厚生労働省は2020年12月17日に厚生科学審議会感染症部会を開催。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、2021年1月31日に期限を迎える指定感染症の指定を1年間延長することを提案し、了承された。感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)による指定感染症の指定は最長2年までであるため、今後もCOVID-19の感染法上の扱いについて引き続き検討していく予定だ。

 2月1日に指定感染症に指定されて以降、COVID-19患者に対しては入院措置や医療費の公費負担、および積極的疫学調査の実施などの対策が講じられてきた(関連記事:「指定感染症」になると診療はどう変わる?)。指定感染症の指定は原則1年だが、さらに1年の延長が可能なため、期限の2021年1月31日を迎える前に延長の可否について本部会で議論する必要性が厚労省から示され、構成員からは延長すべきだとの意見が相次いだ。

 川崎医科大学総合医療センターの中野貴司氏は「絶対に延長は必要だと思う。なぜなら、COVID-19は致死率が高く、合併症を起こす人が多いからだ。2類にすべきか、5類にすべきかという議論もあるが、現在の感染症法を見ても、治療できるから2類、ワクチンがあるから5類ということは言えないのではないか。それよりも疾患の本質を考えつつ、どこに分類すべきかを決めていく必要があると思う」と主張。

 がん・感染症センター都立駒込病院感染症センター長の今村顕史氏も「延期は必要だ。理由としては、COVID-19については、いまだに不確定要素がかなり多いことが挙げられる。一方、保健所からは『業務負担軽減のため指定感染症としての指定を外してほしい』との声が多く寄せられていると聞く。指定を延長するにしても、その根底にある課題を平行して解決していくことが重要だと考える」とコメントした。

 こうした構成員からの意見を踏まえ、国立感染症研究所所長で同部会長の脇田隆字氏は「今後、新しい類型を作るのか、既存の類型に当てはめるかの議論は継続しつつも、感染症部会としてはCOVID-19の指定感染症としての指定を2022年1月31日まで延長することを認める」とまとめた。

 なお、同部会ではCOVID-19の検疫法上の措置についても1年間延長する方針が了承された。これにより、COVID-19への感染が判明した入国者に対する隔離・停留措置を2022年2月13日まで延長することが可能となる。

  英国Oxford大学のMaxime Taquet氏らは、匿名の診療データを6980万人分集めているネットワークを利用したコホート研究を行い、COVID-19と診断された人はその後に精神疾患の発症リスクが増加するか、逆に精神疾患の病歴がある人は一般の人よりCOVID-19と診断されるリスクが高いのかについて検討し、どちらも有意なリスク増加が見られたと報告した。結果は2020年11月9日にLancet Psychiatry誌電子版に掲載された。

 COVID-19が精神面に及ぼす悪影響として、不安や抑うつなどのリスクの上昇が想定されているが、そうした影響を正確に評価するのは難しい。一方、COVID-19の身体的な危険因子は複数報告されているが、精神的な健康もCOVID-19の危険因子になるのかどうかは明らかではなかった。そこで著者らは、匿名化されている電子医療記録ネットワークTriNetX Analytics Networkを利用する大規模なコホート研究を計画した。

 TriNetXは、米国のヘルスケア提供組織54団体の電子診療記録データを匿名化して集積しており、患者数にして合計約6980万人分を集めている。

 最初に、COVID-19患者の後遺症として精神疾患発症リスクが増加するかを調べるために、TriNetXのデータから、2020年1月20日から8月1日までにCOVID-19と診断されていた年齢10歳以上の患者6万2354人を選び出した。次に、対照群として同じ期間にそれ以外の疾患(インフルエンザ、他の呼吸器感染症、皮膚感染症、胆石、尿路結石、大きな骨の骨折)で受診していた患者を選び出した。分析時点(2020年8月1日)までに亡くなった患者と、それ以前に精神疾患の既往歴がある患者はコホートの組み入れから除外した。

 その上でCOVID-19患者のコホートと他の6種類の疾患のコホートから、最近傍マッチング法(greedy nearest neighbour matching)で傾向スコアが最も近い組み合わせのペアを1対1の割合で選び出した。マッチングさせた条件は50種類の変数で、内訳は28種類のCOVID-19の危険因子と、22種類のCOVID-19重症化の危険因子とされる状態だ。こちらの主要評価項目は、COVID-19診断の14日後から90日後までの、精神疾患、認知症、不眠症の診断に設定した。

 一方、精神疾患の病歴がある人はCOVID-19発症リスクが増加するかを調べるために、2種類のコホートを作成した。第1のコホートは、前年(2019年1月21日~2020年1月20日)に精神疾患の診断を受けた18歳以上の患者とした。第2のコホートは、精神疾患の病歴はないが、同じ期間に医療機関を受診した患者とした。こちらも分析時点(2020年8月1日)までに亡くなった患者はコホートから除外した。2つのコホートから、28種類のCOVID-19の危険因子をマッチングさせ、精神疾患群と傾向スコアが最も近い組み合わせのペアを選び出した。こちらの主要評価項目は、COVID-19と診断される相対リスクとした。

 後遺症分析では、6万2354人のCOVID-19患者に対して、他の疾患で受診した条件がマッチするペアは4万4779組見つかった。コホート別では、インフルエンザが2万6497組、その他の呼吸器感染症4万4775組、皮膚感染症3万8977組、胆石1万9733組、尿路結石2万8827組、骨折3万7841組だった。

