抑制・調整の作業を行うこともあり、音質調整のためにイコライザーや各種フィルターなどによる音質補正や、コンプレッサーなどのエフェクターを用いて、音質の調整と色づけなどを行う。

さらにパン・ポットなどを用いて、音像の定位感を明確にすることで、収録音源の完成度を練り上げていく。最終的には複数のトラック音源から "ステレオ2チャンネル" 、または" マルチ・チャンネル(例えば5.1chなど)" にまとめて最終的な録音を行う。





                        ※※※





特に" Mixing " は、各Engineer ごとの特徴が、最も顕著に音色に表れる作業でもある。したがって Mixing Engineer の選定は、その音楽ソフトの仕上がりを大きく左右するため、非常に重要であり、そのキーポイントともなるのだ。


それで今回の『東京ドームLive・DVD』の収録されている音源の、その音質を左右する Recording および Mixing の各作業には森岡徹也氏が携わっている。



森岡氏といえば、たしか過去にCBS/SONY(懐かしい・・・・)のEngineerとして在籍し、「PIZZICATO FIVE」や「ORIGINAL LOVE」などの渋谷系アーティストの Recording & Mixing Engineer として頻繁に活動していた、その人だ。その特徴としては "徹底的にこだわった強い音" だろう。




この森岡氏はPerfume関連の仕事に参加したのは『武道館Live・DVD(2009年度作品)』からである。




                        ※※※


○Perfume 『BUDOUKaaaaaaaaaaN!!!!!(2009年度作品)』 ・・・ DVDのブックレット表記


Recording Engineer ・・・・ 成岡朗(SCI)

Mixing Engineer ・・・・ 森岡徹也






○Perfume Second Tour 2009『直角二等辺三角形TOUR(2010年度作品)』・・・ DVDのブックレット表記


Recording Engineer ・・・・ 宮下真理子(SCI)

Mixing Engineer ・・・・ 森岡徹也




                        ※※※




上記のように『武道館Live・DVD』と『⊿TOUR・DVD』の Recording においては森岡氏は担当せず、Mixingのみの担当であった。


それで『武道館Live・DVD』と『⊿TOUR・DVD』の Recording はというと「SCI」という会社とそこに所属する engineer が担当している。実はこの会社は大型の録音中継車を所有する、日本でも屈指の "Live Recording" の会社なのである。


特にSCIが所有する"大型・録音中継車"である3号車のスペックは特筆すべきものである。


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 *SCIの "大型・録音中継車"である3号車

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 *SCIの3号車の内部レイアウト

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*SCIの3号車のコンソール周辺



SCIの "大型・録音中継車"である3号車は、イングランドの老舗のミキシング・コンソール・メーカーである 「Neve Electronics社(現AMS Neved社)」 "NEVE VR" のコンソールを前後に2台を配置し、あらゆる状況に適宜対応できるスペックである(しかし・・・・ NEVE VRのコンソールを前後に2台を配置している録音中継車って・・・ 凄い・・・・)。





今回の『東京ドームLive・DVD』は "Recording" と "Mixing" の両方の Engineering を森岡徹也氏が担当している。またWOWOWでの放映もあったため、Recordingの機材と、そのCrew は「WOWOW」が中心となって提供していることが、そのエンドロールにて確認できる。また「TAMCO」の人材もその作業に参加しているようである。


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TAMCOというのはSCIと同じく、Live音源の Recording や TV放送の音響分野を担当する会社で(こちらのほうが一般的には知られているだろう)当然、録音中継車も所有している。



WOWOWも録音中継車を所有しているため、WOWOWの録音中継車を用いたのか、TAMCOの録音中継車を用いたのかについては、現時点では不明である(ただしTAMCOのスタッフが参加しているということは、TAMCOの録音中継車を用いた可能性が高い)。


もしWOWOW所有の録音中継車を用いるのならば、スイスの老舗のミキシング・コンソール・メーカーである 「STUDER社」 "Vista5" のフルデジタルミキシングコンソールを中心としたシステムのものであった可能性が高い。

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*WOWOW所有の録音中継車のコンソール周辺




またTAMCO所有の録音中継車である "R-3" を用いるならばドイツの「Stagetec社」の"Aurus Console" のフルデジタルミキシングコンソールを中心としたシステムを用いていることが考えられる。

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 TAMCO所有の録音中継車である"R-3"コンソール周辺


いずれの録音中継車を用いても、最近の"DAWシステム"の業界基準である「Avid Technology社」の "Pro Tools HD systems" のRecorderを用いて、「東京ドームLive」の音源を収録・録音したと考えられる。理由としては Mixing に用いたスタジオが関係している。




収録・録音した音源のMixingには「MARUNI STUDIO(目黒区青葉台)」が用いられた可能性がある。 その理由としては "Assistant Mixing Engineer" としてMARUNI STUDIO所属の加瀬拓真氏が携わっているからである。さらにMARUNI STUDIO にはPro Tools HD systems が採用されており、その作業の親和性が高い。


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 *MARUNI STUDIOのコンソール風景



森岡氏は今回の『東京ドームLive・DVD』の音源を、DAWシステムである Pro Tools HD systems を用いて Mixing を行ったのではないかとオレは考えている。



『東京ドームLive・DVD』における森岡氏のMixing Engineering のオレの全体的な印象としてはLive音源にしてはその音色にしっかりと芯があり、定位感もかなり安定しているように感じた。


また、オレはLive当日はアリーナC5にて参戦したわけだが、やはり東京ドームということもあって、オーディエンスの歓声と拍手、残響音によって楽曲の明瞭性が若干低下しているように感じた。しかし『東京ドームLive・DVD』を視聴すると歓声と拍手、残響音は適度に抑えながら楽曲の明瞭性を高め、且つ臨場感を損なわないようなMixingが施されているように感じた。



『東京ドームLive・DVD』をご覧になった皆様は、今回のDVDの音質はどのように感じただろうか。




○追記

中田ヤスタカ氏の手がける作品のほとんどが、Recording から Mixing、Mastering に至るすべての Engineering を中田氏本人が手がけている(CD音源)。したがって中田氏の楽曲に、Recording Engineer や Mixing Engineer が参加しているということだけでも、妙に新鮮に聞こえる(笑)。




○補足


定位感とは・・・

「その音波がどの位置から発生(音像)しているか」ということで、音響を考える上で非常に重要な要素である。定位感はその音波の発生位置の左右位置や遠近感(奥行き感)などが含まれる。




DAWシステムとは・・・

"Digital Audio Workstation" のことで、デジタル信号で音声の収録・録音、編集、Mixingなど作業が施すことができる一体型システムのこと。最も代表的なDAWシステムとしては"Pro Tools HD" シリーズが挙げられるが、その他としては "Cubase(中田ヤスタカ氏が使用する)" や "SONAR" なども挙げられる。

ちなみにDAWシステムの登場は、Recording & Mixingなどの Engineering に革命を与えたと言われており、機材数が減少し、安価なシステムでも充分なRecording & Mixing環境を提供できることとなった。そのことによってアーティストによるプライベート・スタジオの構築も比較的容易になった。その恩恵を最も受けている一人に、中田ヤスタカ氏の名前が挙げられるだろう。