米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のJohn H. Beigel氏らは、COVID-19で入院した成人患者にレムデシビルまたはプラセボを10日間投与する二重盲検のランダム化比較試験Adaptive Covid-19 Treatment Trial(ACTT-1)の最終結果をまとめ、レムデシビルはプラセボよりも回復までの期間を短縮したと報告した。なお、この試験の予備的な分析結果は2020年5月22日にNEJM誌に報告されており、最終報告は2020年10月9日にNEJM誌電子版に掲載された。
COVID-19の治療薬では、ステロイドのデキサメタゾンが死亡率を減らすことが報告されているが、有効性を示した抗ウイルス薬はまだ見つかっていない。レムデシビルはRNAポリメラーゼ阻害薬で、COVID-19の流行初期に、SARS-CoV-2に対する阻害効果がin vitroで示されたため、治療薬候補として有望視されるようになった。
ACTT-1試験を行った著者らは、追跡期間を終了した段階で、5月に発表した予備解析のデータをアップデートして最終報告をまとめた。この試験は、2020年2月21日から4月19日までに、米国(45施設)、デンマーク(8施設)、英国(5施設)、ギリシャ(4施設)、ドイツ(3施設)、韓国(2施設)、メキシコ(2施設)、スペイン(2施設)、日本(1施設)、シンガポール(1施設)で、試験参加者を組み入れている。
対象は、成人のCOVID-19入院患者で、下気道感染のエビデンスがある人。参加者は1対1の割合でレムデシビルまたはプラセボに割り付けられた。割り付け時点の層別化は、参加施設と重症度を考慮した。重症者の定義は、機械的換気を要する場合、酸素補充療法を要する場合、室内気でのSpO2が94%以下の場合、頻呼吸(呼吸数24回/分以上)が見られる場合、とした。
レムデシビルは1日目に負荷用量として200mgを投与し、2日目から10日目までは維持用量として100mg/日を投与した。投与期間は開始から10日目、死亡、退院のいずれかまで継続した。プラセボ群には同じ頻度と用量の生理食塩水を投与した。参加者は割り付け薬に加え、それぞれの施設の標準的な対症療法が適用された。
患者の状態は、投与開始から29日目まで毎日評価を受けた。評価は8段階の順序カテゴリースケールとNational Early Warning Score(NEWS)を用いた。8段階の順序カテゴリースケールは、(1)入院しておらず活動制限なし、(2)入院していないが、活動制限があるか在宅酸素療法が必要、(3)入院しているが酸素補充療法は不要で薬物療法も不要(周囲への感染予防目的の入院など)、(4)入院しており、酸素補充療法は不要だが、COVID-19または他の疾患に対する治療が必要、(5)入院しており酸素補充療法が必要、(6)入院しており、非侵襲的な換気または高流量酸素療法が必要、(7)入院しており、侵襲的な換気またはECMOが必要、(8)死亡、と規定した。
主要評価項目は、登録から回復までの期間とし、28日後まで追跡した。8段階の順序カテゴリーの1~3に該当した時点で回復と判断した。副次評価項目は15日目時点の順序カテゴリースケール、ベースラインからカテゴリ2段階回復するまでの時間、酸素補充療法を受けていた日数、などとした。
1114人の患者をスクリーニングして、条件を満たした計1062人(平均年齢は58.9歳で64.4%が男性)が参加し、541人をレムデシビル、521人をプラセボに割り付けた。参加者の79.8%は北米の施設で登録し、15.3%が欧州、4.9%がアジアの患者だった。主な併存疾患は高血圧(50.2%)、肥満(44.8%)、2型糖尿病(30.3%)などだった。この1062人をintention-to-treat分析の対象にした。
レムデシビル群の患者の98.2%が、実際に割り付け薬の投与を受けていた。割り付けから10日以内に、死亡以外の有害事象により治療を中止していた患者が52人いた。プラセボ群では、99.2%が実際にプラセボの投与を受けていた。割り付けから10日以内に、死亡以外の有害事象により治療を中止していた患者が70人いた。29日後までの追跡を完了できたのは、レムデシビル群の517人とプラセボ群の508人だった。
発症からまでの日数の中央値は9日(四分位範囲6~12日)だった。登録時点で957人(90.1%)が重症と見なされた。うち285人(26.8%)がカテゴリー7に、193人(18.2%)がカテゴリー6に、435人(41.0%)がカテゴリー5に、138人(13.0%)がカテゴリー4に分類された。
レムデシビル群の回復までの中央値は10日(95%信頼区間9-11日)、プラセボ群は15日(13-18日)で、回復率比は1.29(95%信頼区間1.12-1.49)になった。重症だった957人では、回復までの日数の中央値は、レムデシビル群が11日、プラセボ群が18日で、回復率比は1.31(1.12-1.52)になった。回復率比が最も高かったのは、ベースラインでカテゴリー5に分類された患者で、回復率比は1.45(1.18-1.79)だった。カテゴリー4と6の患者は、回復率比は有意な値にならず、それぞれ1.29(0.91-1.83)と1.09(0.76-4.57)だった。また、登録時点で侵襲的換気またはECMOが適用されていた患者では、回復率比は0.98(0.70-1.36)だった。
なお、発症から10日以内に割り付けられた患者では、レムデシビルの回復促進効果が有意だった(1.37:1.14-1.64)。しかし、10日を超えていた患者には、有意差は見られなかった(1.20:0.94-1.52)。
8段階の順序カテゴリーを用いた比例オッズモデルによる分析では、レムデシビル群は、プラセボ群に比べ、15日時点で臨床的に改善している割合が高かった。重症度を調整した後のオッズ比は1.5(1.2-1.9)になった。
カプランマイヤー法を用いて推定した死亡率は、15日時点でレムデシビル群が6.7%、プラセボ群は11.9%、ハザード比は0.55(0.36-0.83)だった。29日時点ではそれぞれ、11.4%と15.2%、ハザード比は0.73(0.52-1.03)だった。両群の死亡率の差は、ベースラインの順序カテゴリーにより異なっており、差が最も顕著だったのはカテゴリー5の患者だった(ハザード比0.30:0.14-0.64)。
8段階の順序カテゴリーが1段階または2段階改善するまでの日数もレムデシビル群の方が有意に短かった。退院またはNational Early Warning Scoreが2点以下になるまでの日数についても同様だった。
酸素補充療法が必要だった日数は、レムデシビル群の方が短かった。また、登録時点で酸素補充療法が不要だったが、その後必要になった患者の割合は、レムデシビル群の方が低かった。登録時点で機械的換気またはECMOが適用されていた患者では、レムデシビル群の方が、これらが不要になるまでの日数が短かった。登録時点でそれらを使用していなかった患者の中で、新たにそれらが必要になった人の割合は、レムデシビル群の方が低かった。
割り付け薬を使用した患者を対象に安全性について分析した。重篤な有害事象は、レムデシビル群の532人中131人(24.6%)と、プラセボ群の516人中163人(31.6%)に認められた。治療関連と見なされた死亡はなかった。グレード3または4の有害事象のうち、治療関連と判断されたのは、レムデシビル群に報告された41件とプラセボ群の47件だった
これらの結果から著者らは、下気道感染が認められるCOVID-19入院患者の回復までの期間は、レムデシビルの方が短かったと結論している


