- 石田 衣良
- 眠れぬ真珠
45歳の独身女性版画家の咲世子と28歳の新進映像作家の素樹の恋愛小説です。
舞台は逗子の披露山庭園住宅地、素樹と出会う前に咲世子が付き合っていたのはプレイボーイの画商、とお洒落な要素満載で、主演黒木瞳ですぐにでもドラマ化されそうです。
ですが、更年期障害を抱え、容色の衰えを感じ、今後の人生をひとりで生きることを不安に思い、ひと回り以上年下の素樹と、いずれ別れると思いながらも恋の歓びに幸福を感じ、その瞬間を大切にしようとする咲世子の思いは、男性の私にもよくわかる感覚です。
もちろん、作者の石田衣良も男性ですから、だから男性の心に訴えるという要素もあるのでしょうが、女性の描き方もおそらく女性から見てもよく描けているのではと感じるほど、ほんとに上手です。
「40翼ふたたび」ではあまり共感できませんでしたが、この小説では、女性主人公に素直に共感できます。
「今このときを逃さないようにしよう。今日は明日よりも、いつだって一日だけ若いのだ」という思いは年を取れば取るほど大事なのではないかと思います。
小道具もおしゃれで、ふたりが出会う「リキッドカフェ」で流れていた映像はカトリーヌ・ドヌーブつながりで「シェルブールの雨傘」と「ダンサー・イン・ザ・ダーク」、咲世子が泣き明かしながら聴くのはホイットニー・ヒューストンではなくてリンダ・ロンシュタットの「アイ・ウィル・オールウェイズ・ラブ・ユー」。
久しぶりに泣ける小説でした。