佐々木 俊尚
グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)

googleをあまり知らないひとのための本でした。
無料サーチエンジンからグーグルマップ、グーグルニュース、グーグルスプレッドシート(これはまだLABSですが)と進化しているグーグルの凄さ、グーグルの収益源であるアドワーズ、アドセンスについて長々と解説しています。
今後の戦略や方向性について、取材や分析のある本を期待していたのですが、初心者向けの解説本でした。

荒川 龍
レンタルお姉さん

怪しげなタイトルですが、そういう本ではまったくありません。
ひきこもりやニートを家から引き出す仕事を行っているNPO法人ニュースタートのスタッフの活動のレポートです(「レンタルお兄さん」もいます)。
学生時代から何年間も家にひきこもったままの男性や、就職したものの仕事をやめてひきこもってしまった男性などの家を訪問し、NPO法人が運営する「若者寮」への入寮を勧めたり、外出の手伝いをするなどして自立の手助けをします。
最初は、自筆の手紙を何通も書くことからスタートし、次は電話、訪問、と進めていきます。
もちろん、まったく拒絶されることもあれば、暴力を振るわれることまであり、またがんばっても報われないこともありますが、彼女たちの根気や人を受け入れる力には頭が下がります。
手紙を書いて読んでもらえなくても「手紙を送ったこと」が、何時間もかけて家まで行って会えなくても「そこに行ったという事実」が、ひきこもりの人たちにも伝わるといいます。
ひきこもりやニートは、世間一般からは、「甘えた若者たち」と見られがちで、確かにそういう面は否定できませんが、一方で、親に負担をかけて悪いと思い、世間に出るきっかけを求めてもいます。
「レンタルお姉さん」は普通の女性として描かれていますが、やはりみな立派で、感動しました。
↓「レンタルお姉さん」のブログがこちらにあります。
http://blog.goo.ne.jp/ns_rental


川上 弘美
夜の公園

リリ、幸夫、春名、悟、暁5人の物語です。
川上サンの表現や文体が好きなので、心地よく読めますが、ファンでない人にはどうなのかなぁというお話です。
「リリは幸夫があまり好きではない。好きではないというそのことに、いつ気がついたのだったか、リリはうまく思い出せない。いったいリリは幸夫の何が好きではないのか。」
寄り添っているのに届かない、微妙なこころの動きや感覚が淡々と描かれています。
「センセイの鞄」や「古道具中野商店」と比べるとちょっと肉体を感じさせすぎる気がするのですが、それは逆に川上サンが年を取ったからかもしれませんね。

グレアム アリソン, Graham Allison, 秋山 信将, 堀部 純子, 戸崎 洋史
核テロ―今ここにある恐怖のシナリオ

キューバ危機を分析した名著「決定の本質」の著者グレアム・アリソンが、「核テロ」について、「誰が」「どのような核兵器を」「どこから入手し」「いつ」「どうやって」「核テロ」を行う可能性があるのかを分析し、「どうすれば防げるのか」提言している本です。
「誰が」については、アルカイダを始めとするイスラム過激派を筆頭に挙げているものの、オウム真理教などにも触れています。
「どこから」については、一番懸念しているのは、旧ソ連の核兵器、核分裂性物質の流出ですが、パキスタンの闇市場、実験用施設等現状ではテロリストが入手できる可能性は低くはないと述べています。
また、そうした核兵器、核分裂性物質の米国内への持込については、船便、陸路ともに「スイスチーズ並み」の監視であるとのことです。
一方で、核テロを防ぐには、(核分裂物質の製造には莫大な費用と年月がかかるので)核兵器、核分裂性物質の管理と廃棄を米国が中心となって行うことにより、可能であるとしています。
本来、「イラク」ではなく「核テロ対策」に資源とコストを優先すべきところを「イラク」との戦争を行ったことにより、米国にとってむしろ危機は高まっているとの認識です。
日本が狙われる可能性は低いとはいえ、もし核テロが行われた場合その影響は甚大で、それにしては世間の関心は薄いような気がします。

アレクサンダー・フォン シェーンブルク, 畔上 司
優雅な暮らしにおカネは要らない―貴族式シンプルライフのすすめ

本書は、ドイツでベストセラーとなったドイツ版「清貧のすすめ」です。
著者は貴族の末裔で、一流紙をリストラされたジャーナリストとのことです。
書かれている内容はごく普通のことで、タイトルから想像できる内容そのままでした。
もともとそういう生活が好きなひとはあらためて読む必要はないし、そうでないひとは読んでも意味がない気がします。

高任 和夫
偽装報告

三菱自動車のリコール隠しをモデルにした小説です。
隠蔽を図る上層部とディスクローズを主張する主人公、ベテラン新聞記者と新人記者、昔の恋人、と企業小説の王道のような話です。
三菱自動車に題材をとっていますが、耐震偽装問題でもライブドア問題でも、企業の組織ぐるみの犯罪はすべて似たような構造でしょう。
テレビドラマにしたら面白そうだと思いましたが、考えてみれば、大スポンサーの業界の問題を扱うことなどできるはずありませんね。

