メトホルミン投与と認知機能低下および認知症発症との関連が前向き観察研究で検討された。メトホルミン服用の糖尿病患者は、メトホルミン非服用患者よりも認知機能の低下が遅く、認知症の発症リスクが低かった。この結果はDiabetes Care誌11月号に掲載された。

 2型糖尿病は、認知機能障害および認知症のリスク上昇と関連することが示されている。一方、疫学研究や最近のメタ解析では、メトホルミンは、認知機能障害および認知症の発生率低下と関連することが報告されている。本研究では、Sydney Memory and Ageing Studyのデータを用いて、高齢の2型糖尿病患者でメトホルミン投与が認知機能低下および認知症発症の抑制と関連するか検討した。

 Sydney Memory and Ageing Studyは、認知症ではない高齢(ベースラインの年齢が70~90歳)の地域住民1037人(白人が98%)を対象とした前向き観察研究である。認知症、重大な神経性疾患または精神疾患、進行癌などは除外した。追跡期間は6年間。2年ごとに神経心理学的検査で認知機能(実行機能、記憶、注意、処理速度、言語、視空間認知の各領域、全般的認知機能[各領域スコアの平均])を測定した。

 研究参加者を、メトホルミン服用の糖尿病患者(DM+MF群:67例)、メトホルミン非服用の糖尿病患者(DM-noMF群:56例)、非糖尿病者(no-DM群:903例)の3群に分け比較した。

 ベースラインの時点で、DM+MF群67例のうち60%(39例)は、メトホルミン服用年数が5年を超えていた。67例中34例はメトホルミン単剤、33例は他の薬剤と併用しており、最も多い併用薬はスルホニル尿素(70%)だった。DM-noMF群56例のうち34例は食事療法のみだった。

 認知機能低下の解析では線形混合モデル、認知症リスクの解析ではCox回帰生存分析を行った。共変量は、年齢、性別、教育年数、BMI、心疾患、高血圧、脳卒中、喫煙、アポリポ蛋白Eε4遺伝子型保有などだった。

 認知機能に関する解析の結果、3群とも加齢に伴い6年間で認知機能は有意に低下していた。全般的認知機能の低下速度は、DM+MF群とno-DM群では同程度だったが、DM+MF群の低下は、DM-noMF群よりも有意に遅かった(P=0.032)。同様に、実行機能の低下速度もDM+MF群とno-DM群では同程度だったが、DM-noMF群ではDM+MF群よりも有意に速かった(P=0.006)。記憶、言語、注意、処理速度の低下はDM+MF群よりもDM-noMF群の方が速かったが、統計学的に有意ではなかった。

 6年間の観察期間中に認知症を発症したのは91例だった。73例がno-DM群(同群の8.2%)、8例がDM-noMF群(同群の14.5%)、4例がDM+MF群(同群の6%)だった。発症率は、DM+MF群よりもDM-noMF群の方が有意に高かった(オッズ比:5.29、95%信頼区間[95%CI]:1.17-23.88、P=0.05)。Cox回帰モデルで、DM+MF群とDM-noMF群を比較したところ、メトホルミン投与により認知症発症リスクが81%低下していた(ハザード比[HR]:0.19、95%CI:0.04-0.85、P=0.030)。DM-noMF群の認知症発症リスクは、no-DM群より3倍高かった(HR:3.03、95%CI:1.17-7.88、P=0.023)。DM+MF群とno-DM群でリスクに有意差は認められなかった(HR:1.74、95%CI:0.52-5.90)。

 本研究の結果は、メトホルミンの神経保護効果の可能性を支持する先行研究の結果と一致するものである、と著者らは考察で述べている。一方、本研究の限界として、脱落者のベースラインでの認知機能は、非脱落者よりも低く、脱落者には認知症のリスク因子である心疾患および脳卒中患者が多かったことから、生存者バイアスが含まれている可能性があると著者らは指摘している。

