「ツーリストS」というタイプの部屋を予約した。個室だが密閉された空間で窓はない。新型コロナウイルスが流行り始めた頃、ダイヤモンド・プリンセス号で集団感染が確認された際、2週間以上隔離されたはずだが、もし同じようなことがあってこの部屋に閉じ込められたら、一日も我慢できそうにない。ちなみに、入船時に使用したQRコードがそのまま部屋の鍵になる。

 

部屋で昼食をとって、再び船首側のロビーに行く。私と同じ歳くらいの男性が真ん中のチェアに陣取り、ひとり海を眺めている。他の人たちは入れ替わり立ち代わり出入りするが、この男性と私はそれから1時間ほど同じ時を過ごす。もちろん無粋に話し掛けない。

 

やがて前方に粟島がみえてくる(写真奥)。幾度となく羽越本線の車窓からみてきた新潟県に属する小さな島だが、私にはちょっとしたエピソードがある。仕事で知り合ったある会社の跡取りが忽然と姿を消した。どうやら多額の債務を抱えた友人の連帯保証人になっていたらしい。「粟島はいいところだよ」。そう教えてくれた彼が、ここで平和に暮らしていると願っている自分がいる。

 

今回の旅は例によって大人の休日俱楽部パスを利用している。以前は、往復とも新幹線で移動していたが、片道だけでも元がとれる。そんなことから憧れていた船旅を選択した。(写真/ロビーでは読書したり、海を眺めてまったり過ごす)


【動画】
気がつけば、船が結構揺れている。前方をみると出航時よりも白波が立ち、風が強そうだ。しかし、洋上では雨は降っていない。(43s)

時間は午後5時半を過ぎた頃。現在、秋田県沖を航行中のはずだ。東北地方は、確か本日夜半まで雨降りの予報だったが、これまで洋上に大きな影響はない。順調な航海だ。

 

秋田県沖を航行しているということは、間もなく男鹿半島に近づくと思われる。その先端には私が気に入っている入道埼灯台がみえるかもしれないので、船の軌跡を望むデッキに出てみる。

 

残念ながら入道埼灯台を発見することはできなかったが、船内に戻るとちょうどレストランが開店したので、混む前に入店し、とりあえずビールを注文する。ここでもチェーン店でみられるタッチパネルが設置され、人手不足を補おうとする努力がみられる。

 


再び船首のロビーで寛ぐがここは午後10時で閉鎖される。インターネットの電波は弱く、部屋に戻ってもテレビを観るくらいしかないが、こちらも電波状態が悪く、たびたび映像が固まる(写真)。
 


北海道で憧れのスタジアム巡り Vol.5に続く