英国Edinburgh大学のStephen R Knight氏らは、イングランド、スコットランド、ウェールズの260病院に入院したCOVID-19患者のデータを用いて、院内死亡率が高い患者のリスクを予測する「4C死亡率スコア」モデルを構築して、別の患者コホートで検証し、肺炎の重症度分類に用いられるA-DROPやCURB65よりも、死亡リスクの予測精度が高かったと報告した。結果はBMJ誌電子版に2020年9月9日に掲載された。
国際重症急性呼吸器新興感染症協会(International Severe Acute Respiratory and Emerging Infection Consortium;ISARIC)世界保健機関(WHO)Clinical Characterisation Protocol UK(CCP-UK)スタディは、ISARIC Coronavirus Clinical Characterisation Consortium(ISARIC-4C)によって、イングランド、スコットランド、ウェールズの260病院で行われた。
死亡リスク予測モデルの構築は、2020年2月6日から5月20日の入院患者から得られたデータを用いた。モデルの検証は、5月21日から6月29日までの入院患者のデータを使用した。
入院の初日に取得された人口統計学的特性、臨床特性、転帰に関する情報を収集した。併存疾患は、慢性心臓病、喘息を除いた慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病、軽症から重症までの肝臓病、認知症、慢性神経疾患、結合組織病、糖尿病、HIVまたはAIDS、癌、肥満とした。主要評価項目は、院内死亡に設定した。
死亡リスク予測因子の候補は、肺炎とインフルエンザ様疾患の転帰に影響することが知られている患者特性と臨床特性、または、COVID-19患者の予後予測因子である可能性が指摘されている臨床バイオマーカーで、導出コホートの3分の2以上において利用可能だった要因の中から選出した。
モデル導出コホートでは、3万5463人の患者データが集まった。年齢の中央値は73歳(四分位範囲59~83歳)、女性が41.7%で、76.0%が1つ以上の併存疾患を有していた。コホート全体の院内死亡率は32.2%だった。
患者データから院内死亡を予測する可能性がある候補を41個同定した。それらの中から、データが記録されていない人の割合が高かったものなどを除くと、21の要因が残った。一般化加法モデリングにより、それらの中から8つの重要な予測因子を同定した。ベッドサイドで使いやすくするため、連続変数にはカットオフ値を設定した。罰則付きロジスティック回帰モデルに8要因を組み入れたところ、8つ全てを最終モデル(4C死亡率スコア)に組み入れることが支持された。
具体的には以下の要因で点数を配分し、0~21点の範囲でリスクスコアを計算する。1)年齢は50歳未満0点、50~59歳2点、60~69歳4点、70~79歳6点、80歳以上7点とした。2)性別は女性0点、男性1点とした。3)併存疾患はなしが0点、1個が1点、2個以上が2点とした。4)呼吸数は20回/分未満が0点、20~29回/分が1点、30回以上/分が2点とした。5)末梢血酸素飽和度は室内気で92%以上が0点、92%未満が2点とした。6)Glasgow coma scaleは15点未満が2点とした。7)尿素は7mmol/L以下が0点、7~14mmol/Lが1点、14mmol/L超が3点とした。8)CRPは50mg/dL未満が0点、50~99mg/dL1点、100mg/dL以上2点とした。
検証コホートでは、5月21日から6月29日までに入院した患者2万2361人のデータが集まった。年齢の中央値は76歳(四分位範囲60~85歳)、女性が45.6%で、77%が併存疾患を1つ以上持っていた。コホート全体の院内死亡率は30.1%だった。
4Cスコアの死亡リスク推定能力は高く、ROC曲線下面積は導出コホートが0.786(95%信頼区間0.781-0.790)、検証コホートは0.767(0.760-0.773)になった。検証コホートの較正は良好で、予測された院内死亡率は、実際に観察された数値と同一だった(calibration-in-the-large=0、calibration slope=1.0)。
4Cスコアに基づいて、4群のリスクグループに分類した。死亡リスクが低い群(スコアが0~3点)、中間群(スコアが4~8点)高い群(スコアが9~14点)、非常に高い群(スコアが15点以上)とした。
検証コホートでは、死亡リスクが低い群に該当するスコアの患者が1650人(7.4%)いて、実際の死亡率は1.2%だった。中間群は4889人(21.9%)で死亡率は9.9%、高い群は1万1664人(52.2%)で死亡率は31.4%、非常に高い群は4158人(18.6%)で死亡率は61.5%だった。このモデルの予測精度は、低リスク群では、感度が99.7%、陰性予測値は98.8%だった。陰性予測値は中間群90.1%、高い群では68.6%、非常に高い群では61.5%だった。
4Cスコアの予測精度は、他のリスク層別化スコアよりも死亡予測精度が高かった。必要なパラメーターが揃っている検証コホートの患者データを用いて、ROC曲線下面積を比較すると、例えばqSOFAは0.622(0.615-0.630)、CURB65が0.720(0.713-0.728)、A-DROPが0.736(0.728-0.744)などに対して、4Cスコアは0.774(0.767-0.782)だった。
これらの結果から著者らは、4C死亡率スコアは入院時に入手可能なデータで簡単に計算でき、既存の重症度スコアより予測能力が高いため、COVID-19入院患者に対する臨床意思決定に役立つだろうと結論している。なお、他の母集団にも同様に活用できるかについては、今後の検討が必要だとしている。4C死亡率スコアは、https://isaric4c.net/risk/から利用できる。この研究はNational Institute for Health Researchなどの支援を受けている。