毎日の買い物に欠かせない、スーパーマーケット。
ブラジルではポルトガル語で“スーペルメルカード”という。
発音は似ているようで、でも知らないと
「え?何のカードですか?」
と聞き返してしまうくらい、違う。
*実際、私はブラジル人にこう聞き返してしまった。
本当は英語の“カード”はこちらでは“カルトン”というので、また違う。
食品はスーパーで買う人がほとんど。個人商店のようなお店はほとんどない。
だから、大通りなどではちょっと歩けばすぐにスーパーがぶつかるというくらい、いくつものスーパーが乱立している。
でも、いつもどこのお店も混んでいて、今のブラジルの勢いを感じるところでもある。
(実は、混んでいるのには別の理由もあるようだが。)
中でも大きなチェーン展開をしている人気店が、
スーパー「Zona Sul(ゾナスウ)」。
フルーツ、お肉、チーズ(専用のカウンターがある)や牛乳など乳製品の売り場は、日本と比べてかなり大きな割合で売り場面積が取られている。
*チーズや生クリームのコーナー。他にチーズカウンターもある。
さらに別に、牛乳がびっしり並んだ棚やヨーグルトの棚もある!
この国の人々の食生活が、スーパーを見ただけでなんとなく見えてくるから面白い。
それに、小麦粉やとうもろこしやイモの粉の他、使い方が想像できないような粉類が、数十種類もズラーリと並んでいるのも、
「海外」を感じるところだ。
*手前には米も写っているが、ズラズラーッと粉の類が。
でも魚介類は、普通のスーパーでは冷凍もののサーモンとタラ、小エビくらいしか扱っていないという少なさ。
海に面していて近くに港も市場もあるのに、ほとんどそのまま輸出に回されてしまうほど、
ここでは魚介類は人気がないらしい。
お寿司なら毎日でもOK、子供の頃からアジの干物やイカの塩辛が大好きだった、渋めの“魚介派”の私には、かなり淋しい現実。
その代り、お肉の豊富さといったら、圧巻。
あらゆる部位が大きな塊のままパックに入って棚一面どころか二面・三面にズラリと並べられている。
例えば牛肉なら、ヒレやサーロインから、もも肉、スネ肉、ランプ、それに日本ではほとんど見たことのない尻尾の輪切りや、タンもまるごとベロン。
ちなみに、“薄切り肉”というものはない。そういう使い方をする料理がないからだ。
そして“バラ肉”もない。脂のサシがはいった肉はなく、タンパク質ギッシリの赤身が基本。
だから、すき焼き、しゃぶしゃぶ、そして肉じゃがなど薄切り肉を使う煮物料理は、超難関となる。
一度、包丁でできる限り薄切りにして肉じゃがにトライしたが、
しょうゆ味に煮込まれたブラジル牛の赤身肉は、
こめかみの血管が切れそうなほど …硬かった。
そして、野菜やフルーツは、ほとんどが量り売り。
*南国らしいフルーツが並ぶ。
*手前に見えるロール状のビニール袋に入れる。
奥はチーズのカウンター。
価格表示は「kgあたりいくら」のようになっていて、
買いたいものを買いたい分だけビニール袋に入れて量りのところに持っていくと、
店員さんが重さと種類を入力してバーコード付きの値段シールを出力し、貼ってくれるのだ。
1個からでも買えるし、美味しそうなところを自分で選べるのも嬉しい。
これはとてもいいシステムだと思う。
問題はレジだ。
カートでレジの前まで来たら、中身をカゴから出してレジの台に乗せる。
そしてなんと、空になったカートは、その辺に“放置”しなくてはいけないのだ!
後で店員さんが回収して回るというシステムなのだが、
なんだか悪いことをしているようで、どうしても抵抗を感じる。
それに、カートがあちこちに転がされてるなんて、邪魔で仕方ない。
日本のように、
使ったお客さんがそのまま出口近くのカート置場に戻すような導線を作る方がよっっっぽど効率的では?
と、日本人なら誰もが思うだろう。
*この時は平日の朝だったので少し空いているが、左端に放置されたカートが見える。
中には、やっぱり買うのをやめたらしい肉(要冷蔵)を入れてそのまま放置するつわものもいる。
そしてレジはいつも混んでいる。その理由は、
①買い物客が多いから
②みんながたくさん買うから
…だけではない。
レジのお姉さん(お兄さんもいる)の手際が、スローモーション級のスピードなのだ。
レジを通したあと、袋に入れるところまでやってくれるのだが、途中で「貸して!」と奪い取って自分で入れたくなる時がある。
そして、他の店員さんやお客さんに話しかけられると完全に手が止まる。
あくびもするし、ため息をついたりもする。
最初にこれを目にしたときは
「機嫌悪い?それとも意地悪してるつもり?」と勘ぐってしまったが、これが普通なのだ。
悪気は一切、ない。気分のまま作業しているだけ。
店員さんがこれなら、お客さんもそうだ。お金を出すのも、途中で無邪気に世間話を始めては何度も手が止まる。
これで混雑しない方がミラクルだ!
でも、いざ自分の番になると、なぜかさっきまでのイライラは一瞬で消え、とたんに焦ってしまう…。
まず、レジのお姉さんに
「ゾナスウカード?(はお持ちですか、という意味。このスーパーのメンバーズカードだ。)」
と聞かれる。
(ポルトガル語だと、「カルトン ゾナスウ?」となる)
これが、来た当初の難関だった。なんと言ってるのか、さっぱり聞き取れなかったのだ。
「カ…カートーゾ?カ、ウ……?え?
レジではお金を払うだけのはずなのに、一体これは何について聞かれてるの?」
という状態だ。
それで、3・4回聞き返して、最後には呆れ顔でもういいよ、と大きなため息をつかれて、ガックリ落ち込んだのが この場面だ。
その後も何日通っても答えられず、その都度、レジのお姉さんは首を横に振り、あきらめの表情だった。
そんなスーパーだが、私のような新米の駐在員妻がひとりで出かけられる、唯一の場所。
明日も、張り切ってレジに並ぶとしますか!