 COVID-19の診断は、診断後14日から90日までの初回精神疾患診断リスクの上昇と関係していた。90日までに精神疾患と診断されていた患者の割合は、COVID-19群が5.8%(95%信頼区間5.2-6.4%)なのに対して、インフルエンザ群2.8%(2.5-3.1%)、他の呼吸器感染症3.4%(3.1-3.7%)、皮膚感染症3.3%(3.0-3.7%)、胆石3.2%(2.8-3.7%)、尿路結石2.5%(2.2-2.8%)、骨折2.5%(2.2-2.7%)だった。

 COVID-19群の精神疾患発症のハザード比は、インフルエンザとの比較では2.1(95%信頼区間1.8-2.5)、その他の呼吸器感染症との比較では1.7(1.5-1.9)、皮膚感染症との比較では1.6(1.4-1.9)、胆石との比較では1.6(1.3-1.9)、尿路結石との比較では2.2(1.9-2.6)、骨折との比較では2.1(1.9-2.5)で、全て差は有意だった。

 COVID-19診断後の精神疾患の内訳で、最も多かったのは不安障害で、4.7%(4.2-5.3)だった。気分障害2.0%(1.7-2.4%)、不眠症1.9%(1.6-2.2%)、65歳以上の認知症1.6(1.2-2.1%)などがこれに続き、精神病性障害は0.1%(0.01-0.2%)と他の分類群より少なかった。

 精神疾患の病歴がある人のCOVID-19発症リスクを調べるコホートでは、前年に診断された患者が172万9837人見つかった。これに対して、精神疾患の病歴がない受診患者のコホートから、傾向スコアがマッチする同数のペアを選ぶことができた。精神疾患の病歴がある人がCOVIDと診断される相対リスクは、病歴がない人に比べ1.65(1.59-1.71)だった。相対リスクは高齢になるほど増加する傾向が見られた。76歳以上の男性の相対リスクは1.94(1.60-2.34)、76歳以上の女性の相対リスクは2.17(1.89-2.48だった。

 感度解析においても同様の結果が得られた。前年が初回の精神疾患診断だった患者では、相対リスクは1.67(1.57-1.79)になり、過去3年間の精神疾患診断との関係を検討した場合も、相対リスクは1.80(1.74-1.86)だった。

 これらの結果から著者らは、COVID-19サバイバーはその後に精神疾患を発症するリスクが増加していること、精神疾患の病歴はCOVID-19の独立した危険因子である可能性が示唆されたと結論している。ただし、今回の分析では、身体疾患以外の社会経済的要因による交絡因子を排除できていない可能性があるので、今後の前向き研究で結果を確認する必要があるとも述べている。この研究は英国National Institute for Health Researchの支援を受けている。

 

 

新型コロナウイルスが感染者に及ぼす長期的な影響について、またしても気がかりな研究結果が発表された。新型コロナウイルス感染症の罹患者のほぼ5人に1人が陽性確認から3カ月以内に精神疾患を発症しているほか、精神疾患の既往歴がある人は新型コロナウイルス感染症にかかるリスクが65%高いことがわかった。

精神疾患と新型コロナウイルス感染症の関連性についてはこれまでも報告されていたが、英オックスフォード大学とNIHR(英国立衛生研究所)オックスフォード健康・生物医学研究センターのチームによる大規模な調査研究で確認された。査読を受けた論文がこのほど発表された。

チームは新型コロナウイルス感染症の罹患者6万2000人あまりを含む米国人6900万人の健康記録を調査。新型コロナウイルス感染症の罹患者と、別の呼吸器感染症や骨折、インフルエンザ、皮膚感染症といったほかの病気の罹患者を比較し、精神疾患の診断例の変化が新型コロナウイルスへの感染と関連しているかどうかを分析した。
スマートニュースより

その結果、新型コロナウイルス感染症の罹患は、すべての精神疾患ではないものの、不安障害や鬱病、不眠症といった一部の精神疾患の発症リスクを高めることが確認された。

新型コロナウイルス感染症の罹患と、精神疾患のうち、統合失調症など精神病性障害と新たに診断される例との関連性については、はっきりしたものは認められなかった。反面、新型コロナウイルス感染症の罹患が、すでに精神病性障害を抱えている人の再発リスクを高めることは確認された。

精神疾患と診断されたことがある人は新型コロナウイルス感染症と診断される確率が65%高いという「予想外」の発見について、研究チームのマックス・タケは、ほかの要因がかかわっている可能性もあるため一段の研究が必要だと指摘した。一方で、精神障害は新型コロナウイルス感染症の「リスク要因の一つ」に加えるべきだと提言している。

新型コロナウイルス対策のソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)をめぐっては、孤立や不安、その他広範囲に及ぶ変化によって、メンタルヘルス危機が差し迫った問題になっていると、かねて論文や報告書で警告されてきた。今回の研究は問題の重大さを明確に示した格好だ。

研究を率いたオックスフォード大のポール・ハリソン教授(精神医学)は、新型コロナウイルス感染症を生き延びた人はメンタルヘルス問題を抱えやすいという懸念を裏づける結果になったと説明。原因や新たな治療法を緊急に究明するよう促すとともに、そうした人に専門のケアを提供するサービスを用意する必要があると訴えている。