彼奴に誘われて、遊郭にたまに遊びに行っていた。
まぁ、金はあったし、彼奴の分まで支払うのは構わなかった。
よく通っていた遊郭には、とても綺麗な花魁がいた。
廓に入った時に偶然見かけ、一目惚れのようだった。
ただ、美人というだけではない。
内面から醸し出される美しさがあった。
そうだ、彼女はとても美しかった。
だけど、その中に、悲しさも秘めていたのは分かっていた。
何度か彼女閨を共にした後、廓に入る以前の事を話してくれた。
大体の遊女が親の借金の形に売られていく。
彼女もご多分に漏れずその通りであった。
身請けをしたいと思った。そんな話も何度か冗談半分でしていた。
しかし、彼女は柔軟ではあったが、身請けを拒否していた。
俺の事が嫌いであったとかそんなのが理由ではなかった。
ただ…彼女は俺と同じ心の傷を持つから、苦しくなると。
そう一言だけ言われた記憶がある。
彼女は視えてたのだろうか…俺の傷の部分を…。
この世においては、誰にも伝えてなかったはずの傷の部分を。