柴田 明夫
資源インフレ―日本を襲う経済リスクの正体

21世紀に入ってから原油価格が高騰しています。
それ以外の一次産品の価格も軒並み上昇しており、著者はこれは構造的なものであると説明しています。
ポイントは、
①中国を始めとしたBRICsの台頭で、需要は幾何級数的に増加しており、今後も増加すること
②一方で価格弾力性の低い一次産品は供給をすぐには増やすことが出来ないこと
です。
確かに、中国の鉄鋼生産が2億7千万トンと日本の3倍近くまで伸びているとは認識していませんでした。
ただ、本書は闇雲に危機感を煽るような内容ではなく、構造変化が起こっていることを認識し、日本の得意とする省エネ技術、付加価値の高い製品をつくることにより、逆にチャンスであると説いています。
論旨には説得力があり、資料も豊富ですが、内容は若干繰り返しが多い感じがします。
厚い本ではないのですが、もう少し短くまとめたほうが読みやすいですね。
それから、この本の前に読んだ「貧困の終焉」が実現に向かうとすれば、資源価格は更に高騰することになりますが、「貧困の終焉」ではそういった視点からの分析はありませんでした。

ジェフリー サックス, Jeffrey D. Sachs, 鈴木 主税, 野中 邦子
貧困の終焉―2025年までに世界を変える

世界の人口の6分の1が「極度の貧困」に苦しみ、「開発の梯子」の一番下の段にも足をかけられない状態にいます。
著者のジェフリー・サックスは、1980年代からボリビア、ポーランド、ロシア、アフリカ諸国の経済顧問として、処方箋を書き、対外債務の放棄に奔走してきました。
「貧困」にある状態を病人に例え、「臨床経済学」を提唱しています。
「極度の貧困」にある地域を「開発の梯子」の一番下の段まで引き上げるためには、人的資本、ビジネス資本、インフラストラクチャー、自然資本、公共制度資本、知的資本が欠けており、地域により必要な組み合わせが違ってきます。
著者が中心となってまとめた2002年の「国連ミレニアム開発目標」では、2025年までに「極度の貧困」を根絶することを掲げています。
同じ年にメキシコのモンテレーで開かれた国連開発資金会議で採択された「モンテレー宣言」での合意「先進国はGNPの0.7%をODAに費やすことを目標として具体的な努力をする」の範囲でそれは可能であると著者は述べています。
500ページに及ぶ本で、具体例や数字を挙げての議論など、説得力があります。
著者の主張は、おそらく「市場主義」と相容れないものではなく、「病人」を治療してから、市場に参加させようというものです。
「開発の梯子」の一番下の段までいけばあとは成長に向けて発展の途をたどることができるが、そこに至るまでは自力では不可能なので助けが必要という考えです。
自分たちの世代で「極度の貧困」を根絶するという使命感は崇高で、読んでいて共感するのですが、ブッシュ大統領を始めとする政治家の志の低さが寂しく思えます。

山崎 元
「投資バカ」につける薬

山崎元氏は、ファイナンスの専門家であり、バイサイド、セルサイドと転職12回の実務家です。
この本のタイトル「投資バカ」は「投資について何も知らないひと」ではなく、「投資に関心があるけどバカを見ているひと」(おそらく資産を持つほとんどすべてのひと)のことです。
金融機関に騙されないための本です。
金融商品を勧められたときの「正しい問いかけ」が18用意されています。
「だったら、なぜ自分で投資しないのですか?」
「リスクが減少する根拠を具体的に提示してください」
「コストの高い投資信託が、なぜそんなにお勧めなのですか?」
「国家財政が10年以内に破綻する確率はどのくらいですか?」
「その生命保険の付加保険料を教えてください」
「その投資法が正しいのなら、どうして皆が真似をしないのですか?」
「不動産投資で儲けられるのは、不動産屋と銀行だけではありませんか?」などなど。
山崎氏は、金融業界にいながら、投資信託の手数料を「暴利」といい、生命保険料を「破滅的」なほど不利だと言い切ります。
「株で儲ける」本や「金持ち」本が巷には溢れていますが、そうした本よりもこの本を読むほうが役に立ちます。
この本のアドバイスに従えば、損をする確率は間違いなく減ります。

ローリー・リン ドラモンド, Laurie Lynn Drummond, 駒月 雅子
あなたに不利な証拠として

原題「Anything You Say Can Be and Will Be Used Against You」。
ドラマや映画でお馴染みのアメリカの警官が容疑者を逮捕するときのセリフです。
女性弁護士や女性検事などのエリートではなく、女性制服警官5人それぞれを主人公とした10編の短編集です。
タイトルは「完全 Absolutes」「味、感触、視覚、音、匂い Taste,Touch,Sight,Sound,Smell」「キャサリンへの挽歌 Katherine's Elegy」「告白 Lemme Tell You Something」「場所 Finding a Place」「制圧 Under Control」「銃の掃除 Cleaning Your Gun」「傷痕 Something About a Scar」「生きている死者 Keeping the Dead Alive」「わたしがいた場所 Where I Come From」。
著者も女性制服警官として勤務していた経験を持つだけにリアリティがあり、淡々とした記述ながら、女性ならではの五感に訴える描写力には独特なものがあります。
銃社会のなかでの警官を描いた小説なので血腥い描写も多いのですが、アメリカ南部の田舎町でのストイックな日常が静かに流れているような感覚です。
ミステリーとしての謎はほとんどありませんが、久しぶりに読んだハードボイルド(ひとそれぞれ定義は違うかもしれませんが…)です。