平成においてきた、やらかしエピソード教えて!
羽田空港で発覚
福岡出張の航空券が「とれてなかった」件
便利な世の中になったものだ。航空券も「券」というか「権」というか、紙のチケットが必要なくなり、手ぶらで空港に行けるようになっている。私のようにバッグの中で「チケット、チケット!」と探す人間には“天の助け”だとすら思う。だが、それはWEBの段階で「ちゃんと手続きが完了していれば」の話だ。
数年前、九州大学に日帰り出張の指示が出た。ライターは1人で出張することも多いが、このときは大掛かりな取材で、私のほか、カメラマン、雑誌の編集担当者、その雑誌の“親元”の新聞社の記者まで同行することになった。雑誌の編集者にとって“新聞屋さん”の同行は「弱みを見せられない」という雰囲気がある。またその記者さんには別件で何回か会ったことがあるのだが、完全無欠に優秀でそつがない、ちょっと“取り付く島がない”っぽい感じもあった。私もヘマはしたくない。
その日のフライトにはいくつかの選択肢があったのだが、時間ぴったりの便は混むので、「少し早めに行って、博多でおいしいお昼を食べましょう」ということで話がついていた。いわゆる現地集合で、自分がマイルを貯めている航空会社で飛べばいい。私もすぐに航空券の予約をとった……つもりだった。慣れた手順で、なにがどうNGだったのかよくわからないが、このツメの甘いところがADHDだ。
空港でいつものように機械にカードをかざしてもチェックインできない。慌てふためいてカウンターにいくと「WEB予約がとれていません」ということだった。同じ便は満席、その次も満席、かろうじて1時間ちょっと遅れの別会社の便に空席があった。これなら九大に直行すればぎりぎり間に合うだろう。どっと汗が出た。
そのとき「ぽてさん」と名前を呼ばれた。一部始終を見ていたらしい、新聞記者氏だった。
「僕、先に行ってますけど、大学に直行でしょ? これ、飛行機の中でゆっくり食べてください」
そう言って、空弁とコーヒーのアルミボトルが入った袋を渡してくれた。デザートのつもりなのか、チョコバーが1本入っていた。
私がポカンとしているうちに、彼は「じゃ」と言って、さっさと搭乗してしまった。申し訳ないことに、それまで私はずっと彼のことを「新聞記者さん」と思っていて、名前がすぐに出てこなかった。というか、彼の視野に私が入っていて、名前まで知っていることにびっくりした。
できる人って、どこまでもできるのね。そして、できる人は「余裕があるから」なのか、できない人に対しても優しいのね。空弁はたいめい軒のカツサンドで、とっても美味しかった。
九大に着いたら、新聞記者氏は知らん顔で、いつもの「取り付く島もない」様子。きちんとお礼も言えないうちに取材が始まってしまった。
↓毎日がローラーコースターな人生
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