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私は加藤くんと話すことはほとんどなかった。
たまに教科書を見せてもらったり、
道具を借りたり
そんな時に「ありがとう」「うん」と
言葉を交わすぐらいで、
会話らしい会話はなかった。
サユリちゃんが加藤くんを好きと知って以来、
意識的に話さないようにしていた、
というのもある。
むしろ隣の席であることについて
うっすらと罪悪感を覚えるほどであった。
そんなある日のこと、
2週間がたったくらいだろうか。
先日受けた社会科のテストが返ってきた。
実は私は帰国子女で、
それまでハワイに住んでいた為
「日本の歴史」にめっぽう弱かった。
返却された回答用紙は、
まさかの0点。
あっちゃ〜これはやばい。
気づかないうちに、
心の声がそのまま口に出てしまったようだった。
「やっばい、どうしよ…」
すると加藤くんが話しかけてきた。
「やばいの?」
私は驚きのあまり、
とっさに0点の回答用紙を加藤くんに向けて
「0点とっちゃった!
」
となぜか得意げに見せたのだ。
加藤くんは心底驚いた表情をしていた。
そらそうだ。全然話したことない転校生が
笑顔で0点のテストを見せてきたのだ。
「えぇ
それはやばいね!笑」
あまりの点数の酷さに、
彼は思わずふきだしていた。
それにつられて、
「やばいよね!笑」
と私もふきだしてしまった。
それが初めて交わしたまともな会話だった。
その瞬間、
私は彼ともっと話してみたいと思ってしまった。
当時は、好き、
という感情がよくわかっていなかったが、
彼と隣の先になれた事が嬉しい
明日も話したいな、
と思ったことを覚えている。
「それはやばいね!笑」と
笑いかけられたあの瞬間、
私は紛れもなく恋に落ちてしまったのだ。
