玄侑 宗久
ベラボーな生活―禅道場の「非常識」な日々

筆者が20代後半に修行を行った臨済宗天龍寺での生活を振り返って、4年間雑誌に連載したものをまとめた本。
修行のヒトコマヒトコマを描いたようなエッセイです。
「インフォームドコンセント」がまったくない(何のためにするのかという説明がまったくない)修行は、変化を信じ、奇跡を信じるという態度ではないか、という序文は、たしかにそういうものかもしれないと思いました。
そういうもんだろうと思うものの、朝4時からの修行はやはり大変だろうなぁと思います。

東京大学野村證券共同研究「未来プロデュースプロジェクト」
図説 50年後の日本―たとえば「空中を飛ぶクルマ」が実現!

東大の研究者たちが、2055年の日本でどのようなことが実現されているか、できるだけ科学的根拠に基づいて描いたものです。
基本的には出来上がっている製品なりシステムを描こうとしているので、様々な分野の研究者が加わっているということです。
「空を飛ぶクルマ」や「都市間リニアモーターカー」「軌道エレベーター」などSF的で馴染みのあるものや、タンスと洗濯機が一体化した「バイオミストボックス」や自分専用の「テーラーメイド美容液」など生活を変えるもの、「光合成をするビル」や「考える土」、「バイオプラスチック」や「量子コンピュータ」など28の製品や素材が紹介されています。
50年前に現在の世界を想像できなかったように、実際には全く違った世界になっているのかもしれませんが、科学の世界には夢が感じられます。
人口問題や年金問題や地球環境問題など、解決しなければならない問題もいろいろありますが。

畠中 恵
うそうそ

「しゃばけ」シリーズ第5弾。
今回は若だんなが湯治のために二人の手代・仁吉、佐助、兄・松之助と箱根に出掛け、そこでのお話です。
お比女ちゃんと大天狗の蒼天坊、雲助の新龍などが今回の登場人物。
若だんなの袂に入って付いてきた鳴家たちはかわいいのですが、他の妖したちはほとんど出てきません。
自分に自信が持てないお比女ちゃんの存在は、「引きこもり」の比喩なのでしょうか?
ほんわかした感じは変わらず、暖かい読後感です。

フェルディナント・ヤマグチ, 渡辺 和博
ちょいモテvs.ちょいキモ

「商社」「広告代理店」「テレビ局」「外資系金融」「医者」「税理士」「ITベンチャー」「外資系生命保険」「建築家」の各ジャンルについて、マルモ、マルキを解説しています。
昔流行った「金魂巻」のマル金、マルビの21世紀バージョンなのですが、あまりにそのままで、ひねりもなく、いまどきこういう本を出す著者が「ちょいキモ」では…と思ってしまいました。
イラストも「金魂巻」と同じ渡辺和博ですし。

トーマス・フリードマン, 伏見 威蕃
フラット化する世界(上)
トーマス・フリードマン, 伏見 威蕃
フラット化する世界(下)

フラット化した世界、物凄いスピードで変化している世界を、インド、中国、欧米諸国の経営者や政治家らへの綿密な取材をもとに、多くのエピソードとともに描いています。
著者はピュリツァー賞を3度受賞したジャーナリストで、膨大な情報を整理する力はさすがで、日本でいうと立花隆のような感じでしょうか。
フラット化の要因として10の力を挙げています。
以下目次から
「ベルリンの壁の崩壊と創造性の新時代」「インターネットの普及と接続の新時代」「アップローディング:コミュニティの力を利用する」「アウトソーシング:Y2Kとインドの目覚め」「オフショアリング:中国のWTO加盟」「サプライチェーン:ウォルマートはなぜ強いのか」「インソーシング:UPSの新しいビジネス」「インフォーミング:知りたいことはグーグルに聞け」「ステロイド:新テクノロジーがさらに加速する」
世界のビジネス環境がどのように変わっているのか、競争力の源泉はどう変わっていくのか、考える参考になります。

桂木 希
ユグドラジルの覇者

第26回横溝正史ミステリ大賞大賞受賞作です。
壮大なスケールで描く経済謀略小説との触れ込みでしたが、全く期待外れでした。
そもそも著者がインターネット金融や経済システムを理解していないため、起こり得ないことをベースとした陰謀を巡る話となっています。
たぶん大賞の選者も経済やインターネット音痴なので、このような小説に大賞を与えてしまったのでしょう。
「資本」「ネット・バンク」「相場」といったものがキーワードとなりますが、もう少し勉強しないと…。
登場人物は類型的なので、これであれば、「世界征服の野望 」とそれと戦う日本人天才プログラマーといった荒唐無稽な話にしたほうがまだいいと思います。

ヨアヒム・ゴールドベルグ, リュディガー・フォン・ニーチュ, 行動ファイナンス研究会, 眞壁 昭夫
行動ファイナンス―市場の非合理性を解き明かす新しい金融理論

1999年にドイツで発刊され、2002年に日本語訳が発刊された本です。
前半は、ヒューリスティック(少ない努力で即座に結論を求める方法→単純化、心理勘定、選択的認識、アンカーリング、代表性等)、評価のリファレンスポイントと感応度逓減、認知的不協和からの逃避、コントロールへの欲求等非合理的な投資行動が説得的に説明されていましたが、後半になってからはちょっと腰砕けという感じでした。
「行動から見た市場参加者の分類」では、脳の構造から「本能タイプ」「「感情タイプ」「理性タイプ」と類型化して説明していますが、これでは血液型による分類と変わりがありません。
最終章の「トレーディングで成功するために」では、「ターゲット価格とストップロスを決めておく」など、普通の相場格言の本と同じレベルになっています。
後半部分はないほうがよかったですね。

早坂 隆
世界の日本人ジョーク集

著者は紛争地域などを取材しているルポライターです。
本書のほか「世界の紛争地ジョーク集」「世界反米ジョーク集」なども出しています。
本書でも東欧や中東などでの話を交えながらジョークを紹介しています。
民族ジョークは微妙な部分も含んでいますが、逆にほんとはどう思っているのかが現れる部分でもあります。
日本人について意外な見方というほどのものはありませんが、わりと好意的なジョークが多いなと感じました。

中島 義道
狂人三歩手前

哲学者、中島義道氏が「新潮45」に連載していたコラムをまとめた本です。
世間になじめず、マイノリティ的な生きにくさを感じているときにはいい本です。
「メメント・モリ」というような警句ではなくて、「どうせ死んでしまう」ということを意識すると、私は気が楽になるような感じがしました。
著者は50歳以降「ぐれる」ことに邁進しており、それは「自分の感受性に忠実であること」なのですが、簡単なことながら難しいことです。
「自分の感受性に反したことを語らないこと」は例えば、他人の不幸のニュースを見てそんなのどうでもいいとは思わないのか、と問われれば確かにどうでもいいニュースばかりですが、人前でそうは言えません。
また、「意志」というものの眉唾性について、短い文ながら説得力を持って書いています。
著者のように徹底することは、哲学者ではないと(社会生活を送れないので)難しいですが、偏屈な文章であるにもかかわらず、たまにこうした考え方に触れると心が軽くなります。

神田 秀樹
会社法入門

久しぶりに読んだ岩波新書です。
いかにも「岩波新書」という感じで、今年施行された「会社法」について、第一人者が一般向けに解説した本です。
会社に関する法律は、ここ数年、毎年変わっており、その集大成が「会社法」ですが、ビジネスマンにとって知識の整理にいい本だと思います。
ハウツーではなく、法制度の制度趣旨や立法論を理解するのに有益だと思います。