 結論として、高齢の2型糖尿病患者におけるメトホルミン投与は、認知機能低下および認知症発症の抑制と関連するといえる。ただし、メトホルミンに認知症または認知機能低下に対する保護作用があるかを検討するためには、糖尿病患者と非糖尿病の高齢者の両者でメトホルミンを対象とした無作為化比較試験を行う必要がある、と著者らは述べている。

 SARS-CoV-2に感染するとどの程度の免疫がつくのか、再感染の可能性があるのかについては、いまだ明瞭になっていない。米国Nevada大学のRichard L Tillett氏らは、米国で再感染したと判定された25歳の男性患者に関する情報をLancet Infectious Disease誌電子版に2020年10月12日に報告した。

 他のコロナウイルス感染症については、獲得された免疫は1~3年で低下することが知られている。SARS-CoV-2については、初回感染時と2回目の感染時に採取したウイルス遺伝子を比較して、再感染だったと判断された症例が、香港、オランダ、ベルギー、エクアドルで報告されていた。著者らは今回、米国で、SARS-CoV-2に2度感染した症例について記述している。

 米国ネバダ州在住の25歳の男性は、2020年4月18日に、Washoe郡保健局が地域で行った検査イベントに参加してPCR検査を受け、陽性と判定されていた。検査時点で男性には、ウイルス感染を示唆する症状(咽喉痛、咳、頭痛、悪心、下痢)が認められた。発症は3月25日だった。臨床的に意義のある併存疾患はなく、免疫不全症でもなかった。隔離期間中に症状は消失し、5月6日と5月26日に受けたPCR検査の結果は陰性だった。

 ところが、5月28日から再び、発熱と頭痛、めまい、咳、悪心、下痢が現れ、患者は5月31日に急病診療所を受診した。胸部X線検査が行われたが、その日はそのまま帰宅を許された。6月5日に患者はプライマリケア施設を受診した。そこで、息切れを呈する低酸素症が見つかった。その場で酸素療法を受けた後に、救急部門を受診するよう指示され、訪れた救急部門で鼻咽頭スワブの採取を受けた。検査結果は陽性でその日から患者は入院した。筋痛、咳、息切れなどの症状があり、酸素療法が継続された。胸部X線検査によって、ウイルス性肺炎または非定型肺炎を発症していることが明らかになった。6月6日に行った抗体検査では、SARS-CoV-2に対するIgG抗体とIgM抗体が検出された。

 4月18日と6月5日に、48日間隔で行われたPCR検査が、どちらもSARS-CoV-2陽性を示したこの患者は、いずれもCOVID-19と矛盾しない臨床症状をもたらしていた。

 次世代シーケンサーにより、鼻咽頭スワブから抽出したSARS-CoV-2 RNAの配列を解読し、2通りの方法を用いて違いを検討した。ゲノム配列を比較したところ、それぞれ感染していたウイルスの遺伝子には有意な差が見られた。4月に感染したウイルスと6月に感染したウイルスは、両方ともクレード20cに分類されたが、6月のウイルスには見られない一塩基変異(SNVs)が4月のウイルスに認められるなど、遺伝子には差が認められた。

 2020年3月5日から6月5日までに、ネバダ州で採取された171標本と中国武漢で報告された標準株の遺伝子塩基配列を比較し、系統進化的解析を行ったところ、この患者の4月と6月の塩基配列の間に、ネバダ州の他の標本が位置することが分かった。この系統進化仮説が正しければ、1年間に83.64カ所の置換が起こると推定され、現在観察されているSARS-CoV-2遺伝子の置換速度23.12カ所/年を大きく超えている。そのためこの患者の場合、症状が回復した後も1回目の感染が持続しており、それが再活性化したと考えるよりも、遺伝的に異なるSARS-CoV-2に再感染したと見なされた。この患者の場合には、2回目の方が臨床的には重症だった。

 これらの結果から著者らは、過去にSARS-CoV-2に感染した人に、再感染を防ぐ免疫が誘導されるとは限らないことが示唆されたため、COVID-19と診断されたことがあるかどうかに関わらず、全ての人が同様に感染予防対策を行う必要があると結論している。